あの人
「オヤジ帰ったぜ!」
王城の一室である会議室の扉を勢いよく開けてキースは中に入ってきた。
「お前はもう少し静かに入れないのか……」
キースの後ろから入ってきたギルが頭を手で押さえた。そんな二人を苦笑いして出迎えたのは、聖騎士長のガレスだった。
「おう、帰ってきたか。まずは無事で何よりだ」
王の間にいた時とは違い、ガレスの表情は柔和なものになっていた。
「ガレス聖騎士長、ひとまず魔獣の群れは片付けました。おそらくいつもの帝国からの牽制だと思われます」
「やはりか……」
「ええ、ただ今回は今までとは規模が違う。恐らく目的はいつもの嫌がらせではなく、警告の意味があったのだと思います」
「警告、ねぇ。ってことは向こうさんいもバレてるわけか、こっちの状況が……。さて、どこから情報が漏れたか……。」
ガレスはため息交じりに呟いた。
「でももう目星は大体ついてんだろギル~」
キースはそう言いながらギルの肩に腕を回した。
「当たり前だ。だが証拠はない。確実な証拠を出すまでは泳がせておくつもりだ。無論監視付きでな」
ギルは肩に回った手を鬱陶しそうに振り払った。
「そうか、ではこの件についてはギルに引き続き任せるとしよう。頼んだぞ」
「わかりました」
「そういえば、他2人はどうした?」
ガレスは尋ねた。
「ベルナール団長は教会へ、フリップ団長は王子にそれぞれ報告に向かいました」
「そうか、わかった。それじゃあ、キース。次にお前の報告を聞くことにしよう」
ガレスはそう言ってキースに向き直った。
「おう、遠征についてだろ?そりゃもうバッチリよ。聖堂協会の連中に顎で使われたのは癪だったが、任務はこなして───」
「いや、そうじゃない。そのことについては報告書を既に受け取っている。私が聞きたいのは別のことだ」
ガレスは遮るように言った。
「別?」
「ああ、お前が一週間前にトラキアの港についているにも関わらず、今日まで王都に帰ってくるのに時間がかかったのかだ」
「あ~、それについては……、その……、あれだ!ちょっとしたトラブルがあってな……」
ガレスの問に、キースは視線を逸らすように頬を掻いた。
「お前は昔から嘘をつくのが下手なんだから諦めろ」
ギルはそう言ってキースの肩にポンと手を置いた。
「だぁ~わかった。正直に話すよ。実は、ここに来る前にあの人と戦って、その時に壊れた線路や車両を直してから来たんだよ」
観念したようにキースは白状した。
「あの人?それは一体誰のことだ?」
「それは、ゼロさんだよ」
キースの口からその名が出た瞬間、二人の時が止まった。
「はっ!?いやいやいやいや、それは流石に冗談だよな?」
最初に我に返ったのはギルだった。
「いや、マジで。にしても強かったな~ゼロさん。俺も本気じゃなかったけど、全然あの人の底は見えなかったぜ」
「お前はそういう大事なことは先に…………はぁ~~~」
ギルは大きな溜息を吐き頭を抱えた。
「…………、くっ」
一方、ガレスは俯き身体を震わせていた。
「どうしたオヤジ?」
キースは心配そうに声をかけた。
「がははははは、そうか、あいつは生きてたか!そうか!そうか!」
突然、顔を上げたかと思うと、豪快に大声で笑い出した。
「ちょ、いきなりどうしたんだよ」
キースは困惑した様子で尋ねた。
「いやすまんすまん。やはり奴がまだ生きていたか。それでゼロの様子はどうだった?」
「そうだな、5年前に見た時とあんま変わってなかったな。あ、思い出した。そういえば、ゼロさんと一緒にサヤ姫んとこ侍女もいたな。ほらギル、お前んとこのラグーンが追ってた女」
「……、お前は次から次になぜそんなに問題がボロボロと出てきやがるんだ。」
ギルはこめかみを押さえながら低い声を出した。
「それで、お前はそんな状況で奴らを逃してきたのか?」
「ああ、まあな。運悪く他の魔導士も来ちまってな。そいつらに足止めされてる間に逃げられちまった」
「はぁ……、お前というやつは……。いや、今更お前にそれを言っても無駄か」
ギルは額に手を当て項垂れた。
「まあまあ、そう落ち込むなってギル~。とりあえず俺の話は以上だぜ」
キースはギルの背中を叩きながら明るく笑っていた。
「ふむ、二人ともご苦労だった。下がっていいぞ」
ガレスは微笑みながら告げた。
「おう!」
「失礼します」
二人は一礼すると部屋を出て行った。
「さて、これから忙しくなるぞ」
ガレスは椅子に深く腰掛けると目を瞑り、静かに呟いた。
そういえば、専用のXアカ作りました。




