表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放先の辺境で前世の農業知識を思い出した悪役令嬢、奇跡の果実で大逆転。いつの間にか世界経済の中心になっていました。  作者: 緋村ルナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/16

第6章:果実から産業へ、ヴェリーナ開発局の挑戦

 オルティス商会の妨害は、実に陰湿なものだった。彼らはレルナ村へ向かう街道に手の者を配置し、ヴェリーナを買い付けに来る商人たちを脅したり、悪評を流したりし始めた。

「レルナ村の果物は毒だ」「食べると病気になる」

 そんな根も葉もない噂のせいで、客足は一時的に遠のいた。村人たちの間に不安が広がる。

「このままじゃ、せっかく作ったヴェリーナが売れなくなっちまう……」

 焦るカイルたちを前に、私は落ち着き払っていた。

「大丈夫です。生で売るだけが、ヴェリーナの価値ではありませんから」

 私はかねてより計画していた次のステップに進むことにした。それは、ヴェリーナの加工と商品化だ。

 この果実の素晴らしいところは、その圧倒的な美味しさだけでなく、驚くほど高い加工性にある。熱を加えても風味が落ちにくく、水分量や糖度のバランスも絶妙。ジャム、ジュース、果実酒、さらにはその栄養価を活かした薬品や化粧品の原料としても使える可能性を秘めている。

 私は村の使われなくなった納屋を改装し、ささやかな加工場を作った。そして、「ヴェリーナ開発局」と名付けた組織を立ち上げたのだ。

「皆さん、見ていてください。ヴェリーナは、姿を変えてさらに大きな価値を生み出します」

 私は村の女性たちを集め、ジャムの作り方を教えた。砂糖は貴重品だが、ヴェリーナ自体の甘みが強いため、少量で済む。美しい金紅色をしたヴェリーナジャムは、まるで宝石を煮詰めたように輝いていた。パンに塗って食べた村人たちは、その濃厚な味わいに再び感動の声を上げた。

 次に、果実を搾ってジュースを作った。長期保存ができるように、煮沸消毒や瓶詰めの技術も指導する。さらには、発酵の知識を応用して果実酒の試作にも取りかかった。

「すげぇ……。ただの果物が、こんなに色々なものになるなんて」

 カイルも開発局の仕事に加わり、目を輝かせながら作業を手伝っている。

 これらの加工品は、保存がきく上に、付加価値が高い。オルティス商会の妨害で生果実の販路が狭まっても、加工品なら別のルートで売ることができる。

 私は信頼できる行商人数名と密かに連絡を取り、完成したヴェリーナジャムとジュースを王都の富裕層向けに販売してもらった。もちろん、「レルナ・ヴェリーナ生産組合」の公式認証印をつけた、ブランド品としてだ。

 結果は、私の予想以上だった。

「このジャムは絶品だ!」「毎朝の食事が楽しみになった」「このジュースは病気の妻が飲んでくれた」

 口コミはすぐに広がり、注文が殺到した。オルティス商会がいくら悪評を流そうと、実際に口にした者たちの満足の声にはかなわない。むしろ、彼らの妨害がヴェリーナの希少性を高め、かえってブランド価値を上げるという皮肉な結果になった。

 開発局の成功は、レルナ村に新たな変化をもたらした。畑仕事が苦手な者や、女性、老人にも「瓶詰め」「ラベル貼り」「検品」といった仕事が生まれたのだ。村全体が、ヴェリーナという一つの産業で活気づいていく。

 ある日、開発局で忙しく働く村人たちの姿を眺めながら、私はカイルに言った。

「果物一つで、人の暮らしも変えられるんです」

 カイルは、誇らしげに頷いた。

「ああ。アメリアさんが、俺たちにそれを教えてくれた」

 私たちの挑戦は、まだ終わらない。ヴェリーナという奇跡の果実が持つ可能性は、まだまだこんなものではないのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ