戦闘前の契約書
「では確認だが、下のゴール地点に着くまでに私はお前に矢を当てれば私の勝ち。逃げ切ればお前の勝ちという事で良いか?」
「そうですね。ただ、勝敗を一目で分かりやすくする為に僕の体に矢が刺さっていればでどうでしょう?そもそもの話。貫通する様な矢を放たれたら多分死にますし……」
「む、それもそうか……分かった。威力は調整しよう。それにさっき矢が体に刺さっても抜かないと契約出来るとすら言ったからな。その点は信じよう」
それを信じて貰えるのは助かるな
「ただ、本当に念の為だが、これは契約書で契約させてもらおう。逃げられても困るからな」
「分かりました。えっと、この契約自体はこの追いかけっこが終わるまでにしておきましょう。じゃなきゃ僕が戦場で矢を受けたとしてもその後抜けなくなっちゃいますし……」
「良いだろう」
内容を確認したけど、問題は無さそ……おっと
「ここは訂正というか、消してくださいね?」
「ちっ、バレたか」
「契約書はしっかり隅々まで読めって親に言われてますからねぇ?」
契約書の端に『レースに勝てば2人共私の物とする』なんて物騒な文言が載っていたので、これは流石に訂正させる。レースっぽいけど、これの大事な所はレースではない所。スキーの女神相手にスノーボードで勝負するのもおかしいけど、レースなら僕を妨害して、先にゴールしてしまえば良いだけになるし、僕がゴールするまでに矢を当てたらの部分が完全に息しなくなるからね
「そもそもレースでは勝てないと思ってるから、こういう追いかけっこの形にしてるんですから」
「分かった。ここの一文は消そう」
「あ、もし、僕に分からない様な言語で書くとかなら僕もその契約書にこちらの分からない言語で書かれた契約は無効の一文を書かせてもらいますよ」
「分かった分かった。ちょっと揶揄っただけだろうに……」
「こっちは自分達の未来が掛かってるんで」
これが汚い大人かぁ……気を付けないとなぁ……
「うひひ……これで旦那ゲットだ……」
スカディさん……何かかなり拗らせてる可能性あるな
「では、始めましょうか」
「あぁやろうか!」
隣に居るスカディさんはニヤニヤ顔をしているが……これは、開幕即座に矢を撃つ気だろうな
「スタートの合図はスカディさんがどうぞ」
「了解だ。それではこの雪玉が落ちたらスタートだ」
スカディさんが上に雪玉を投げる。あれが落ちたら多少の音がするだろう。スタートはそれで行ける。何ならスカディさんもそれ合図で来るだろうから僕が見るべきは雪玉ではなくスカディさんだ
「ふっ……へっ?」
雪玉を投げて落ちたら即撃とうと思ってたんだろうけど、僕がジッと見てたから驚いたんだろう。だが悪いけど、ここから更に仕掛けさせてもらうぞ?
「どうしました?雪玉は落ちましたよ?」
「へっ!?いや……」
雪玉が落ちた音が聞こえたけど、動かないスカディさん。動いてくれないと困るんだけど?
「い、行くぞ!」
勿論それに僕も併せてスカディさんにほぼ触れる位の距離間で滑る。速度調整も出来るから問題無いな
「ちょ!?もう少し離れて滑ろ!」
弓を相手に距離を取る方が危ないからねぇ?勿論ド近距離を維持した方が逆に安全だろう。狩りの女神云々なら距離を取った方が危ないのは想像が付くし
「どうやるかなんて僕の勝手でしょう?」
「それは……そうだが……っ!?」
弓の内側に入る位近く。相手の顔で視界を埋める位の距離まで詰めてしまえば弓はまず撃てないだろう
「くっ!顔が良いッ!」
「お褒め頂き感謝です」
何とか距離を取ろうとするけど、それに合わせて僕も距離を詰めて弓をそもそも撃たせない様にする
「こうなったら!」
矢が刺されば僕の負けという事だから、弓に番えずにそのまま直接僕に刺しに来た
「おっと、危ない」
勿論そのまま刺されるとマズイので流石に距離を取る。勿論そうなると流石に相手の距離だ
「もうずぇったいに私の物にする!」
移動先を潰す為の一撃、固定している足を狙う一撃、脇腹を狙う一撃。色んな攻撃を躱してもう一度接近しないと
「はぁー!」
矢を上に撃ったと思ったら、何か凄い量の矢になって上から降って来た。うわぁ、弓使いが使う技に良くある奴だ!
「そう言えばこれって……【技破掌】うおっ!?」
矢の雨に対して真淵で当たりそうな矢を弾く用意はしてたけど、【技破掌】を使ってみたら一撃で全ての矢が吹き飛んだ
「なっ!?」
「じゃ、また矢は撃たせませんよ?」
もう一度距離を詰めて行動を制限する。矢を撃たれるよりは直接刺しに来る方がまだ対処出来るな
「はっ!そうだ!」
どうやら戦法を変えたのか、スカディさんは一気に加速してゴールに向かう。流石にあの速度で行かれるとはちょっといつ来るか分からない矢の攻撃に対応する為にも追いかけるのも難しいかも……
「どっちにしろゴールには行かないといけないし、行くか」
ゴール地点は見えて来たけど、これは……
「これならば私の勝ちは揺るがない!」
ゴール地点に仁王立ちするスカディさん。これは確かにキツイかも……




