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黄金伝承こぶしおう  作者: 木村さねちか
その男、神代流
3/4

葉山家

 その夜、葉山家では家族会議になった。

 俺の義理の父である当代葉山破局流伝承者の葉山真一郎、先代の葉山悟に俺はことの顛末を話した。


「気持ちはわかるが、流、何のために高先生が居ると思ってる? まあ、お前ならやりかねんことだが」


 真一郎は渋い顔をして言った。


「こんなガキのけんかにコウがでしゃばるまでもない。あんたならどうするんだ? 真一郎」


 真一郎はさらに渋い顔で言った。


「まあ、自分で始末をつけるだろうな……問題は軽々しく舞心流の技を見せたことだ」


「なにがまずい? 技を見られたところで一日一朝でマネできる芸事でもなしに」


 それを聞くと真一郎はさらに渋い顔になった。


「流、お前が思うより舞心流の敵は多い。古くは源氏、足利氏、織田氏、徳川氏、新政府軍。その他諸々の舞心流に討たれ、名を落とした連中の子孫。あるいはショウ・マクファーレンの毒牙にかかった者たち。その先代、リョウ・マクファーレンの野望に組したものとアメリカ合衆国政府を陰で操るロバート・ハルフォード」


「ものの見事に敵しかいないな? うらみってやつは恐ろしいぜ」


 ドン! と真一郎はテーブルをたたき、傍目には遥が少し青ざめている。


「よさんか、真一郎。流はお前の弟子ではない。舞心流のことに口を挟むな。そう言いたいのだろう? 流」


「いかにも、爺さん」


「しかし――」


「そもそも、だ、わしが流に武芸を仕込んでいるのはそのうらみを晴らさせるため。真一郎、お前は流の父、ショウを殺し、わしは流の母、妙子を殺している。モノ言える立場にないことをわきまえよ」


「しかし、父さん、流を養うのはその罪滅ぼし――」


 悟は苦々しい笑みを浮かべてその真一郎の言葉を遮った。


「育ててやったから殺すのは勘弁してくれと? 真一郎。そもそも葉山家には舞心流には借りはあっても貸しはない。破局流開祖厳顔にまでさかのぼってそのうらみ、お前が晴らすというなら真一郎、お前が流を殺せ」


「それは話が飛躍しすぎです! 父上」


「わしはモノの道理の話をしているのではない。流がわれらをどう思い、どう処するかは流の決める事。わしらにできることは正々堂々とそのうらみつらみを果たせる用に流を育て上げる事。それが葉山静山への供養ともなろう。話は終いだ。流、見過ごせぬ悪がお前の前に立つならそれを討て」


「いいのかい? 爺さん」


「わしは一向にかまわん。遥、飯にしよう」


「ありがとう、おじいちゃん。お父さんは心配しすぎ。普通の人間に土下座からサマーソルトキックなんてできないんだから」


「巻き込まれてる自覚はないのか? 遥?」


 真一郎は娘の身を案じているのだろう。


「大丈夫。流だってもう子供じゃないんだから。今日はお鍋だから温めなおすね?」


 そういいながら遥は台所にむかった。


「流、頼むから遥を面倒ごとには巻き込まないでくれ」


 真一郎は父親の顔でそう言った。


「巻き込んですまない。できる限り努力はするさ」


 俺はそう言いながら三つ指を立てて真一郎に頭を下げた。

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