第22話 ある日のオフィス
「私が……広告に?」
ミスシャー……じゃない、社長から告げられたのは、私にも予想外の言葉だった。私がハシレンジャーになったことを社長にも言ったのだが、すると社長は新しい広告に出演したらどうかと言ってきたんだ。
「私が広告に出るなんて……。そんなの恥ずかしいじゃないですか!」
「ああ、君にも一応そういう感情は存在するんだね。もう無いものかと思っていたよ」
「でもミスシャー、酷いじゃないですか! 『妹は預かった。返して欲しければ広告に出演しろ』だなんて!」
「そんなことは言ってないが!? ただ『せっかくなら鳥羽くんも広告に出たらいいんじゃないかね?』と言っただけだがね!?」
「妹を……栞を返してください!」
「本当に妹はいるんだね!? それは知らないが、別に誘拐とかしてないからね!?」
「あまりふざけたことを言うと、これからミスシャーのことを社長と呼びますよ!」
「好きにしたまえ!? というかむしろ社長と呼ぶのが普通じゃないかね!?」
ということで、私は新しく自分も出演する広告を作ることになってしまった。自分が広告に出るなんて、考えたことも無かったな……。とりあえず案を考えないとな。
そして数日後、私はオフィスで橋田の業務が落ち着くのを待っていた。経理の仕事はもう橋田も慣れたものだが、私に比べるとまだ遅い。でも私も今日の分の経理の仕事は終えてしまったから、とりあえず橋田を待って広報の仕事に行こうとしているわけだ。
「あー、今日は暇だな。業務が大体終わってしまった。何かやることはないだろうか。フォトウェディングとか」
「誰とですか! 唐突に花嫁姿を残さないでください!」
「私はウエディングドレス派じゃなくてな。体操服派なんだが、いいカメラマンはいるだろうか」
「白無垢とかじゃなくてですか!? そんな派閥聞いたことありませんよ!?」
「体操服のゼッケンを相手の苗字に変える瞬間と言ったら無いよな」
「知らない文化! どこの地域で育ったんですか!?」
「群馬県前橋市だ」
「前橋市の人に謝ってください!」
口を動かしながらも、橋田は手を動かしている。ハシレンジャーの活動で早退した分が溜まってるんだっけな。大変だなあ。でも私もこれからはそうなるのか?
いやいや! 私は経理の仕事なんてちょちょいのちょいだからな! ハシレンジャーとの両立なんて簡単なことだ!
ハシレンジャーと言えば、橋田はこの間言ってたケイシマンについて何か調べたんだろうか。ちょっと聞いてみるか。
「ところで橋田、ケイシマンについて何か分かったか?」
「……いえ。調べるとは言いましたが、地球に来るのが初めてのケイシマンについてどう調べたらいいものかと悩んでます」
「そうだろうな。私も橋田が困っていると思って、一緒に困ろうと思ったところだ」
「解決策を持って来るとかじゃないんですか!? ただ困ってる人間が2人に増えただけですよ!?」
やはり何もまだ調べられてないか……。こちらには何も調べるヒントが無いからな。仕方の無いことだ。
ま、それは司令に任せるとして、一旦橋田には広報の方を手伝ってもらわないとな。
「橋田、それが終わったら次は広報の方を手伝ってくれないか? 私がハシレンジャーになったことで新しい広告の作成指示が出てるんだ」
「また広告ですか……。今までのは広告として全く機能していない気がしますが、今度は大丈夫なんですか?」
「ウーロン茶! 間違えたもちろんだ!」
「どんな間違いですか! 全然違いますよ!?」
「今回は私と橋田でビタミンドリンクのCMを作るぞ! ヒーローと言えばビタミンドリンクだからな!」
「その常識は知りませんが、本当に大丈夫ですか? 部長が心配です」
「失礼だな橋田! 私はちゃんとこの日のために気合いを入れて増量してきたんだぞ!」
「ボクサーじゃないんですから! 普通ダイエットでしょう!?」
今日も橋田はキレキレだな。このツッコミがあるから、橋田との会話は楽しいんだ。社長も同じようにツッコミを入れてくれはするが、やはり橋田に入れてもらうツッコミの方が心地良い。……まあ、ただ私が橋田のことを好きなだけなんだけどな。
「橋田、まだ経理の仕事は終わらないのか? あまり時間をかけすぎるなよ。いつ爆発するか分からないからな!」
「仕事を時限爆弾だと思ってませんか!? そんな物騒な仕事を引き受けた記憶はありませんよ!」
「何を言ってるんだ橋田は。爆発するのは私だ」
「なんで部長が爆発するんですか! 仕事をしないと爆発する爆弾だったんですか部長!?」
「正確に言うと、私のストレスが爆発するぞ!」
「鬼上司だった! 怒られないようにさっさと済ませます!」
「なんかイライラしてきたぞ! その辺に落ちてる金箔ソフトでも壁に叩き付けたい気分だ!」
「その辺に金箔ソフトは落ちてません! 世紀末の金沢ですか!?」
私の圧に負けた橋田は、なんとか経理の仕事を片付けてくれた。汗を拭いながら歩く橋田と一緒に、私は広告を撮影するスタジオへと向かった。




