弱点を探せ
「こっちはこっちで、皆を信じるしかないな」
ボスらしく振る舞い、ボスらしく散る。その為にも、僕がこの場を離れる訳には行かない。今も僕らの後ろでは戦闘が続いているんだろう。だが、まだ制圧完了の報告は来ていない。でも、皆が負けているとも思ってない。僕が出来る事は皆が勝つと信じてボスを演じ切る事だけだ。だから今回は僕はそっちの救助には行けない
「野郎共!船を近付けさせるな!」
「「「アイアイサー!」」」
これだけ攻撃を見せれば、正面はヤバいと左右に船が分かれていく。そうしたら、この左右にある人が狙う砲台で他のに比べれば弱めの攻撃でチクチクと船にダメージを与える。ラスボスを相手にするなら誰かが血路を開く為の犠牲になる位はやって欲しいね?
「艦長ヤバいっす!少し後ろに回られてます!」
砲撃をしていた1人が撃ち漏らした……という訳でもなく、勿論距離を取って安全に接近する為に背後からの攻撃を選ぶというのも当然だろう。だが、それは当然見過ごせない
「ほう。ならば、後ろの船は船喰いザメの餌だな?」
『了。キールブ……船喰いザメ。発射』
勿論、船喰いザメと言っても本当にサメではなく、キールブレイカーの事だ。僕らの後ろに回ろうとした船はキールブレイカーによって沈められる
「はーっはっは!こんな事もあろうかと、後ろの守りは万全だ!さぁ、この船を沈める?やれる物ならやってみろ!」
まぁ、普通に潜水自体は出来るけどねぇ?
『くっそ……前も後ろも何かヤバいな……そっちは!?』
『左右が一番攻撃としては緩いかも。ただ、細かいダメージはほぼ確実に貰うから緊急修理出来る奴か、相手の攻撃を防げる奴じゃないとダメかも……』
『なんか弱点とか無いのか!?普通に俺らの砲撃が全然効いてねぇんだけど!』
『あの今救助活動してる船って確かマンマミーヤンだよな?あの船って今は例の人と協力してるみたいな事をさっき他の船の奴から聞いたんだけど』
『例の人……ハチ君か。少し話を聞いてみよう』
状況としては芳しくないこの状態で何か出来るとするなら多分……ハチ君なんだろう。正直あまり頼みたくはないが、何かが出来る可能性を考えると、ここは共同戦線を張るのが一番良いと思う。だが、その当の本人が居ないのはどういう事なんだ?
「すまない!マンマミーヤン!少し良いか!」
「あら、ジェイドじゃない。どうかしたのかしら?今は救助で忙しいのだけど?」
「善罪か。それは勿論分かっている。だが、どうにかハチ君と連絡を取れないだろうか?」
「へぇ、アンタが……連絡ね?分かったわ。少し待って」
正直フレンド登録自体は出来ているとは言え、本当にただ出来ているだけで、会話らしい会話なんてした事が無い。この状況でメッセージを送ったとしても、応えてもらえない可能性も全然あり得る
「それで、ハチ君と何を連絡したいのかしら?」
「君らがここに居るという事は彼らもここに居る。それは間違いないのか?」
「ええ、間違いないわ」
「なら話が早い。ハチ君達にも攻撃に参加してもらって、どうにかこちらが攻撃する隙を作って貰えないだろうか?」
不意打ちならお手の物だろう。彼に不意打ちをしてもらって、その隙に俺達が攻撃を……
「まぁ、攻略のトップを走る貴方ならそう考えるかもねぇ?」
「なら、そう伝えて……」
「でも、それは無理ね?」
「は?」
どう考えてもそれが一番良いハズ……
「私が見ていても貴方達の攻撃が効いていない様に見えたのだけど、それで、隙が出来たとして、どう攻略するの?」
「それは……」
確かに、大砲でクイーンズリベンジャーに対して攻撃したけど、ほぼ無傷と言って良い状態だった。だから、ハチ君に隙を作って貰ったとして、その後の攻撃をしても、効かないなら意味が無い。むしろ、今姿を隠しているというアドバンテージを失うだけになってしまうかもしれない
「あのクイーンズリベンジャーは敵対というか、攻撃して来ない相手に対してはあまり攻撃を返していない。全体攻撃チックな攻撃は確かに来るけど、私達の船はハチ君に守ってもらってる。つまり、ハチ君達に相手のヘイトが向いていないお陰で私達は救助船としての役目を全う出来てる。この状態でハチ君達に目立てと言って、ハチ君達が沈んだら……私達は誰も救助出来なくなる……」
善罪の言う事が本当なら今俺達が攻撃を通す為に暴れてくれという事を通してしまったら、状況は最悪な方向に進んでしまうだろう
「でも、何もハチ君達だってずっと動かない訳じゃないわ」
「それはどういう……」
「弱点よ。あの船にだって弱点はあるハズ。その弱点が見つかれば、一気にあの船を沈める事が出来る……と思う。その弱点が見つかれば、水中だったら、ハチ君達に任せれば良いし、水上だったら、ハチ君達に奇襲してもらってその混乱の隙を突いて攻撃すれば良い。だから貴方達は無策で突っ込むんじゃなくて、弱点を探りなさいな。それで活路が開くかもしれないわ。一応その事は伝えておくから、私達は救助に戻るわね」
「弱点……」
確かに、ボスの攻略に弱点を探すのは当たり前だ。船での戦闘という事でそんな単純な事すら頭から抜け落ちていたなんて……これで攻略組だって?笑わせるな。そうだ。俺は攻略組のトップ!ハチ君には負けてないんだ!
「いやぁ、こぉれ楽しっ!ハチ君が嵌るのも分かるなぁ?」
全てを知っている白玉は船に戻った後、誰にも見られない位置で自然と笑みが零れるのであった




