きろく星―母は……
空に浮かんでいたのは――
ひとつの、淡くにじんだ星だった。
輪郭ははっきりせず、
まるで水面に映った影のように、
ゆらゆらと揺れている。
近くにあるはずなのに、
どこか遠くにあるようにも見える。
その星は、
確かにそこに“ある”のに――
触れようとすると、
形を変えてしまいそうだった。
《カチッ》
にこ「わー!すごーい!」
サカキ「ここが、きろく星よ。こんな大人数の任務なんてあまりないわよ」
リンリン「リンリン、わくわくします!でも……少し怖いですね」
るい「そうだね。ちょっと怖いね 」
ライラ「私も見たいものがあるから……」
その言葉は、
どこか静かに沈んでいた。
ヤシロ「もう着陸だ」
《ウィーン……》
宇宙船のハッチが開いた。
そこには――
水のように揺れる
記録の海が広がっていた。
にこ「海の上、歩ける!」
リンリン「不思議ですねぇ」
サカキ「見たくないものも見ないといけないかもしれないわ。覚悟しなさい」
るい「はい……」
不安そうなか細い声だった。
るいと、にこが一歩前へ踏み出した。
《カチッ》
「ミラ、ライラ。あなた達は姉妹。だけどね、ミラは地球に行くの。この星と同じくらい素晴らしい星なのよ。離れてしまうけれど、またいつかどこかで会えるわ」
優しい声がした。
ライラ「お母さん……」
にこ「え?じゃあ、ミラって?」
ライラ「ミラは、私の姉。つまりあなた達のお母さんよ」
るい「どういうことですか?」
ライラ「私たちは小さい頃に離ればなれになったわ。地球では、美紀と名乗っていたけれど……お母さんの本当の名前はミラよ」
るい「ミラ……」
にこ「素敵な名前だけど……なんかね……」
ライラ「……今の声、聞いたでしょ?
――あれが、私たちの母よ。
姉は、プログラムを作るためにも、地球で学ばなければ行けなかったのだと思うわ。
慎さんと出会って、あなた達が誕生した。」
空気が、わずかに歪んだ。
誰も、言葉を発しなかった。
《カチッ》




