指名手配
「はっはっは!あまりにもイレギュラー過ぎるな!すげぇなこりゃ……普通は撃ち合いをしてデータを集めるモンなんだが、やっぱこういう存在が居てくれるとまだまだ見直しが必要だって分かるな」
東郷が見つめるモニターの中ではトラップハウスを完成させ、自分の陣地を形成した影人の姿が映っていた。つくづくグレネードやらクレイモアをまだ実装しなくて良かった。こんなのがそんな物を複数持っていたら、間違いなくこの殺し間がより凶悪になっていただろう。あの場所だったらそれこそ錆びた釘なんかをグレネードと共に飛ばして恐ろしい殺傷能力を有していた可能性がある
「銃の性能が知りたいって言っておいたはずなんだがな……ってかマジか。本当に精度は銃にしか適応されてないなこりゃ……じゃなきゃあんな自作の弓で変な方向に矢が飛ばない訳が無い」
モニターを監視し続けていたら、今度は倒した相手の靴紐を抜き取ったと思ったら、金属片やらそこらのゴミっぽい物の中から使えそうな物を組み合わせて弓を作っていた。素材が素材だから多分そこまで回数も使えないだろうし、飛距離も出ないだろうけど、今持っている影人君の武装の中では一番有効射程が長い武器だろう
「リアリティの為に設置したゴミの類がまさかこんな事に使われるとはな……ゴミに隠れてやり過ごすとかは考えていたが……まさかここまでそれを活かすとは……」
身体能力マックスの影響なのか、銃の精度は無くとも関係無いと言わんばかりの暴れっぷりだ。1発でも弾が当たれば倒されるはずなのに、その1発を叩きこまれる前に全てが終わっている。思い切りがよく、自身が苦手とするレンジでは戦わずに回避に専念し、自身のリーチ範囲に入ったら容赦なく仕留める。行動の理由を考えたらとてもシンプルだが、戦闘中にそれをしっかりと行えるそのメンタリティは驚嘆に値する
「当たらなければどうと言う事は無いを地で行ってんな……」
彼はタキサイキア現象が勝手に起こるみたいな事を言っていたが、本来はアレは防衛反応で強い危険を感じた時等に起こるはずだが、一般生活でも自身に対して何かが向かって来たら無条件で発動してしまうのは実際良い事では無い。だが、それを彼自身は使いこなしている様にも思える……それこそ使い過ぎると脳が疲弊して動けなくなるとは言っていたが……これはもしかすると、人間の進化の過程の1つなのかもしれないな……
「彼がミニガンとの戦闘を回避したのにはそういう理由があった可能性もあるな……」
自身に対して発砲される弾丸の雨霰を本来なら複数人からの射撃レベルの攻撃をたった1人で可能にしてしまうミニガン2丁持ちは相手にした場合、弾丸を回避出来る可能性があるのと同時に、自身の脳への強い負荷を掛ける事になるだろうから、まだ自身が狙われていない。他の人が狙っているという状況であれば、そちらに任せるというのはリソース管理の面からでも納得ではある
「少しでも長く戦う為に……サンプルデータの為にか?」
俺がサンプルデータを欲しがっていたから、可能な限り長時間戦闘が出来る様に脳のリソースを残す為の選択……?面白いじゃないか!やはり並の男じゃないな!
「さぁ、それじゃあどんな戦いを見せてくれるか見せて貰おうじゃないか」
そうなると、今から職員向けにちょっとした刺激を加えてやろうじゃないか
『あー業務連絡。業務連絡。今生き残っている職員に指名手配を発表する。このアバターを倒した者。もしくは集団に特別ボーナスとしてリアルで金一封を進呈する。頑張ってくれ』
さぁ、これでどう対処するか見せて貰おうか
「んー?なんか風向きが変わった様な……気のせいか。建物の中だしね」
建物の中で風向きとか無いか。さて、もう少し何とか出来そうな所をやってみますか!
「まぁ、これだけ用意したとしても幾つ機能するかも分からないし、僕がここから追い出される可能性もあるから、全部が動くとは思わない方が良いよな。あ、先にあの仕組みがどういう動きになるか試しておくか」
トラップにするにも一応検証が必要な事もあるし、これで人を呼び寄せるのにも使えるかな?
「ほほぉ、そういう感じになるんだ。これはまた修正必要なんじゃないかなぁ?今回は普通に使わせてもらうけど、これならショットガントラップも似た様な物かな?」
となると、精度の判定とかもどうしてそういう判定が出るのかって言うのも何となく分かるな。となると、このその辺で集めたゴミを組み合わせて作った弓は銃の判定を受けていないから精度の判定に引っかからない。ナイフも弾を撃つ訳では無いから精度の判定に引っかからずに済んだと色々と説明が付いてくる
「近接用にナイフを1本細い鉄パイプと組み合わせて槍も作っておくか」
こうした近接装備品も一応色々な所に隠して置いておけば使えるかな?相手に取られたとしても、銃という圧倒的な火力を有する武器を持っていたら、この辺の今にも壊れてもおかしくない手作りの武器は見過ごされるだろう。さぁ、こちらは色々と用意はしたし、今もしている。人が入って来たら誰も逃がさないぞ!




