思考の切り替え
「だが、アプローチを変えるにしても、どう変えるんだ?」
「一旦改造の概念から話をしますか」
ヘックスさんの意識を変えればもしかしたら違法改造も変化する可能性もあるかもしれない。一旦この方向性でちょっとやってみよう
「改造の概念?」
「例えばですけど……ここに何の変哲もない鉄の棒があるとします」
インベントリに有った鉄の棒を出す
「ふむ」
「この棒を曲げたら、これは改造になりますか?」
「それはただ曲げただけではないか?」
「なるほど。じゃあ鉄の棒を簡単には曲げられない様に強度を増す素材を加えたとしたら、それは?」
「それは改造に入るだろうな」
「了解です」
こういう時はもっと思いっきり前提からぶっ壊す様に……
「では、もっと前の段階から。この鉄の棒を……拾ったら?」
一度地面に鉄の棒を置く。それを拾ったらどうなるか
「それはただ拾っただけだろう?」
「なるほど分かりました。じゃあ、今僕が落としたこの鉄の棒。ヘックスさんが拾ったら……どうなります?」
「どういう事だ?そんなの拾った所でどうとも……」
ヘックスさんが僕の落とした鉄の棒を拾い上げる
「ほら」
「あ、今ヘックスさんは僕の作品を勝手に改造しましたね?」
「はぁ!?」
鉄の棒を拾っただけで改造と言われれば意味が分からないだろうな……
「ど、どういう事だ!?」
「まぁ、正直これに関しては僕も首を縦に振り難い物ではあるんですけど、ヘックスさんは今僕が作った芸術作品の形を変更しました。僕の芸術作品である炉端の材をヘックスさんは壊しました」
「こ、これが芸術!?壊した!?」
意味わかんないよなぁ……僕も分からない。現代アートとか言えば聞こえは良いかもしれないけど、ただ壁にバナナをガムテープで貼り付けただけとか、便器にサインしただけとか……正直な所僕には理解の及ばない所だ
「形はどうあれ作品を変えたのだからそれは改造になりませんか?」
「うぐっ……そ、そう言われるとそうなる……のかぁ?」
やっぱり納得出来ないよなぁ……
「まぁ、別にそれは悪いとは思ってません。ただ、今のただ鉄の棒を拾っただけ。それだけでさえ、誰かにとっては改造、改変、破壊とも言えるくらい人によって視野も違います。受け手の持つ情報によって木の棒でさえ、聖剣にもなりますし、ダイヤモンドが石ころ同然の価値にもなります。ヘックスさんの持つ固定観念を破壊出来れば、どんな事も改造……改変すると捉えられません?」
「なるほど……確かにそう言われると、この世の全ての物は様々な生物や神によって作られた物。そしてその皆で作り上げた物を皆で毎日、毎時、毎分、毎秒作り替えながら生きている……確かにそう考えると改造の固定概念という物は取り払えるか……」
ヘックスさんの【違法改造】による魔改造はそれを急激に行っているだけであって、途轍もなく長い時間があれば、その物自体の形だってヘックスさんが改造しようとしていた形に自然となっていたっておかしくは無い。どう変化するかなんて分からないんだし
「認識を改める……か。確かにその方面では特に何も考えていなかった」
「ヘックスさんが世界の見方を変えれば幾らでもどんな事でも変えられるって思いません?」
「あぁ、そんな気がしてきた!」
すると、ヘックスさんが拾った鉄の棒を上に投げる。なんだか鉄の棒が光っている様な気がする
「世界とはこうあるべき。その形を変えるのが改造だと思っていた。だが違う。全ての物は絶えず変化し続けている」
確かに。毎日何かしら変わる物だ
「その変化に新たな道筋を作るのが改造だ。故に、今から私の凝り固まった思考その物を改造する!」
おぉ……カッコいい宣言だ。全ての物は絶えず変化するという事に自分を当てはめたのか
「まずは一歩目だ」
落ちて来た鉄の棒が、いつの間にか立派な剣になり落ちて来た
「ふっ、思考を切り変える。それだけでこれ程の変化が生まれるか。やはり思い込みというのは怖いな」
「まぁ、思い込みのお陰で色々と出来る事もありますけどね」
プラシーボ効果的に思い込みのお陰で何とかなる事もあるのも事実ではある。まぁ大事なのは使い分けだね
「ふっ、そこは素直に思い込みは良くないと言うべきじゃないか?」
「いえいえ、思い込みが良くない時と思い込みの方が良い時というのは使う物によっては変わりますから。ヘックスさんのは思い込みが無くなった方が良くなったという事ですよ」
これに関してはその場の状況に寄ると思う。詳細を知らないからこそ、非人道的な物を使っていたとしても、それ自体はただの武器という情報しか知らずに思い込みで使い勝手が良くなる人も居ればその逆もある
「君は本当に色々と知っているな?」
「うーん、そうした方が良いんじゃないかな?っていうのを実践してみてるだけなんですけどね?」
一歩踏み出す所で前に出るのをやっていった結果が今だと思う
「まぁ、そういう事やり過ぎて危険な場面にも結構遭いますけど……」
踏み出す所で前に出るをやり過ぎたからか、止まるべき所を飛び越えて行ってる様な気がしないでもない
「あぁ……」
すっごい目で「分かる~」と言いたげだなぁ?




