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グリム・ライト  作者: 紅零亜種
第5章 大監獄【クロス】
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作戦会議

  時間は少し遡り、ゼロたちがギルド【グリム・ライト】に到着した次の日の朝───


「それじゃあ、これよりゼーラの依頼についての作戦会議を始める……っと言いたいところだが──」


 サファイアは、そっと閉じていた目を開き、目の前の現状にため息をついた。


「なぜウチのギルドメンバーはこういう大事な話をするときになると集まりが極端に悪くなるのかな」


 サファイアは嘆くように呟いた。


「まぁ、みんな忙しいからしょうがないよ。ボクも別に嫌いじゃないから気にしてないよ」


 ゼロは優しくサファイアを慰めた。

 昨日までの宴の活気とは打って変わり人が少なくなった部屋にはゼロ、サファイア、ミラー、ゼーラとその膝の上に座っているポチの五人しかいなかった。


「まったく、他の連中は何をしているんだか……、ヴォルグいるか?」


 サファイアがそう言って手を叩くとどこからともなくウォルグが現れた。


「はい、なんでしょうかサファイア様」

「マリアはどうした?」

「アリアであれば、今は朝食の後片付けと昼食の準備を」

「分かった、トラマルは?」

「フェイ様と共に訓練所で鍛錬を」

「リオンは?」

「いつもの日課である魔石の採取に」

「ルーカスは?」

「朝食後のティータイムを取ってくると言って二階のテラスに」

「ドクターは?」

「準備があるとお部屋に戻られました」

「じゃあ、スザクは?」

「センセーは、ポチが夜中に倒れているのを見つけて部屋に寝かしてからずっと籠ってるのです!」


 ポチがサファイアの質問に元気よく答えた。


「……分かった。他の連中はほっておいて作戦会議を始めることにしよう」


 サファイアはため息をつきながら言った。


「よろしいのですか?サファイア様」

「ああ、問題ない。さぁ、始めるよ」


 サファイアはテーブルの上に地図を広げた。


「それで、今回の作戦の概要を説明する前に少し講義をしようか」


 サファイアはゼーラに向き直った。


「君は、魔導士と魔術師の違いは分かるかな?」

「魔導士と魔術師の違いですか?魔導士は、魔術師の総称ですよね?」


 ゼーラは自信なさげに答えた。


「半分正解で半分間違いだよ」


 サファイアは苦笑いを浮かべた。


「まず、魔導士とは魔術師の中でも特に優れた才能を持ち、オリジナルの魔法を使いこなす者たちのことを指すんだ。つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「そうなんですね」


 ゼーラは感心したように頷いた。


「じゃあ、どうやってその違いを見分けるのですか?」

「それは簡単だよ。【固有魔力】の有無だよ」

「固有魔力ですか?」

「そう、固有魔力。それを感知できれば、その人物が魔導士かそうでないかが分かるんだ」

「なるほど……」


 ゼーラは納得したように頷いた。


「でも、固有魔力ってそんなに簡単に感知できるものなんですか?」

「う~ん、一般的には難しいと思うよ。特に一般人はね。でも、君ならできると思うよ」

「私がですか?」


 ゼーラは驚いた表情を見せた。


「うん、君はゼロと長時間一緒に行動していたんだから、自然とゼロの魔力に慣れているはずだよ。だから、少し集中してみてごらん」

「分かりました」


 ゼーラは目を閉じて集中した。すると、すぐに目の前に淡い光が見えた。


「……あれ?」


 ゼーラは目を開けた。


「どう?何か見えた?」


 サファイアが尋ねた。


「はい、何か光みたいなものが見えました」

「それが固有魔力だよ。ちなみにその光の色はその人によって特徴が出る。まぁ、今の君にはそこまで詳しくは分からないと思うけどね」

「そうなんですね」


 ゼーラは感心したように頷いた。


「それで、なんでボク達魔導士の説明をしたかというとね、これから君はいろんな人と関わっていくだろう。その時、その人が魔導士かどうか見分けられるように知っておいてほしいんだ」

「分かりました。でも、なんで魔導士と魔術師を区別する必要があるんですか?」

「それは、騎士団……いや、今は聖騎士団だったね。彼らの中にも魔導士がと同様に固有魔力を有し、感知できる奴らがいる。もし君が聖騎士と遭遇した時にそれが魔導士かどうか判別できれば君が戦うか、戦わなくて済むかの判断材料になるってことだよ」

「なるほど……」


 ゼーラは納得したように頷いた。


「さて、前置きはこのくらいにして作戦の概要を説明しようか」


 サファイアは地図に指を置いた。


「まずは、目標を明確にしていこうじゃないか」


 サファイアは地図に記された様々な情報を指で示しながら説明を始めた。


「今回の依頼の最終目標は、サヤ姫の救出。強いては聖騎士団からこの国の実権を取り戻すことになる。それで間違いないかなゼーラ?」


 サファイアはゼーラに尋ねた。


「はい、間違いありません」


 ゼーラはしっかりと頷いた。


「よし、それじゃあこの目標を達成するためにすべきことを整理しよう」


 サファイアは地図の上の駒を動かしながら説明を続けた。


「まず間違いなく我々の敵となるのが2つ。聖騎士団と聖堂協会だ。それじゃあ今から順に敵の全貌を把握していこうじゃないか」


 そう言うとサファイアは色のついた駒を取り出し、机に転がした。


「敵の数は、約千人以上。そのほとんどが聖騎士団だね。中でも厄介なのが四大団長と呼ばれる四人の聖騎士たちだ。彼らは、それぞれ固有魔力もしくは、聖剣の力を持っている」

「聖剣……?」


 ゼーラは首を傾げた。


「そう、聖剣。彼らが持つ聖剣はそれぞれ特殊な能力を持っているんだ。その力は、固有魔力を持つ魔導士に匹敵するほどの力がある」

「そんなものが……」


 ゼーラは驚いた表情を見せた。


「ここから詳しい話は、ミラー頼むよ」


 サファイアはミラーに視線を向けた。


「了解。じゃあ、説明するね」


 ミラーはそう言うと、サファイアの前に色のついた駒を拾い、各団長について説明を始めた。


「まずは、【蒼の団】団長のキース・ラスト。彼の率いる蒼の団は、平たく言えば、戦闘特化の団だね。戦争はもちろん援軍として他国に出向くことの多い団でもある。そのため、団長のキースは団のまとめ役としてかなりの戦闘能力を持ち、若いながら他の団長にも劣らない実力を持っている。固有魔力はないけど、その強さの根源にあるのは聖堂協会から譲り受けた【雷神】と呼ばれる聖剣。その刀身から発せられる電撃は並大抵の魔術師では耐えられないほどの威力を持っている。実力は昨日戦ったマスターが一番知ってるかな」


 ミラーはそう言いながら、青色の駒を配置した。


「次に、【紫の団】団長のベルナール・サード。彼女の率いる紫の団は、偵察と諜報が主な任務。彼女自身も優秀な斥候であり、その情報収集能力は団員の誰よりも卓越している。その上、彼女は固有魔力の使い手で、その能力は【幻影】。彼女の作り出す幻は、人間のみならず動物さえも騙し、敵を混乱させる」


 ミラーは紫色の駒を配置した。


「そして、【緑の団】団長のライラック・セカンド。彼の率いる緑の団は、謎が多くて、噂程度にしか情報が入ってこない。【団員無き団】なんて言われたりしているね。その理由は彼が団長の役職に就くと同時に前任の団長や団員の多くが死亡したり、脱退したりしたって噂もあるね。実際ところは真偽は分からないけど、確かなことは騎士団だったころから所属している古株だってことだね。だからこそ、現状における聖騎士団の秘密を知っている可能性が高い。そして彼もまた固有魔力の使い手でその能力は【植物育成(グロー・プラント)】。文字通り植物を自在に操る能力だよ。その上、彼はその能力を最大限に活かすため、戦闘にも用いている。その戦闘スタイルはまさに独特で、植物を使った罠や攻撃を仕掛けてくる」


 ミラーは緑色の駒を配置した。


「最後に、【紅の団】団長のギル・ファースト。彼の率いる紅の団は、治安維持が主な任務で、王都を中心に活動している。そしてギル・ファースト、彼の過去について調べてみたんだけど、なかなか面白いことが分かったよ」


 ミラーは赤色の駒を配置した。


「彼とキースは、騎士団に入る以前からの幼馴染で、とある戦争で住んでいた村が巻き込まれて行き場を失っていたところを今の聖騎士長のガレスに拾われてから一緒に過ごしてきた仲らしいね。これはマスターの方が詳しいかな?」


 ミラーはゼロに視線を向けた。


「そうだね。確かにあの二人はガレスが拾ってきた孤児だったね。昔はよく一緒に遊んでいたな」


 ゼロは懐かしそうに言った。


「それで、肝心の彼の能力だけど、どうやら彼は固有魔力は使えないみたいなんだ」

「え?固有魔力が使えないんですか?」


 ゼーラは驚いた表情を見せた。


「うん、少なくともボクが調べた限りでは使えないみたいだね。でも、その代わりに彼には聖堂協会から授かった剣がある」

「聖剣ですか?」

「いや、違う。彼の剣は、魔剣。それも5()()()()()()()()()()()()()()【強欲の大罪 アモン】の力を封じた【強欲の魔剣】だよ」

「えっ!?」


ゼーラは驚いた表情を見せた。


「アモンってあの5年前の戦争に第一王子を殺して、最も被害を与えたと言われている魔神ですか?」

「そうだよ。そして、その魔神の力を使えるのがギル・ファースト。彼はその力で聖騎士団最強と謳われている」

「そんなに強いんですか?」

「うん、強いよ。その証拠に地図を見てほしい」


 ミラーは地図を指差した。


「5年前に比べてアヴァール国の領土が南側に増えているだろ。ここには、帝国に引けを取らない軍事国家があったんだけど、4年前くらいだったかな。ギルとキースの二人でこの国をほぼ壊滅させたんだ。おかげで聖騎士団の実力は本物だって証明されて、周りの国も下手にアヴァールにちょっかいをかけられなくなったって訳だよ」

「僕がいなかった間にそんなことがあったのか」


 ゼロは驚いた表情を見せた。


「以上がボクが集めた四大団長の情報だよ」


 ミラーは話を終えた。


「さて、ここに追加されるのが聖騎士長のガレス・アルバートと聖堂協会の最高顧問のベール・ロッドとカリベル・ルック・マロリーの二人の計3人だね」


サファイアは、残りの駒を配置した。


「聖騎士長のガレス・アルバート……、嘗て兄上や私たちと共に戦い、アヴァール国を守ってきた英雄にして、兄上とジークと同じ、八つの禁忌【時の守護者】の保有者。聖騎士団の中では最も脅威にななるだろうね」


 サファイアはガレスの駒を指で押さえる。


「そして、この二人についてだが」


 サファイアはベールとカリベルの駒を指差した。


「カリベル・ルック・マロリー、こいつは教皇の血筋を引いている分家ってだけで今の地位についてるだけで、汚職に金、利権を漁り、傲慢なだけ爺さんだね。発言力さえあれど、それ以外に何も特徴のない。こういう手合いは思考回路も分かりやすくどうとでも転がせる」


 サファイアはカリベルの駒を弾き飛ばした。


「我々が最も警戒すべきはこの男、ベール・ロッドだ」


 サファイアはベールの駒を指差した。


「ベール・ロッド……、彼は最高顧問の中でも最も古参であり、聖法の扱いに長けている。聖堂協会において信頼も人望もあり、人格者として有名だが、最高顧問になる前の一切の経歴が不明。だが……、」


 サファイアは一度息をついた。


「もし、今回の聖騎士団の反逆を裏で糸を引いている者がいるとすれば、まず間違いなく彼だ」


 サファイアはベールの駒を強く睨みつけた。


「証拠はあるのかサファイア?」


 ゼロが尋ねた。


「いや、証拠はない。だが、2年前くらいかな。とある事件にスザクが巻き込まれたときにトラキアでベールと会っていてね。その時にこの眼(虹彩の魔眼)で彼を見た。」


 サファイアは自身の眼を指差した。


「歪、白と黒、いや、それ以外にも多くの何かが混ざり合い濁りきっている。そんな印象だったよ」


 サファイアは少し俯きながら言った。


「そうか……」


 ゼロは少し考える素振りを見せた。


「うん、まぁ、それは置いといて、敵の情報を整理できたところで結論から話そう」


 サファイアは顔を上げ、ゼーラの方を向いた。


「今の我々では圧倒的戦力差で押しつぶされて負け。なので、先手必勝!やられる前に仕掛けて相手陣営を無茶苦茶にしてついでに戦力確保しようというのが今回の作戦だよ」


 サファイアは自信満々に言った。


「えっ!?大丈夫なんですか?」


 ゼーラは心配そうな表情を見せた。


「まぁ、大丈夫じゃないね」


 サファイアはあっさりと答えた。


「えぇ……」


 ゼーラは困惑した表情を見せた。


「まぁ、でも、勝算はある。なんせ、敵は我々の行動パターンを把握していない。つまり、奇襲ができるってことだよ」


 サファイアは自信満々に言った。


「でも、それって危険じゃないですか?」


 ゼーラは心配そうな表情を見せた。


「そうだね。でも、それがこの作戦の醍醐味なんだよ」


 サファイアは笑顔で答えた。


「では、この作戦を開始するにあたって我が親愛なる兄上にやってもらいたことがあってね」

サファイアはゼロに向き直り、小悪魔のような笑みを浮かべて言った。

「悪いが兄上、捕まってきてくれ♡」



また更新再会します

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