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27 懐かしき湖畔

「やぁ、もう皆集まったかな?」


 えらく陽気に現れた王子を公爵令嬢テルマイルが睨みつける。

 その視線を感じた王子は足が少し震え、その震えに興奮する。


「ぁあああ!なんと美しい瞳!その視線で何人の男を虜にして来たんだい?」


 すると突然陽気な雰囲気は無くなり。


「駄目だね君は。この世界を背負う男の女になるというのに。――っと、皆が来た様だね」


 テルマイルの座る椅子の反対から4人の姿が現れる。


 一人は決闘を申し込まれたアリス。

 二人目は重厚なフルプレートアーマーを着込んだデリファン。

 三人目は軽装鎧に槍を持つザクス。


 そして四人目。


「おや?これはこれはカーライル・ツヴァイソン勇爵ではありませんか。もしかしてこの決闘をお止めに?」


 王子は鋭い視線をカーライルへ投げる。

 しかし彼はその視線を軽く流し。


「いやいや、そんな無粋な事はせ――」

「王子聞いてくれよ!元勇様がどうしても俺達の代わりに決闘させろって言うんだぜ?」

「いや、じゃから儂が今しゃ――」

「そうです!何故か関係の無い元勇者様がこの決闘に介入させろと酷く強引にですね」

「元勇者元勇者言うが儂はまだゆう――」

「私は恐れ多くてお断りしたんですけど家を潰されたいのか?とか脅されて来るんです!」

「そ、それは少し言い過ぎたと申し――」

「なんと!それはなんとも面白いじゃないか!是非勇爵様にも参加して頂こうではないか!」


「なんじゃこいつら!いい加減ちゃんと喋らせんか!全く最近の若いもんは老人……では無いが、こんな幼気な儂を蔑ろにしよってからに。それとお前達。わしゃまだ勇者の地位を誰にも譲ってはおらーん!」


「これは我が昔馴染み達が失礼致しました。今後は元は付けぬよう言い聞かせますのでご容赦を」


「ふん、分かればよい。それより決闘の話じゃ」


「おぉそうですね。何故勇爵様が?とは今は問いません。ですが流石に三対一ではテルマイル公爵令嬢に不利と言うもの。勇爵様のみが代役として戦われると言う事でよろしいですか?アリス嬢」


「勇爵様が出て頂けるなら私はそれで構いませんけど……」――チラッ


 アリスはあっさりデリファンとザクスを切り捨て剣聖勇者に全てを委ねる。

 しかしそれに納得するテルマイル嬢ではない。


 彼女は毎日剣を振るうアレクであれば、デリファンとザクス二人相手でも問題ないと踏んでいた。


-――それは幼少期。

母同士が仲良しだったサイフォン家とハイネケン家だったが、家格の違いで二家で何処かへ出かけると言う事は出来なかったが、サイフォン家が護衛に付くと言う名目で二家だけでピクニックへ出かけた事があった。


 大きな湖に広い草原の所々に花々が咲き乱れ、それは夢の様な景色だった。


 そこにアレク君と手を繋ぎ走り回ったあの日――それは現れた。


 湖の畔にあった大きな繭。

 それが繭だとわかったのは、殻が破れ中から大人の二倍はあろうかと言う巨大な蝶が産まれた時だ。


 産まれ立ての蝶の魔物。

 初めて見たこの世ならざる生物に私は身動きが出来なくなった。呼吸さえままらなかった。


 大人たちは丘の上であり、そこにはアレク君と私しか居なかった。

 本当の騎士であるアレクのお父様が近くに居れば、その怖さも半減したかもしれない。


 呼吸が出来ない!怖い!怖い!食べられる!

 だけど恐慌状態の私の前にアレク君は、剣を抜き魔物との間に立ちふさがる。


「テルル。そこから動いたら駄目だからね」


 一瞬だつた。


「え?」


 それこそ何が起こったのか、瞬きをしていたら分からなかっただろう。

 魔物は真っ二つに分かたれ、一瞬の内に絶命した――。


「あ、なんか死体から出て来た。ドロップ品て言うのかな?」


「……」


「テルルみたいに綺麗な剣だね」


「馬鹿」


「なんだよ、こんな奇麗な剣なのに。ちょっと大きいけど」


その時、アイテムについていた魔物の肉片が私の膝に。


――ドロッ


「馬鹿!」――ドボーーーン。



 思い返せば良い思い出か悪い思い出か分からない。

 でもあれから10年。


 ずっと剣を振っているアレク君が負ける筈が無い。そのはずだった。

 だけど目の前の老人は不味い。


 その昔、辺境でディアボロスと言う悪魔を倒した人。剣聖勇者。


「一介の生徒同士の決闘に剣聖勇者様が代理に立つとはどう言う事ですか!立会人!撤回を求めます」


「んー。でもテルマイル嬢も一介の生徒の喧嘩にモドキでも騎士なんて者を代役位立てたんでしょ?じゃダメだね」


「彼はモドキなどではない!当家が認めた正当な騎士よ!――あ」


「ふふふっ、自分で認めちゃったら立会人としても後は見とくだけしか出来ないねぇ」


「――クッ」


「それはそうと、その騎士モドキ君はまだかい?そろそろ棄権とみなして負けにしちゃおうかなぁ」


 王子のその言葉に誰にも気づかれずガッツポーズを決めるカーライルだったが、一瞬にして気を引き締める。


「来よった、か」


 勇爵の言葉に、全員がカーライルが睨む方向。テルマイルの後方へ視線を向ける。


「お待たせしました!ちょっと武器を取りに行ってたんで遅くなりました。それにしてもなんか人が多くて緊張しますね」


「アレク……遅いわよ」


「あぁゴメンねテルル、でもほらこの武器見てよ!懐かしいでしょ」


「しゃべり方!戻ってるわよまったく」


――そんなやり取りをよそに、その武器を見た一定のメンバーが目を見開き、同じセリフを叫ぶ。


「「「なんでお前がそれを持ってんだ!!」」」


 知ってる者は知っている。主にデも園をプレイした人間なら。


――その名も、絶命剣「デモンズブレイカー』


 デモ園の最終兵器を。 



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