攻略対象の王太子はヒロインに説得される
「ねぇ、なんで……?なんでマーガレットを追放しようとしているの?」
定期的に開催される非公式の茶会で、いとこの公爵令嬢にそう詰められたとき、どう言えばいいのかわからなかった。
ただ、嫌われたくなくて保身に走ろうとした。
それを思いとどまったのは、王太子としての責務を思い出したから。
人のため、世のため、国のために生きなさい。
普段は嫌と思うほど刷り込まれていたその日常を、今回ばかりは在って良かったと思い直す。
マリアが好きだから。君が悲しそうな顔をするのが見たくなかった。
そして、彼女は──だから。
情けない告白を聞いた彼女は、言い切った。
「あのね……!マーガレットが大好きだから避けられて泣いてたのにマーガレットが離れて泣かないはずないじゃない!なんならこの身分捨てて追っかけるわよ!私が世界一幸せにして見せるから……」
萎んでしまった語尾から見るに、彼女も何か思うところがあるのだろう。
彼女は顔を上げ、完璧な淑女の礼を執ったあと、言った。
「王太子様、わたくしは──の伯爵令嬢マーガレットを恋慕っております。ですのでご命令ではない限り、あなたの想いに応えることはできません」
一線を引かれた。そう思って手を伸ばした先に、彼女はいなかった。
きっと、私が想像していたのとは違い、彼女は伯爵令嬢に虐められていなかった。
偏見があったのだ。彼女の属性に。
毒を飲んだのも、彼女なりの贖罪ではなく心が壊れてしまったからだろう。
私は己の偏見を自覚するとともに、天真爛漫なマリアが私と目を合わせることはなくなった。




