終焉と黎明
音が、消えた。
あまりに静かで、まるで世界に私達だけが取り残されたみたい。
きっとワタクシの心は、あの頃のままずっと二人だけの秘密基地に隠れていて、少しだけ背伸びをした大人の身体が、勝手に家出をしていただけなのかもしれない。
幼い時なら、もっと早くに言えたんだろう。
成長して、色んなことを知って、言いたいことを心の奥底に沈めて………それが大人になることだと、王族の務めだと、奪う者の責務だと勘違いして。
それも、今日で終わり。
だから、最後にひとつだけ………本当に、本当に心から伝えたかったことを言うね。
「………この………」
シャルロッテが口を開くと、血の塊が溢れ、咳き込みとともに言葉が途切れる。
視線で助けを出すかと問うクライスに対し、エルフリーデは静かに首を横に振った。
「この内乱は………ワタクシの愚かさが招いた代償です。弁明の余地もありません。ですが、ワタクシを奉じて戦った者たちは、誤った真実により欺かれた哀れな子羊に過ぎないのです。罰を受けるべきは、ワタクシ一人。何卒、陛下の大御心により、寛大な処分を………」
言い終えると、シャルロッテは僅かに頬を緩ませ、顔を上げた。
反逆者でも、王女でもない、無垢な少女のようなその表情………それは世界でたった一人、エルフリーデだけが知っている姉の顔だった。
「エルフリーデ………貴方の作る国を、私も見たかった。けれど、これでお別れ。いつも我儘ばかり言って、全部貴女に押し付けてごめんね。これが最後のお願い。ジェベルを頼むわ」
屈託のない笑顔。
シャルロッテは全てを伝え終えると、糸が切れたように意識を失い、その場に倒れ込んだ。
「………なにそれ。好き勝手言って。本当に、最後まで自分勝手なんだから………」
エルフリーデの呟きは風に溶け、歴史の狭間へと消えていった。
「どうする。宰相たる俺がこの場を収めてもよいが、それでは吟遊詩人が歌うにも、歴史家が記すにも、いささか面白みに欠けるが………」
若き宰相の不敵な物言いに、エルフリーデは鋭い視線で応えた。
彼女はゆっくりと下馬し、横たわるシャルロッテの身体を抱き寄せる。
「寝てるところ悪いけど、少しだけ小芝居に利用させてもらうわよ。恨み言は聞かないわ、お互い様なんだから」
眠るように身体を預ける姉に、少しだけ怒ったような声で語りかける。
そしてエルフリーデは、眼下の将兵に二人の姿がよく見えるよう向き直ると、シャルロッテの手を高く取り、凛とした声で宣言した。
「第一王女であり、此度の内乱の旗頭となった我が姉シャルロッテは、今、自らの罪を謝し、後事を王である私に託した!!聞き届けよ、これこそが新王エルフリーデが名において刻む、始まりの法である!!直ちに武器を捨て、過ちを認めるならば、恩赦により一切の罪を問わぬ!!しかし、自ら奉じる主の言葉すら軽んじ、なおもジェベルに対し叛逆の火を焚べるというなら、その者は死を以て償うこととなろう!!」
瞬間、湖面を揺らす雨音のように、大地に金属が落ちる音が戦場を支配した。
北部軍の将官が必死に声を張り上げようとも、もはや無意味だった。
そこには、傷つき倒れた主を抱きしめる新しき王の姿があった。その峻烈な威厳の前に、叛意を示そうとする兵は一人として存在しなかった。
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