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2021/02/27

1227.


「・・・友よ、よく聞け」


「何がよ」


「かつては、ブラウン管なるものがテレビの中に入っていたらしい」


「そうみたいね。たまに聞くわ」



1228.


「なぜそれは、ブラウン管と呼ばれていたのか・・・」


「茶色だったんじゃないの?」


「否! ブラウンは発明者の名前から来ている!」


「そうだったのね。どうせネットで調べたんでしょうけど」



1229.


「しかしそのブラウン管も、技術の進歩に伴い使われなくなっていく」


「液晶が出てきたって訳ね」


「そう。テレビは昔は箱みたいな感じだったもんだから、薄型の登場は人々の度肝を抜いた。オシャレだし場所も取らないしで、こっちの普及が進んで行く」


「そして、地デジ化にトドメを刺された訳ね」



1230.


「かつては映りが悪い時まず殴るってのが主流だったらしいが、もはや殴るスペースさえなくなってしまったな」


「せめて“叩く”って言いなさいよ」


「そう、テレビは殴られるのが嫌で薄型へと進化したのだ」


「デタラメなこと言わないで」



1231.


「ところで、ブラウン管と液晶って何が違うの?」


「ブラウン管は、電子ビームってやつを蛍光体ってやつにぶつけて光を出すらしい。液晶は、そもそもの光がバックライトという形で用意されていて、それを局所的に遮るか通すかの選択により画像を映し出す」


「ふーん・・・聞いてもよく分からないわね」


「そうだな。私も文章を読み上げてるに過ぎないからよく分からん」



1232.


「かつてはプラズマテレビなるものも存在し、買う側からすれば“液晶とプラズマどっちにする?”的な状態にもなったらしい」


「へえ、もう1種類あったのね。でも何でプラズマは消えちゃったの?」


「消費電力がデカいのと、小型化が難しかった。具体的には、37型より小さいのは作れなかった。そして、得意とされる大型ディスプレイにおいても液晶の追い上げを受け、ついには高性能合戦について行けなくなった」


「プラズマディスプレイ開発の担当者は地獄だったでしょうね」



1233.


「さて現在、悲しいことに液晶パネルのシェアは国内においても海外メーカーが多くを占めている」


「そもそもスマホも海外メーカーだものね。日本企業、負けちゃったのね」


「まあ、前回の鎖国終了の話とも繋がるが、グローバリズムの影響を受けたな」


「本当に悲しいわね」



1234.


「どうして負けちゃったの? 日本の技術って凄いんじゃなかったの?」


「今となっちゃ“日本の技術”ってやつの立場も怪しくなってきたが・・・それに目をつぶるとしても、コスト競争に負けたからビジネスでも負けた。いかなるビジネスも、コスト競争に負ければ立ちいかなくなる」


「コスト競争も技術があれば勝てるんじゃないの?」


「どうも日本には、性能を重視する気質があったようだな。一方で消費者は、性能はそこそこで良いから安いものをって考えが根強い。その意識の乖離が敗北を呼んだ。

性能を上げるための開発コストは尋常じゃなかっただろうし、性能がいいやつは製造そのもののコストも上がる。海外に工場作って人件費を下げたところで、ここは変わらん」



1235.


「それで、シェアも取れないとなると赤字しかなくなるって訳ね」


「せっかく導入した設備をフル活用できないことにもなるからな。設備投資ってのはローンみたいな考え方で、3億とかで買った機械のコストを15年とかで馴らして計算するらしい」


「性能がいいものを作ろうとすると、設備もいいものが必要になるからローンがかさむのね」


「それでして製造そのもののコストも高いんだぞ。負けるに決まってる」



1236.


「その結果、撤退が相次いで我が国からメイド・イン・ジャパンは減る一方になったって訳だ」


「政治問題1つで物が入って来なくもなるわね。大丈夫かしら?」


「さあな。なるようになるんじゃね?」


「え、適当すぎない? 最近はコスト競争力強化が進んでるみたいだし、何とかなればいいんだけど」



1237.


「そのコスト競争力強化が進んだ結果、非正規雇用が増えたんだけどな」


「私たちに負担を強いてきたということね・・・でも、それでも勝ててないわよね?」


「不条理な無駄が多いんだろう。出来レースの社内コンペのための資料を作らされるとか、

経理の人員減らした結果処理が遅くなって余計な“待ち”が発生するとかな。

非効率な制度とかシステムも基本放置で、改善提案しようものなら腫れ物扱いだ。それやったところで給料が上がる訳でもなく仕事が増えるだけだからな。年功序列の会社は、こうなりやすい」


「こればかりは・・・結局、時代遅れの古いやり方が残ってしまってるってことね」



1238.


「そんなこんなで我が国は、給料減らされた人が多いのに結局コスト競争で勝てず、さらに人件費が減らされるという事態に陥っている」


「え、これどうにかなるの?」


「手詰まりだ。諦めよう」


「ちょっと!!」

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