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追放先の辺境で前世の農業知識を思い出した悪役令嬢、奇跡の果実で大逆転。いつの間にか世界経済の中心になっていました。  作者: 緋村ルナ


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第3章:黄金色の奇跡、その名はヴェリーナ

 前世の記憶が蘇った私は、すぐに行動を開始した。まずは、この奇跡の種を育てるための土壌作りからだ。

 村長のエリオットさんに頼み込み、誰も使っていない痩せこけた小さな畑を借り受けた。

「アメリアさん、悪いことは言わん。あの土地じゃあ、雑草くらいしか育たんよ」

 心配そうな村長に、私は自信たっぷりに微笑んでみせた。

「見ていてください、エリオット村長。きっと、素晴らしいものを育ててみせますから」

 村人たちは、私が狂ったとでも思っただろう。毎日毎日、森から落ち葉や枯れ草を集め、家畜のフンを分けてもらい、それらを畑の一角で混ぜ合わせる。前世で「堆肥」と呼んでいたものだ。発酵する際の独特の匂いに、村人たちは顔をしかめていた。

「おい、あんた。何してるんだ? 臭くてたまらん」

 カイルが眉をひそめてやって来た。

「これは土に栄養を与えるための魔法ですわ。見ていてください、この土が生まれ変わりますから」

 私は説明もそこそこに、作業に没頭した。土壌のpHバランスを調整するために草木灰を混ぜ込み、水はけを良くするために砂を運び込む。来る日も来る日も、私は土と向き合い続けた。侯爵令嬢だった頃の白い手はすっかり汚れ、爪の間には土が詰まっている。だが、不思議と嫌ではなかった。むしろ、生命の源に触れているような充実感があった。

 そして数週間後、最高の土壌が完成した。私は満を持して、あの日見つけた青く光る種を、丁寧に土の中に埋めた。

 しかし、現実は甘くなかった。

 一週間経っても、芽は出ない。二週間経っても、何の変化もない。

 村人たちの視線が、憐れみから嘲笑に変わり始めるのを感じた。カイルも、呆れたようにため息をつくばかりだ。

「だから言ったろ。無駄だって」

「……まだです。まだ、終わりじゃありません」

 私は諦めなかった。前世の研究員としての勘が、この種には特別な何かが必要だと告げていた。気温か? 水分量か? それとも……光?

 あの種は、青い光を放っていた。もしかしたら、夜の月の光に何か秘密があるのかもしれない。その日から、私は夜中に畑へ通い、月の光を浴びながら種に語りかけるようになった。

「お願い、芽を出して。あなたは、私の希望なのよ」

 その姿は、他の者が見れば完全な狂人だっただろう。

 そして、種を植えてから一ヶ月が経った満月の夜。奇跡は起きた。

 土の表面が、かすかに盛り上がっている。そして、そこから小さな、本当に小さな双葉が顔を出していたのだ。

「……あ……!」

 私は膝から崩れ落ち、涙を流した。嬉しくて、愛おしくて、たまらなかった。

 それからの成長は、目覚ましいものだった。双葉はぐんぐんと蔓を伸ばし、太陽の光を浴びて青々とした葉を茂らせていく。やがて、星のような形をした白い花が咲き、その花が落ちた後に、小さな実がなり始めた。

 実は日に日に大きくなり、その色を緑から美しい金色、そして燃えるような紅色へと変えていった。最終的に、それは手のひらに収まるほどの大きさの、金色と紅色が絶妙に混じり合った、まるで宝石のような果実となった。

 収穫の日、私は震える手でその果実を蔓から切り離した。ずっしりとした重み。甘く、芳醇な香りが鼻をくすぐる。

 私はその果実を「ヴェリーナ」と名付けた。

 一口、かじってみる。

「―――っ!」

 言葉を失った。脳が蕩けるような、圧倒的な甘さ。しかし、それは決してしつこくなく、爽やかな酸味が後を追いかけてくる。果汁が口の中いっぱいに広がり、体に活力がみなぎっていくような感覚。栄養価も、加工性も、きっと最高レベルだろう。これは、ただの果物ではない。世界を変える力を持った、奇跡の果実だ。

 私は、成功を確信した。

 このヴェリーナが、私を絶望の淵から救い出し、そして私を捨てた者たちに、最高の形で復讐する力となるだろう。

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