ジェリス
「だとすると弦を張る為のピンか……トーマ君に頼んでピンを作ってもらうのが良いんじゃないか?」
「やっぱりトーマ君に頼むのが一番良さそうですね」
錬金術で物質の形状を変えるトーマ君の力を借りるのがやっぱり確実だろう
「トーマ君ならあっちで属性結晶を金属と融合させて属性金属を作っていたな?」
「それはまた凄そうな事してますね?」
「あぁ、確か属性結晶のままだと安定性があまり良くないから武器や防具には適していなかったらしいが、金属と融合させる事で属性の効果は減るが、安定性が向上して鍛冶師の人が加工しやすくて中々良いという話だぞ?」
ピーキーな性能だと扱える人が少ないからマイルドに調整する。それは結構重要な仕事だ。ピーキーな性能でそんな仕事をしている最中にちょっとピン作ってくれない?ってお願いするのは流石に気が引ける
「それだと流石に仕事を邪魔する訳にはいかないですし、なんか別の手段でやりますかね?」
楽器のパーツであるピンを作るのは僕しか得をしない。だが、属性金属を作るのはプレイヤー全体の得になる。ここはトーマ君の邪魔をせずに、何か代替案を考えよう
「だとしたらどうするんだい?」
「まぁ何とかなるでしょう」
今の所代替案は思い浮かばないけど、何かきっかけがあれば思いつくかもしれない
「どうします?ハスバさんも夜一緒に焚き火を見ますか?」
せっかくだし、ハスバさんも誘ってみよう。来るかな?
「あぁ、すまない。今日はこれからどうしても外せない用事があって行く事が出来ないんだ。せっかく誘ってくれたのに申し訳ない」
おっと、ハスバさんはダメか……まぁ用事が有るみたいだし、仕方が無いか
「いえ、用事があるなら仕方ないですね」
わざわざ用事が有るのにそれを蹴ってまで焚き火を見るとか流石にそんな事はさせられない
「まぁトーマ君と話だけでもしてくると良いと思うぞ?」
「んー、確かに属性金属も気になるし、見るだけ見てこようかな?」
邪魔をしない様に属性金属を作っている所を見られるのなら見ておきたい。何かピン作りのヒントになるかもしれないし
「おっ?これまた異色の組み合わせだなぁ?」
「あっ!ハチさん!」
そこに居たのはトーマ君と……
「なっ、なんだ……私が居たらダメなのか?」
そこには金属の入った木箱を軽々と運ぶ天使さんが居た
「いやいや、そんな事は無いよ?何と言うかちょっと嬉しくてね?」
イベント中は敵対していたけど、今はこうして島の住民として手伝いをしている所を見ると、天使さんが馴染んでいる事に安堵する。結構強引に島の住民にした感じだから馴染めなかったらどうしようかと思ったけど、この様子なら一安心だ
「天使さん凄いんですよ?ハチさんが居ない間は城の中に誰か入らない様に門番とか問題ごとが起こらない様にここら辺の巡回とかをしてて、手が空いた時にはこうして手伝いをしてくれるんです!」
「まぁこれでも元は神に仕えていた身だ。この周辺の発展も多少は落ち着きを見せたから秩序を保つ為にそのくらいはしておいた」
「おぉ……まさか天使さんがそこまで優秀だったなんて、これは何かお礼をしないと……」
「不要だ。このくらいは息をするのと同じ様な物だ。お前と初めて会った時と比べたら深呼吸するより簡単だ」
例えが酷過ぎないか?僕と会った時に深呼吸するより街の警備の方が楽とか……
「まぁ天使さんが不要だと思ってもこれはこっちからの感謝の気持ちですし……天使さんって名前ってあります?」
「あったが、もう捨てた。今の私はただの名無しの天使……もう天の使いでもないから何なんだろうな?」
神の元から離れたし、新しい人生を歩む感じで新しい名前があった方が良いだろう
「じゃあ新しい名前でジェリスとかどう?」
「ん?新しい名前?」
「自分で天使かどうかも分からなくなってるのなら天使さんって言うのもアレでしょ?だったら名前があった方が良いじゃん?」
天使さんって言い方がもう使えないなら新しい名前をあげよう。ある意味これで本当にこの島の住人になったのかもしれない
「そうだな……では今からはジェリスと名乗ろう」
「よし、それじゃあジェリスさんはそのままトーマ君の手伝いをしてあげて」
「何か彼に用があって来たんじゃないのか?」
「あぁ、別にそこまで大きな用事じゃ無かったから……」
ジェリスさんがトーマ君の手伝いをしているのならそのまま属性金属作りをやってもらおう。やっぱり人に頼るだけじゃなく、自分で何とかする……いや、待てよ?人に頼れないのなら眷属達に何か協力を求める事は出来ないかな?
「よし、一度確認してみるか。2人ともじゃあねー」
トーマ君達と別れて、壊れた城の地下を目指す。結構眷属達も外に出ているけどまだ地下の部屋に残っている眷属も居るはずだ。そこに僕が求めている眷属が居れば良いけど……
「ここもちょっと懐かしく感じるなぁ……」
地下の玉座の間。もう元の主は居ないけどここにはまだあの時一緒に戦った戦友や、日の目を浴びなかった英雄が居るかもしれない。そんな存在を探しに僕はジャングルの奥地へ……眷属部屋の中へと向かった




