紫の瞳が映し出すのは…………
青空が広がる温かい日、教会に来ていた。
子どもたちの元気な声がそこかしこから聞こえる。
隣にはルーズベルト様がいる。
2人で元気な子どもたちを見ながら、「可愛いね」「そうだな」などととりとめのない会話をしていた。
私は呟いた。
「子ども、いいなあ……」
ルーズベルト様は申し訳なさそうな顔で私を見た。
「すまないな」
「何ですか?」
「リリアナは子どもが欲しかっただろう」
ルーズベルト様が言わんとしていることが分かった。
ルーズベルト様は自身の容姿に自信がない。そんな見た目の自分と、私は子作りなどできないと思っているのだろう。
私は頷いた。
「ええ、私は子どもが欲しいです。そうですねえ、3人は欲しいです」
私がそう言うと、ルーズベルト様はさらに悲しい顔をするのだった。
なんだかいじめているようだわ。
私はそう思いながらも小さくクスリと笑った。
◇◇◇
5年後
エミリア様はガイル様と結婚した。
結婚式に行ったし、手紙のやりとりはずっとしている。
よく王妃殿下やアンジェラ様とお茶会をしている。
王妃殿下とアンジェラ様はまだ言い合うこともあるが、お互い信頼している様子である。
エリック、ユナ様が時々我が屋敷にやって来る。
エリックは両親に急かされて婚活中だ。
パーティーでは婚活中だと知った女性たちに、エリックが囲まれているのを見掛ける。
両親には急かされるし、女の話は長くてくだらないと、疲れた様子でよく愚痴をこぼしていた。
ユナ様はそんなエリックの婚活によく口を出している。
カイル様は今新しい恋をしている。年上の女性らしい。
ほんの時々エリックに付いてやって来ると惚気を聞かされる。そうするといつもエリックはうんざりしたように顔が死んでいるのだった。
私はと言えば…………
――――――
――――
――
今日も小さな天使たちに振り回される。
女の子が裸で庭を駆け回って、それをミオが追いかけている。
私は「服を着なさい」と言うのだが、一向に耳に入らないようである。
男の子が私の元に本を持って来ようとするが、転んで泣きわめく。
私はその子を抱き上げようとすると、その前にルーズベルト様が抱き上げた。
私はルーズベルト様との子どもを2人生んだ。
そして今1人、お腹の中にいる。
ルーズベルト様は2人の子どもに大層甘い。
いつもの難しい顔が、デレデレにだらしなくなっている。
これを見て誰があの堅物宰相と思うだろうか。
私はルーズベルト様と子どもたちに、優しさを注ぎ、愛を受ける。
紫の瞳が映し出すのは、ありきたりな幸せ。
戻れない記憶の先に夢見ていた景色だった…………