番外編3:果実でプロポーズ
ヴェリーナ・シティでは、新しい文化が生まれていた。
それは、「ヴェリーナの苗木」でプロポーズをするというものだった。
きっかけは、カイルだった。
彼は市長として多忙な日々を送っていたが、ずっと心に秘めている女性がいた。レルナ村時代から、共に開発局で働いてきた幼馴染の女性だ。
ある日、彼は意を決して、大切に育てた一本のヴェリーナの苗木を手に、彼女の家を訪れた。
「……急に、どうしたの? カイル」
驚く彼女に、彼は照れながらも、まっすぐな目で苗木を差し出した。
「これは、俺が特別に育てた苗木だ。俺たちの村を変え、俺たちの人生を変えてくれた、希望の木だ」
彼は一息つき、続けた。
「この果実のように、一緒に育ってくれないか? 二人で水をやり、太陽を浴びて、苦しい時も、嬉しい時も、一緒に乗り越えて、いつか大きな実をつけたい。俺と、結婚してほしい」
彼の不器用だが、心のこもったプロポーズに、彼女は涙を浮かべて頷いた。
この話は、あっという間に街中の噂になった。
「なんてロマンチックなんだ!」
「指輪より、ずっと素敵じゃないか!」
以来、ヴェリーナ・シティの若者たちは、愛を誓う証として、宝石の指輪ではなく、生命力に満ちたヴェリーナの苗木を贈るようになった。
贈られた苗木は、夫婦になった二人が家の庭に植え、大切に育てる。子供が生まれれば、家族でその木を囲み、成長を祝う。やがて実るヴェリーナは、家族の愛の結晶となる。
果実は、ただ経済を潤すだけではない。人々の心をつなぎ、愛を育み、新しい家族の歴史を紡いでいく。
アメリアは、市役所の窓から、若いカップルが幸せそうに苗木を抱えて歩く姿を見て、微笑んだ。
私が蒔いた種は、私が想像した以上に、たくさんの幸せな実をつけてくれている。
それこそが、何物にも代えがたい、最高の報酬だった。




