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魔法学校の方士先生  作者: 均極道人
第八章 砂漠
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第一百四十一話 運命を超える選択

長い嘆息が漏れる。


 「この世界に現れた時点で、すでに“因果”は生じていた。一部を斬るだけでは意味がない――完全に離脱するには、“自分”という存在そのものを断たねばならない。」


 陸虚の声が、静かに光の河に溶けていく。


 「陽神の真身も、例外じゃない、この力があれば外錬金丹がなくてもティリオンも救られるんだ……もったいないなあ」


 「――でも…..これで、終わりだ。」


 陸虚は、陽神真身の全力を解き放った。


 まばゆい光が長河を満たし、時の流れそのものが震える。


 掌に浮かぶ光球――自らの“存在”を象る因果の核。


 それを見つめ、陸虚は静かに呟いた。


 「どちらも、僕だ。……けれど、道は一つでなくていい。」


 刹那、雷鳴が轟く。


 陸虚の右手が閃光となり、光球を――二つに裂いた。


 世界が震え、時間が悲鳴を上げる。


 裂けた光球は、それぞれ異なる流れへと飛散していった。陽神真身も徐々に消えてしまった。


 一方は――機械の都会へ。


 南海と砂漠を繋ぐ伝送の光柱に吸い込まれ、


 伝送中の陸虚となって消えた。


 もう一方は――未来の都市へ。


 砂漠の陽炎の中へと落ちていき、


 もう一人の陸虚が、そこで新たに“目覚めた”。


 「……ここは……?」


 眩しい太陽。焼けるような熱風。


妙に格好のつく革のコート……少年。


 ボロのコートに、短銃。


 その「少年」――エマが、ほんの少し息を呑む。


 「……アンタ、誰?」


 同じ瞬間。


 砂漠の機械都市の中央、巨大な転送陣が青白く明滅している。


 その周囲で、アモロン校長は額に汗を浮かべながら計器を睨みつけていた。


 「……ふぅっ……助かった……!」


 深く息を吐き出し、胸を撫で下ろす。


 「一瞬、下層遺跡の座標が暴走してたからな……。本気で別のところに飛ばしたかと思ったよ。」


 そして次の瞬間――


 「ドッガァァン!!」


 転送陣の中心から、山ほどの果物が吹き飛んだ。


 リンゴ、オレンジ、バナナ……その中から、


 果汁まみれの陸虚が、ゆっくりと顔を出す。


 「……な、なんだこれ……?」


 周囲を見渡す。


 歯車と蒸気が交錯する金属の街――アウロラ錬金魔法学院の機械都市。


 陸虚は果物の山から立ち上がり、頭を掻きながら呟く。


 「…………で、アモロン校長、一体どんなプロジェクト?」


 その時、転送陣の中心に。


 「……にゃっ!」


 小さな影が飛び出してくる。


 熟練の身のこなしで、果物の山をひらりと飛び越え、


 一直線に陸虚の胸元へ――。


 「おっと、小花!」


 「にゃー!」


 小花は嬉しそうに陸虚の頬をすり寄せた。


 陸虚も思わず笑い、そっと撫でる。



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