勝者の言
「こうしてしまえばもう避ける事は出来ないだろう!」
確かに、遠距離から攻撃する弓相手にそこに接近していかなければならないとなるとかなり厳しい戦いになるのは目に見えている
「まぁ、お忘れかもしれませんが、僕は貴方の矢はキャッチする事は出来ますよ?」
「だろうな。だが、これでどうかな!」
そう言うと、空に矢を一発撃った直後に背中の矢筒から8本の矢を指の間に2本ずつ挟み、弓に番えた。これは……とんでもないのでは?
「これで終わりだ!」
扇状に放たれる8本の矢と上から無数に降り注ぐ複数の矢。前と上からの2面攻撃で1発でも当たれば僕の負けで多分ゴールに到達するまでこの攻撃が止む事は無いだろう。となれば……
「【技破掌】」
上から降り注ぐ攻撃に関しては【技破掌】で消せる事は既に一度やっているからこれは【技破掌】で消す。正面からの攻撃は扇状に撃たれているだけで、今の距離なら正面から1発分しかないから【バレットキャッチャー】でキャッチも出来る。腕は2本あるからね
「全くとんでもない奴だ!」
「貴方もね!」
あの8本同時ショットをすぐにまた撃って来るスカディさん。あの矢筒……もしかして無限に矢が供給される矢筒だったりするのか?
「はぁぁぁ!」
矢を番えてから撃つまでの時間が短くなってるし、上に撃つ時間が勿体ないと思ったのか、8本撃ちオンリーで来た。しかも何か今度は矢の挙動がおかしい。真っすぐ飛ぶのではなく、8本が扇状ではなく、何となく僕を狙う様に曲がっている気がする
「【ジャミング】でホーミング系の攻撃は妨害してるハズなんだけどな……」
ホーミング攻撃は当たらない様になってたと思うんだけど……これは単純にスカディさんが技術で矢を曲げてるのか?だとすると意味分からない位弓の技量が凄いな……
「これで当たらないってどうなってるんだ!?」
「そっちと同じ単純に技術ですよ!」
矢を曲げ撃ち出来るのも技術だし、その矢をキャッチしたり、避けるのも技術だと言えるだろう
「だが、これで終わりだ!」
「はい。これで終わりですね」
もう距離としては2mも無い。攻撃を加えるのも躱すのもラスト1回って所か
「【クラスターショット】!」
「【バリアント細胞】」
この近距離で横に広がる攻撃ではなく、ショットガンの様なコーン状の攻撃が来るだろうと思っていたけど、本当に来た。ここまで隠して来た紫電鳥の浮遊羽根に魔力を込めた更なる加速。こうする事で矢が広がる前に僕に当たるだろう。だが、そのタイミングで【バリアント細胞】を使い、体に穴を開けて矢を躱す。お腹への一撃をお腹に穴を開ける事で、躱すという普通は出来ない回避を見せた事で相手が油断する
「ゴール!」
「はっ……はぁ!?」
仕留めたと油断していなければ、最後に矢を直接僕に刺すって方法を取れたかもしれないけど、勝ったと思わせてその瞬間の油断を使って無事にゴールした
「いぇーい!勝ち~!」
「やる~!」
「は?今のは……はぁ!?」
ゴールのゲートが若干小さい様な気もしたけど、これで僕らの勝ちだ
「それじゃあ、もう僕らには絡まないでくださいね?」
「いや、ちょっとま……」
「契約には従って下さいね?」
「ちょっと待てー!」
うぅむ。やっぱりあの契約書はあんまり効力はないか。まぁ仕方ないよなぁ……
「何ですか?僕らが勝ったんですから、これ以上はもう付きまとわないって決めましたよね?」
「それは……えぇい!破棄だ破棄!それよりも最後のアレに付いて説明しろ!」
目の前で契約書をビリビリに破いて捨てるスカディさん。これどうしようか?
「最後のアレとか言われても、別に僕の持ってるスキルで攻撃を躱しただけですけど?矢は刺さってもいなければ当たってもいませんよ?」
気持ち的には指の間にナイフをサクサク刺していく度胸試しのもっとヤバい版みたいな感じかな?
「どう考えてもアレは当たっていただろう!?」
「いや、どう見てもらっても、矢は刺さってないですよね?ね、ジャック」
「あぁ、矢は刺さってもいないし、怪我した様子もないね?」
ジャックにも確認してもらったけど、怪我は無い
「ゴールするまでに矢が僕に刺さっていればスカディさんの勝ち。刺さっていなければ僕の勝ち。その条件で勝負を受けました。それで負けたから契約は破棄するとか……貴方は多分一生結婚は無理ですよ」
「ぐっ!?」
申し訳ないけど、ここは正直に言って精神的ダメージを喰らわせるしかない
「そもそも結婚する相手の意見すら聞かないのであれば、その後の人生を共に歩む事は出来ないです。ね?」
「それはそう」
「うぐぅっ!?」
ジャックが良い具合に相槌を入れてくれるから精神的に追い込むのも楽で良い
「そんなにハッキリ言わなくても良いじゃないかぁ!」
「いや、貴方の考え方を変えないと良い人が来たとしても、絶対に貴方を選んでも貰えないし、見向きもされませんよ。現実を見てください」
「うっ、ううっ……うううぅ……」
「ハチ君それは流石に言い過ぎじゃないかな?」
「いや、ここで優しくしたらダメだ。そしたらまたジャックが付きまとわられるぞ?」
「確かに。正直今の価値観なら独り身の方がずっといいよ」
うわぁ、ジャックもバッサリ言うなぁ?




