変わらない夜
《ドッドッドッドン》
静まり返った深夜。
その音は――
まるで、何かの始まりを告げるように、
階段を駆け上がってきた。
るい「はぁ、うるさ……また、にこが夜中に帰ってきたんだ」
私は、水沢るい。27歳。
実家暮らし。
彼氏もいないし、貯金もあまりない。
正直、人生はあまり楽しくない。
母は口うるさいし、
本当は実家から出たいと思っている。
それでも――
なんだかんだで流されるまま、ここにいる。
帰ればご飯もあるし、楽だからだ。
私の家族は5人。
父、水沢 慎。刑事。
最近、妙な事件に関わっているらしい。
“特殊”だと、本人は言っていた。
でも――
その言い方が、少しだけ引っかかっていた。
母、水沢 美紀。専業主婦。
とにかく細かくて、よく口喧嘩になる。
私とは正反対の性格だ。
妹、水沢 にこ。21歳。
派手で、自由で、いつも外にいる。
正直、理解できない。
祖母、水沢 頼子。
穏やかで、物知りで、少し不思議な人だ。
私は――
自分を探している最中、なのかもしれない。
《ガチャ》
部屋のドアが開く。
にこ「お姉!!ただいま」
るい「ちょっと!ノックしてよ!
また夜中に帰ってきたの?
うるさいから静かに階段上がって。私、寝てたんだけど」
にこ「仕方ないじゃん!
友達から連絡あったから、ちょっと出かけてたんだって!」
るい「あっそう。みんな寝てるんだからね!」
にこ「ねぇ、またお父さんいないの?」
るい「仕事でしょ。
最近、ちょっと“特殊な事件”に関わってるって言ってたし」
にこ「あー言ってたね。
何が“特殊”なの?って感じだけど」
にこは、クスッと笑った。
るい「……さぁね」
少しだけ、間があいた。
るい「でも、あの言い方――
ちょっと変だった」
にこ「え?」
るい「いや、なんでもない」
るいは、わずかに視線を逸らした。
るい「もういいから、部屋戻って。
私、明日も朝から仕事なんだから」
にこ「分かったよぉ。おやすみ」
るい「はいはい、おやすみ」
ドアが閉まる。
静けさが戻る。
にこは人懐っこい性格だが、
正直、夜中に帰ってくるのは迷惑でしかない。
るい「はぁ……また二度寝だ」
ベッドに体を沈める。
――明日も、きっと。
いつも通りの一日が始まる。
――そう、思っていた。
《カチッ》
どこからか、音がした。
るい「……え?」
一瞬だけ、空気が揺れた気がした。
でも――
すぐに、何もなかったかのように静まり返る。
るい「……気のせい、か」
そうつぶやいて、目を閉じた。




