#6 『異界』見知らぬ土地に投げ出され…
塾を終えた僕は、異常事態を感じた帰宅途中に列車から
投げ出された。入学初日の夜に何が起こっているのか…
列車が何かに乗り上げたような衝撃と轟音、
慣性の法則…だっけ?電車とかバスで急ブレーキが
かけられたりすると体が前につんのめるアレ…、
それの凄く強烈なやつが僕を襲う。
そのまま前に投げ出され….、反射的に右足を前に出す!
足が地面を掴んだ、続いて左足!
…なんとか左足を地面につけたけど体は前に傾いたまま、勢いもついたまま…!
【無理だッ!!】
心が直感する!
無理に踏ん張っでも耐えられそうにないし、
無理に耐えようとしたら足でも捻るかも知れない!
僕は二歩目の左足をついた後は、無理に耐えない事にした。
左足が地面を離れる、体が宙を舞う、
地面に叩き付けられたが勢いがある為か地面を転げる。
手を付いて勢いを止めようとするがとても無理、
下手に踏ん張れば怪我をしそうだ。
そこで、肘を折り畳んで無抵抗状態で転がり続ける。
交差点一つ分の距離を転がっただろうか…?
僕はようやく転がり終わり、身を起こしたのだった。
よくテレビドラマとかでスタントマンの人が、バイクで
転倒し地面をゴロゴロと転がり続けるシーンがあるが
アレはオーバーにやってるんじゃないね。
実際になってみると分かる!
一つ賢くなった気がした。
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しかし、ここはどこなんだろう…。
一面の雪景色はどこに行ったのか…。
身を起こし、ゆっくりと立ち上がろうとする。
少し体が痛いけど、このくらいで済んだのは奇跡的だ。
両手をつき、四つん這いの状態から立ち上がった時に
手のひらが触れた路面から感じる違和感…。
地面が…、というか路面のコンクリートがやけに硬い。
そして、やけに粗い。所々はがれた表面が人工的な
小石のようになり、そのまま路面上に散らばる。
あまりに殺風景な、だだっ広い道路。
見回してみると、どうやらここは駅前の広場の様だ。
まっすぐに伸びる道路に沿う様な両側の街並み、
そして駅に視線を向ければ、日本では見た事がない様な
西洋風の建物が駅舎になり煌煌と内外が照らされいる。
どこに行けば良いか分からないので、
僕は取りあえず駅に向かって歩いていく。
周りには誰もおらず、物音一つしない。
辺りを照らす街灯の側を通った時に何かおかしいと、
駅舎の目の前に来た時にそれは確信に変わる。
【ここは日本ではない】と。
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たどり着いた駅舎の入り口は、今いる道路より、
50〜60センチぐらい高い位置にあった。
三段程の階段があり、高さによって道路と
駅の敷地とが明確に区分されているのが分かる。
あるいは車などが暴走し、駅校内に突っ込むのを
防ぐ意味でもあるのだろうか…。
駅舎にある駅名を記している看板のような物…、
見やれば駅名が書いてある。
読めない。
漢字でも、ましてやひらがなカタカナでもない。
アルファベット?数字?何かの記号?
それらが混ざった様な…。
なんて言うんだろう…
例えば南平和駅で言えば、
『みナみ平ワ』駅と書いているような…、
そもそも何語なんだろう…?
人もいない、文字も読めない…。
仮に人がいたとしても、言葉が通じるの?
不安しかない。
どうしよう…、どうしたら良いのか分からない。
答えの無い自問自答に疲れた僕は、
駅舎前の階段に取りあえず座ろうかなと思った。
階段に背を向け、腰を下ろそうとした時、
「-ーーッ‼︎‼︎‼︎」
声にならない悲鳴のような物を感じ、
あわてて駅舎の方へと振り返る。
飛び込んでくる、というより先程の僕の様に
まるで投げ出されたかのように人が飛んできた。