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ライセント公爵家の悪事

その日、ルーズベルト様は何やらいつもよりもさらに難しそうな顔をして、いつもよりも遅くに帰って来た。


「一体どうしたのですか?」

「セルラング公爵がライセント公爵の悪事を陛下に報告し糾弾した」

「!」

「ユナ殿と仲の良いエミリア殿はセルラング公爵の中で気がかりなことだったのだろう。そしてエミリア殿がいない今、絶好の機会だったのだろうな」


エリックの顔がよぎる。

まだ言えないと言っていた、王都から離れていた訳と関係があるのかもしれないと直感した。


「そう、ですか……。それで、ライセント公爵の悪事とはどんなものだったのですか……?」



「横領、脱税、提出文書の虚偽、保管義務文書の改ざん、脅迫等だ。

またアイラ殿の学園の中での不当な行動、遅刻や無断欠勤等を揉み消し、アイラ殿を色々と優遇させていたようだ。


そして一番糾弾されていることは、セルラング公爵家の料理人に、家族を人質にして夕食に毒を盛らせたことだ。

致死性はない毒であったが、安全を考えてエリック殿とユナ殿は王都を離れることになった。

その後、結局家族が殺され、自身も狙われて命かながら逃げてきた料理人が自白して、ライセント公爵家によるものだと分かった。


セルラング公爵家とライセント公爵家は険悪な仲であるし、ユナ殿は現在第2王子の婚約者であるが、ちょうどその時は第1王子、ユリウス殿下の婚約者候補であった。

致死性がない毒であったから毒殺が目的ではない、ただの嫌がらせではないかと考えられた。嫌がらせにしては明らかにやり過ぎているが。

このことについてライセント公爵は知らないと言っており、真の目的は分からない。


他にも公爵が認めないことがあり、もしかしたら夫人の暴走、独断によって行われたこともあるのかもしれない――――」





「――――これからどうなるのでしょうか……」

そう聞くと、ルーズベルト様は難しい顔をして言う。


「…………ライセント公爵は何かしら罰は受けることになるだろう。没落することもあり得るかもしれないな。セルラング公爵はそれを望んでいるだろう」

「そうですか…………」


公爵家が没落だなんて大事ではあるが、エミリア様のことを考えると……。

ライセント公爵家が没落すれば、エミリア様はユリウス殿下の婚約者を外れることになるだろう。


「あの、エミリア様は……?」

「エミリア殿には罰はないだろうと思われる。学園でアイラ殿のように不当な行為を揉み消したり、優遇されていたりということもなかった。

それにセルラング公爵はエミリア殿だけは糾弾するつもりはないようで、むしろ同情的である。

そしてライセント公爵家でエミリア殿が冷遇されていたことは周知されていたことであり、なにより王妃殿下は言わずもがなエミリア殿の味方である」


「良かったです……」

私はホッと一息ついた。


それから私は恐る恐る聞く。





「――――ルーズベルト様、ライセント公爵家が没落して、もしエミリア様の引き取り手がいなかったならば、こちらで引き取ることはできないでしょうか?」



ルーズベルト様は困ったように眉を下げて考えるように黙ってから、私を安心させるようにか少し顔を和らげて言う。



「王妃殿下がエミリア殿を悪いようにはしないだろうが、もしそうなったならば、ああ、そうだな。良いのではないか?」



なんでも許してくれるこの人に心が揺らめいて、なんだか分からないけれど戸惑う。

しかし同時に、とても安心した。


「ありがとうございます」

「うむ」



――――

――



「――――うむ、そうだな、良いのではないか?」

ルーズベルト様は再度同じ言葉を、今度は微笑ましそうに言う。

なんだか孫を見るような優しい顔で私を見ている。

友だちが出来て良かったね、とでも言いたそうである。

「むう」

確かにその通りであるが、その通りであるのだが、何か気にくわない。

子ども扱いされているようで。


私は悪戯に言う。

「どういう名目でエミリア様を引き取れば良いのでしょうか? 

そうですね、養子としてでしょうか?」

「養子…………?」

私がそう言うと、ルーズベルト様は頭で処理しきれないようでハテナを浮かべている。

「ええ、私たちの子どもとして。

エミリア様と私は同じ歳なので不思議ですけれど、ルーズベルト様の歳を考えれば変ではありませんし、私はその妻であるわけですから」


そう言うとルーズベルト様は固まった。


「な…………!!?」



「――――さあ、ルーズベルト様、夕食を取りましょう。お腹ペコペコでしょう」


私は内心クスリと笑って、夕食を目の前にして、話に夢中でろくに口をつけていなかったルーズベルト様を急かした。

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