2021/03/13
1265.
「今日は、入道雲を目指して歩きたいと思う」
「それで、俺らはこんな平原を歩いてるのか」
「だいたい、入道雲にって・・・あれ雷雲でしょ?」
「だからこそ目指す、って趣旨らしいぜ。美々香ちゃんによると」
1266.
「はぁ、ワケわかんないわ。今更だけど」
「“ワケわからん”の先に、生きる意味ってやつがあるんだぜ?」
「それもワケわかんないからね。全く。さっさと行くわよ」
「フッ。まあ騙されたと思って付いて来いよ。辿り着けば、きっとわかるはずさ」
1267.
「なんだかんだで付いて来ちまってるからな、俺ら」
「まあいいんじゃね? どうせ暇だし、ピクニックだと思えば」
「でも目的地が積乱雲だぜ?」
「雲の下にあるのは街か森か、はたまた川か。いずれにせよ、アテのない旅というのも悪くないだろう」
1268.
「ねえ、雲の方からも近付いて来てない?」
「もちろんだ。雲というのは流れる存在。そう、私たちのように」
「何言ってるのよ」
「旅人のロマンというやつだよ、みずき君」
1269.
「旅、雲、自由。ああ、なんと素晴らしいことだろうか!」
「月曜からまた学校だけどね」
「それを言うな! 夢もロマンもない奴め!」
「美々香はもう少し現実を見れば?」
1270.
「あれ? なんかどんよりしてきたくね?」
「雲を目指してるのだから当然でしょう」
「つまり! 目的地が近付いて来たということだな! このまま行くぞ!」
「傘ないんだけど・・・」
1271.
「傘など不要! なぜなら、これはピクニックだからだ! ピクニックは無論、晴れた時に行くもの! 出発の時には晴れていた!」
「目的地が雲なんだから雨降るに決まってるでしょう」
「じゃあ何故みずきは持って来なかったのか!」
「マジで行くとは思ってなかったからよ」
1272.
「甘い! この私が行くと言ったのだ! 雲でも地獄でも行くぞ!」
「もういっそ地獄に落ちてくれないかしら」
「個人的には地獄よりも天国の方がいいね、ロマンがあって」
「あー別に天国でもいいわよ。行ってらっしゃい。あーいや帰って来なくてもいいわ?」
1273.
ザーーーーーー。
「で、結局全員びしょ濡れになりましたと」
「なんで兄さんたちも傘持って来てないのよ・・・」
「「ロマンだ」」
1274.
「もう・・・意味わかんないわ。こんな所で濡れることのどこがロマンなのよ」
「ドラマとかであるだろう? 1人たたずんで雨に濡れるシーンとか」
「傘持たずに自ら雲の下に来て濡れるのはただのバカでしょ」
「ドラマじゃないから、シーンは作らなきゃ無いんだよ」
1275.
「着いたぞ! 入道雲だ!」
「どっちかと言うと追い付かれたんだけどね」
「構わない! 辿り着きさえすれば!」
「もう満足でしょ? 早く帰らないと風邪ひくわよ」
1276.
ゴロゴロゴロゴロ、ゴロゴロゴロゴロ・・・。
「めっちゃ雷なってんじゃん」
「平原とは言え、ここいらも危険だな。」
「撤収するか」
1277.
「待ぁてぇぇい!」
「ん? どうした? 雲の中に入りたいとか言うなよ?」
「こんなこともあろうかと、雷に備えたものを持って来ている!」
「傘は持って来てなかったのに?」
1278.
「雨なんて濡れるだけだからな。だが雷は違う。 しかし! これさえあれば雷なんて怖くない! いでよ! 避雷針!」
「おいバカ! 避雷針ってのは・・・」
ヒカーーーーーーッ!!
「うわああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
1279.
「あいつ、モロに食らったぞ。大丈夫か?」
「大丈夫だろ、コメディ補正が入るから」
「補正とか言うなよ」
「あ、美々香が起き上がるわ!」
1280.
「おーい美々香・・・って、ん? 浮かび始めたぞあいつ?」
「ああ、皆さん、よくぞご無事で。これも、私の加護の賜物でしょうか。今後とも、お元気でお過ごしください」
スゥッ。
「・・・って、ええぇぇぇ! 昇天したやがったぞあいつ!」




