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8、物語の結末

4歳のヘラルドは高熱で寝込み前世を思い出していた。


この世界はゲームの世界だ!俺 ゲームの世界に転生しちゃったよ。

確かこの王子って良いのは顔だけでポンコツだったような。

一国の王妃を優しい笑顔で癒すって あり得ねーだろう!

ヴェロニカもエスティローズもいい子達だったと思うぜ。

普通に考えて婚約者が他の女とイチャイチャしてたらムカつくだろうよ。

それを棚に上げて、『お前には王妃としての資質が無い』とか、こいつマジで馬鹿なんだよなー。・・・って俺がそれかよ。


あーあ、こんな事なら妹が欲しがっていた物買ってやれば良かったな。


『いてっ。』


頭がズキッと痛んだ。


前回と同じ様に友人4人の結束を高めるべく陰で動いていい友人関係を作るよう努力した。

そして今回は以前より早く隠し扉の存在に気づきクロードと情報共有が出来た。


『いたっ。』


また頭痛がした。


「なあ、クロード今回は早く日記の存在に気づけて段取りよく出来る様になったな。」

「そうだな。でも、子供過ぎて出来る事が少ないけど。はは。」

「二人であの山に行ってみないか?」

「うーん、そうだな。でもまたリセットされると困るから詳細に記しておいてくれよ。

 言い訳はどうするか?」


8歳の王子が友と登山など許されるはずもなく、日々王子教育もみっちり入っていた。

クロードは記憶を継承しているが、ヘラルドはやり直し人生の為一から勉強しなければならないのだ。


今すぐにでもマンデュルイ山へ登りたかったが、子供の俺達は体力的にも立場的にも登る事は出来ず、二人は2人が出来る事を懸命に行った。


そう言えばさ、あの時山で何か言いかけていたよな・・・。

ルドは記憶が無いから確かめられないけど。


あの山でルド曰くプレイヤーは『ルドの人生が見たい』って言ってた。だからお前はこの物語から抜けられないって。


俺には理解出来ないけど、ルドには分かるのかな?


「なあ、ルド マンデュルイ山でな プレイヤーは『お前の人生を見たいからループさせてる』って言ったんだ。『だからお前は抜けられない』って、プレイヤーはお前に執着があるんだな。」

「ああ、俺もお前から聞いた情報を詳細に記してて気付いた。プレイヤーに俺は面識は無いと思うが、俺と言うキャラクターに執着している事は分かる。でも、なら何で俺が毎回ハッピーエンドになる設定にしないのかが分からない。


俺達が転生する前の世界にあったゲームだって話しはしただろう?ゲームの世界に転生したって事も信じられない事だけど、それをプレイしている奴が他にいたなんて考えもしなかった。


つまりプレイヤーがある程度設定したこの世界を俺達は踠きながら生きているって事になるんだが、見たい結末に設定すれば良いだけだ。だけどこのプレイヤーは俺達はに自由に生きさせてそれを見ているって言った。


しかも結末が気に入らないからリセットしているのではなくて、続きがないからってそれがどう言う意味か分からない。


あと、俺達がどうせすぐ終わりが来る、と投げ槍で生きても駄目なんだよなー。

懸命に生きる事に意味があるみたいだった。


結局 マンデュルイ山に行って答えを聞くしかねーんだよな。」


「ああ、でもまだ行けない。

 そう言えばさ、他の転生者はこんなに回数重ねててお前みたいに違和感を持った事ないのかな? アイラはお前が言う主人公だろう? しかも結末も知っているのにここの所は毎回望む結末 『王子との結婚』は出来ていない訳だろう? 何かがおかしいとか気付かないのかな? マルクスにしたってアイラに執着しない方が幸せになれるだろうに。何故転生して何度もループしているのに毎回愚かな道を選択するんだろう?」


「なあ、クロードは記憶があるだろう? アイラは主人公として最初から存在していたよなー? マルクス君はどうだった? 最初から存在していた? アイラの取り巻きとして影が薄くて分からなかったけどいたっけ?」


「んなぁ? マルクス、マルクス それがさー、チーム アイラはお前、シオン、ゲムスト、そしてもう1人いたのは間違いないんだけど、マルクスだったかが分からないんだよなー。」

「俺も。ゲームでプレイしていて誰かいたけど、前回のキャラクターが、日記にあるのとは全然一致しないんだよ。」

「まあ、ここ最近アイラを選んでいない訳だからその間マルクスがどうしていたかは定かでは無いけど、小説書いたのは前回が初めてなんだよね。だからあんな奴は今までいなかったと思うんだよ。」


確かにマルクスと言う存在はあったが、同一人物と捉えるには違和感があった。


「ああ、もしかして転生者は己の意思でゲーム内を自由に行動出来るのかもしれないな。」

「どう言う事?」

「俺は今までにアイラ、ヴィー、ローズ、皇女 何度も選んで来ただろう? これがプレイヤーの意思か俺の意思かは分かんないけど、取り敢えず原作のゲームとは違う物語を選んでいる。

それと同じ様にアイラも、マルクスも自分の意思で自由に動ける。

若しくは、マルクスは今までは通常の登場人物だったけど、前回から転生者がマルクスに入り込み考えて行動する様になった・・・とか。」


「まあ、そうだったとして何が言いたいの?」


「いや別に。俺の人生にあいつらはあまり関係してないから、どうって事も無いんだけどさー、何で俺達 転生者がここにいるんだろう?って、何で同じ境遇の人間なのに協力しようと思わなかったのかな?って。」


「そうだな、同じ目的でもあれば協力出来ていたかも知れないけど、アイラは関わり合いたくない人で、マルクスは関わる必要性が無かった人間だからだろうな。

今世では協力したら何か変わるかもって思ってるって事?」


「うーーーーーん。政治的判断でアイラとの結婚はあり得ないけど、友達くらいには関わりを持っても良かったかもって。マルクスだって『何やってんだ』って思っても声を掛けたりしなかっただろ?学園にいるうちぐらい交流を持っても良かったのかも。


アイラの境遇はとても不幸だけどそこに介入しては物語が大きく変わるし、俺への執着が増しそうで出来ないけど。まだ出来る事はあったのかも。あの4人の事ばかり可哀想がって、悪かったかなってさ。」


「お前は王子だ。普通の貴族とは違う。仕方ない選択だったと思うよ。

今回はどうするんだ? じゃあ、アイラと友達するのか?ゲーム補正は大丈夫か?」

「分かんねー! 分かんねーけど、今までと同じルートじゃ芸が無い。

 兎に角、山まで登れる様になったらすぐに行ける様にしよう。」


前回とほぼ同じ物語を進んでいった。


俺が懸命に生きる姿って、何なんだろう?

王子はオリジナルストーリーの中では、アイラに出会い天真爛漫で優しく素直に笑い、怒ったり泣いたり、裏表の無いアイラに惹かれる。大きな口で笑い、権力に屈しない強さに惹かれる。

今の俺は、貴族にとって天真爛漫も純真無垢も裏表が無い事も魅力の一部であっても全部であってはならないと知っている。王族として突き入る隙を与えてはならない。

それが俺の生きる世界。故にアイラとの未来を選択しない。


俺はクロードとは違い完全記憶は無い、これで何度目の学園生活になるのだろう。

「クロード、お前何回目の学園生活?」

「さあな、もう数えてない。」

「お前、今ならこの学園きっての天才なんじゃねーか?」

「おう、テスト問題も覚えてるからな。王子様の問題教えてやろーか?」

「これでも王子だからな。自力で頑張るさ。」


「お、見ろよ。マルクスだぞ。」

「ん? 本当だ。」


「僕の可愛い小鳥たち、今日もその愛らしい声を聞かせておくれ。」

「マルクス様! 今度のお茶会には私とご一緒して下さいませ。」

「いいえ、私と一緒に参りましょう!」

「うん、有難う素敵なレディに誘われてとても嬉しいよ。でも僕には決められないから皆で一緒に行くかい?」

「そんな・・・。」

「はい、私はそれでも構いません!」

「そう、マリエッタちゃん有難う。他に行く娘はいる?」

「では、私も一緒にお連れ下さい。」

「うん、じゃあユーリちゃんも一緒ね。楽しい一日が過ごせると良いよね。」


前回より物腰が柔らかいと言うか、軽薄では無くなった。

マルクス君には前回の記憶は無いはずなのに印象が違っていた。


「マルクス君は 今回ヴェロニカに付き纏ったりはしていないの?」

「気にかけてはいるが、直接声を掛ける事はないな。だからヴェロニカはマルクスを認識していないんじゃ無いか?」

「そうか、今回お前が本を出版していないから参考書がない訳だ!」

「ああ、そう言えば前回は俺が書いた本の真似をしていたんだっけ? それでアイラを引っ掛けるつもりだったんだよな。」

「そう、じゃあ今回の彼が素に近いのかな? 前回より無理がなくて良いなぁ。」

「前回は女性皆に好かれたいって感じだったけど、今回は皆に優しいって印象で悪く無いね。」


それから翌年にはアイラが入学して来た。

アイラは今回も王子狙いでイベントを起こすべく様々な事を行っていた。


アイラはやはり貧困時代の不遇から何としても王子との関係を築きたいと思っているのだろう。毎回凄いハングリー精神だ。

これは、王子が好きなのか、金持ちが好きなのか打算的過ぎて微妙な所である。


「なあ、クロードあの庭に行って、イベントを起こしてみようかと思っているんだ。」

「大丈夫か?」

「だから聞いてくれ。俺はアイラと付き合う気がない。だが、今回のイベントを起こす事によって、ゲーム補正が行われ俺がアイラに夢中になったらリセットしてくれ。」

「はぁー、分かった。そしたらマンデュルイ山は遠のくけど、しゃーねーなー。

 了解、相棒。」


ヘラルドは護衛と友に奥庭に歩を進めた。

ポッカリ開けた空間に着くと、腰を下ろし横になり手を頭の後ろで組んだ。

目を閉じ、これからの事を考える。


アイラは鳥を抱えてくるのだろう。

「傷ついた鳥が」ってね、その後をどうしようか。取り敢えず 名を聞いておしまいかなぁ?

ガサガサと木々を掻き分ける音がして、女の子が飛び出して来た。すかさず護衛が女性の前に立ち塞がる。


「あ、あの すみません。私怪しいものではありません。私 アイラって言います。

実はお散歩していたら目の前に傷ついた鳥が落ちて来て・・・。」


「・・・ああ、いいよ。」護衛を制した。

「そうなんだ、どうぞ私は失礼するから。」


「えっ? あの!」

「何か用かな?」

「あ、いえ。あの傷ついた鳥です。」

「そうだね。それをどうするのか知らないけど、気をつけるんだよ。」


それだけ伝えるとその場から去った。


一方アイラは肩透かしを食らった状態だった。

本来なら、鳥を一緒に木に登り戻してあげるのだが、ちっとも興味を示してくれなかった。


えー! 折角名前をお伝えする機会だったのに行っちゃったー!

「何て言う名なの? アイラか、君はとても優しいんだね。」って言ってくれる所でしょ!

 どうして名前すら聞いてくれないのよー。」ぷんぷん怒っていた。


でもいいわ。まずはファーストコンタクトってとこでしょ! 次はきっと名前を覚えてもらうんだから。

アイラの気持ちとは裏腹に既に十分知った名前だったが。


「お帰り、どうだった?」

「庭で寝そべっていたら、鳥を抱えて案の定来たよ。でも、ここをどうぞって場所を明け渡して戻って来たよ。」

「ははは、そうか それでお前の感情は動いたのか動いてないのか?」

「さーね。今の所ないよ。次回会った時に君はこの間の優しい子ってなるのかどうかは知らないけどね。考えたけど王子として今回の反応が一番普通かな?と思ってさ。」

「んー、そうかもな。本来の目的は忘れてくれるなよ。」


「俺達も打算的に行動しているが、アイラはその上を行くよね?

彼女が転生者だからなのか、どうかは分からないけど ゲーム通りに進行して彼女の好意を純粋に受け取っていた俺って滑稽だよな。」

「全くだね、チョロすぎるだろ。」

「違いない。」


それから暫くして食堂で王族専用スペースにて4人の友人と食事をしているとここへ登ってくる者がいた。護衛に止められると


「私は殿下の友人です。殿下に聞いて貰えば分かります。一緒にお食事をしたいだけなのです。ここを通して下さい。」

「残念ですが、殿下から伺っておりませんのでここはお通し出来ません。」

「そんな、貴方達!後で殿下に叱られちゃいますよ。殿下にとって大切な女性を通せんぼしたのが分かったら酷い目に合うから教えてあげているんです!

これから私は殿下にとって結婚したくなる程大好きな存在になる予定です。

いいですか、そんな存在にこんな仕打ちをすると後悔する事になりますよ!」ビシっ!


「構いません。我々は殿下の指示以外動く事はありません。お引き取り下さい。」

「まだ分からないんですか? 私はいずれ皇太子妃になり、王妃となるのです!

 いい加減にしないと怒っちゃいますよ!」

「頭 おかしいのか? 分かって頂けないなら強制的に排除させて頂きますよ。」


聞こえていたが、面倒だったので反対側の出口から教室に戻って行った。


「ヘラルド様、先程の者をご存知ですか?」

「さあ、何処かで挨拶を受けたかも知れないけど、覚えてないな。」

「最近は あの様な者はいなかったのに。

煩わしいですか?もしそうなら私が動きますが。」

「ここは学園だ。貴族でも平民でも、ある程度の交流は構わないのよ、ただ何事も節度は必要だと思っているよ。気遣い有難うゲムスト。」

「それにしても存在すら覚えて貰っていない状態で皇太子妃だの王妃だの口にするとは不敬極まりないな。」

「シオンが口だしするなんて珍しいね。フフ。

そうだ、面白い本が手に入ったんだまた王宮へ遊びにおいでよ。」

「勿論です。私は毎日でも伺いたいので、いつ伺って宜しいですか?」

「そうだなー、今日は予定があるから明日でどうだろうか?」

「はい、明日伺います。」


「今日は何があるのですか?」

「詳細は内緒だけど、ヴィーにお客様が来ているのだ。」

「で、殿下ったら、おやめ下さい。」

「フフフ、可愛いねヴィー、是非これからもそんな顔を見たいものだ。」

「もう、知りません。お先に失礼致します。」


これで皆何となく察した。

そしてニマニマしながらヴィーを見送った。


今回のアイラは生徒会に入るべく奔走していた。

王子は生徒会でバリバリお仕事をする、そして私はそんな王子をお支えする。

今の学力じゃちょっと足りないけど何とかなるでしょ!

まずは根回しよー!  推薦して貰える人をせっせと猛アタックして口説き落としていた。

その甲斐あって1年生では異例の生徒会室への入室を許可された。そして来る選挙で正式に生徒会メンバーとなれる。


ウフフ、私やれば何でもできる主人公アイラ!これで、王子に生徒会室で会ったら

『あれ、君はこの間の鳥を助けていた優しい子じゃないか! 君も生徒会だったんだね、これから宜しくね。』

と言葉を交わし、交友を深め次第に恋人関係へ発展! 完璧よー!


連日生徒会室でお手伝い。印象を良くするべく頑張った。

変ねー、肝心の王子がなかなか来ない。でも全員が集まった事ないし、そうか、王子は他にも仕事があるから王宮へ行っているのかも!ちょっと聞いてみよう。

「あの〜〜〜〜〜、王子様ってどこにいるんですかね?」

「は? うーん、王宮じゃないか? 忙しい方だからな。」

「そう言えば、他国の王子が来てるって言っていたから、その応対に向かわれているんじゃないか?」

「そうなんですねー。」


やっぱりそうよ。折角生徒会に入っても忙しくてまともに会う事もできないのねー。

ゲームではイベント時にいつも一緒にいたけど、現実ではこんなにも離れ離れなのね。

でも、結婚するればいつも一緒にいられる様になるし、後のお楽しみにしよっと。


後日行われた選挙で真面目な態度が評価されて無事に生徒会入り出来たアイラ、意気揚々と生徒会室へ。何と言っても今日は生徒会役員が全員集まって、顔合わせをするのだ。この日をどれだけ待ったことか! 王子と偶然の再会を果たすのよー!


生徒会長、副会長、会計、書記、庶務、監査 全て紹介されたのに王子だけがいない。

何で、何で、何で? どこに行ったの? えっ? 王子だから 王子枠とかがあるのかしら? イヤイヤイヤイヤ イヤよ! なんでいないの? 恐る恐る

「あの〜〜〜〜〜、王子様はどこへいったのですか?」

「さあー、今日のご予定はどうなっているか存じ上げない。」

「ほっ、良かったぁー、なんかここにいない事が皆さん普通みたいだから、てっきり生徒会役員じゃないのかと思っちゃいましたけど、忙しくて偶々今日は不在なだけですよね?」


「君は何を言っているの? 皇太子殿下は生徒会役員ではないよ。だから、ここにいない事は普通だが。」

「えっ! 王子様って会長じゃないんですか?」

「君は人の話しをちゃんと聞いてる? さっき会長は紹介したでしょ!

 あちらに座っていらっしゃる方が会長だ。皇太子殿下は公務が忙しくて生徒会には携わっておられない。」

「嘘よ!」

「本当だ、それより仕事が山積みだから次の議題へ移るぞ。」


アイラはゲームの内容を信じすぎていて現状把握を全くしていなかった。

よってヘラルドが生徒会役員ではない事を知らなかったのだ。



ヘラルドとクロードはマンデュルイ山に近いクレストロール侯爵領に視察を入れ、護衛と共に向かった。そして2人でそっと抜け出しマンデュルイ山に向かった。


クロードは道をハッキリ覚えているので、前回の場所にスムーズに到達した。


「さあ、プレイヤー我々は再びここへ戻ってきた。あの時の約束を果たせ!」


「ヘラルドとクロードか。   約束通りここへまた来たのだな。何が聞きたい。」

「まず、プレイヤー 貴方は誰だ?」

「私は、アイラ。」

「えっ? アイラ? あの、アイラ?」


「お前達の知っているアイラは私の一部。私の全てではない。

私は 田沼美幸。ヘラルドの前世と同じ世界にいた。

私は体が弱く ずっと入院していた。

友達も恋人もいない、病室で天井を見ているだけの生活。両親は私の入院費を稼ぐ為に朝から晩まで働いていた。一人ぼっちの私にこのゲームを買い与えてくれた。


ゲームの中では自由で、沢山の友達に囲まれ楽しかった。

主人公のアイラは周りの人の孤独に寄り添い皆を虜にして行く、そして素敵な王子に求婚され幸せになる。私の理想そのものだった。

私はアイラになりたかった。そして王子に愛されたかった。


そして私は昏睡状態に陥った。だから私が知っている事しかこの世界はない。

何故転生者であるお前達が私の意識の元に紛れ込んだかは私には分からない。私にはそんな力はない。


私は私が生きてみたかったアイラと言う人になり、お前のヘラルドに愛されたかった。

逆境にも負けず幸せになる事だけが私の命をつなぎ止めていた。


繰り返し繰り返しお前の人生をなぞった。お前達の人生に執着するうちにアイラが私の精神から切り離された。

そしてアイラはプログラムされた通りにお前を勝ち得る事だけに執着する様になった。

そしてヘラルドにお前と言う魂が宿る様になった。


ハッピーエンドの絵本を読む様に繰り返し見ていた世界は、お前と言う魂が宿った事により一人歩きする様になった。それは私と言うアイラを選ばない世界。


最初は悲しかったが、お前が懸命に生きる姿に感動も覚えた。そして、ハッピーエンドの物語はいつしかこんな世界もあると教えてくれる様になった。

一つの選択により生み出される結末。

『何故幾度もループするのか』、単にお前が作り出す選択と結末が見たかったからだ。


何故天寿を全う出来ないか、それはこの物語の結末以降を知らない、そして私は現実ではベッドの上に寝ているだけの者故 知識が無くお前達の未来を想像し生み出す事が出来ないからだ。


この物語を終わらせるには、私が死ぬと言うこと故躊躇った。

私にとってお前達の世界が唯一私の執着だったから。

すまなかった。少しでも長く様々な世界を見ていたかったのだ。しかし約束だ、もう解放しよう。

マンデュルイ山の噴火は止めよう。しかし先にも言ったが、私の想像力は乏しく今後にどの様な影響が出るか分からないのだ。今後一切の介入はしない。その上でお前達が決めるが良い。このまま続けるか、終わりにするか。」


「教えて欲しいって頼んだのはこっちだけど本当に全部教えてくれんだな。」

「正直整理がつかない。」


「美幸さん、俺はこの人生を一生懸命生きたい。俺は前世でも事故で死んでる。それでここにいる。だからもう中途半端は嫌なんだ。

俺はこのまま生きたい、そして21歳以降の初めての人生を歩みたい。


相談なんだけど貴女はまだ生きているんだろう?死ぬその日まで懸命に生きてくれよ、それで俺達の21歳以降の世界があやふやになったら俺達も協力するから皆で作って行こうぜ!

本当はこの山まで来なくても、呼び掛ければ応えられるんだろう?

だからもっと話しをしようぜ。前世の話し出来るの、俺にはクロードと貴女しかいないんだからさ。

俺は俺達の人生を生きる為に貴女の人生を捨てろなんて言えないし、そんな資格も無いと思う。それでも俺がこの世界に飛ばされた事も、貴女やクロードに会う事にもきっと意味があったんだと思う。

だから諦めずに一緒に生きよう!」


「そうだな、まずは生きなきゃ何も変えられないもんな。」

「私に出来るだろうか?」

「出来るかどうかなんて分からない。それでも俺達は前に進むことしかできないんだから、一緒にやろうぜ。」


今回、バグは見ていない。

俺は明日22歳になる。そして俺がヘラルドになってから初めて妻子がいる。

(大昔にはいた事もあったらしいが、俺自身かは分からない)

相手は皇女様。クロードも結婚しもうすぐ子供が生まれる。


アイラは父親の遠縁と結婚した。学園在学中は王子との関係を進展させようと頑張っていたが、やはり男爵令嬢と王子ではあまり接点が無く挨拶されれば返したが、友と呼ぶ程の間柄にもならなかった。前回はイジメの証拠を捏造しようと頑張っていたが、生徒会の仕事が忙しく余計な事を考える暇が無かったようだ。そうこうしているうちに王子は他国の皇女との縁談が纏まり、婚約してしまった。

ゲームでは学園生が婚約者だったが現実では他国の姫君なので邪魔のしようも無かったようだ。


マルクス君は可愛い可愛いモリュイ嬢と結婚した。

(可愛い可愛いは本人談)

マルクス君は皆に優しい優柔不断キャラをやっていたが、女性同士が争い恐ろしい事になった、それでもずっとそばにいてくれたモリュイ嬢と晴れて恋人同士になり恋愛結婚をした。


主役とは言えアイラの人生と比べるとこの世界に貴族として生まれたのは悪くは無かっただろう。


美幸さんは誰もいないところで呼び掛ければ応えるようになった。

そして俺達と共に生きている。


現在 植物人間状態の美幸さんは長くは無いかもしれない、でも俺達と話しが出来るようになって楽しいと言った。

そんな美幸さんが回復する事を願う。俺が生きる事ができなかった世界に生きているのだから。

このゲームの世界が終わったら俺の魂はどこへ行くのだろう?

この世界の奴らと一緒に成仏するのかな?

まあそれもいいだろう。



63歳になった。現在ベッドの上でお迎えが来るのを待っている。

クロードが泣く。今まで2人で生きてきたようなものだ、現実を受け入れられないのも分かる。でも、あの頃と違うのはお互いに家族を持てた事だ。私には孫も出来た。

波乱万丈ではあったが、前世とこのゲームの今までの世界と違って、『生きた』と感じる事が出来る。俺はクロードに

「クロード有難う、先に一人で逝ってごめんな。」と伝えた。

「馬鹿やろう、一人にするな。」と咽び泣いた。


「お互いに家族が出来たじゃ無いか、この生は幸せだったと思う。美幸さんにも礼を言ってくれ、我儘を言ってしまったから。」

「駄目だよ、俺 一人じゃ無理だよ。お前はもう俺の一部なんだよ。離れる事なんて出来ないよ。」

「ごめんな。ごめんな。クロード いつも傍にいてくれて有難う愛してるよ、相棒。」

静かに息を引き取った。



私は眩い光の中目を覚ました。

池に落ちて熱を出して寝込んでいたのだ。そして前世の記憶を思い出した。ついでの前回の記憶も呼び戻した。横を見るとクロードがいた。

「く、くろーど これってどう言う事?」

「ごめん、寂しくてリセットしちゃった。」

「何で? えっ? 何でよ。 俺はこのゲームの世界を終わらせたかったんだけど。」

「だって、俺一人残されんのは嫌だったんだもん。終わらせるのは俺が先に死ぬ時でいいじゃん!」

「くーろーーどー!」

「お前だけさっさと死ぬから悪いんだよ。お前も一人取り残される感覚を味わえば分かるよ。また頑張ろ! 美幸さんだってまだ頑張ってるんだからさ!」


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」



そしてまたループする世界へ戻ってしまった。

でもクロードの言う事も分かる。俺もクロードが先に逝ってしまったら耐えられないかも知れない。もう魂の片割れの気すらする。だからって・・・、勝手に決めるなよ。

俺の愛してるを返せ。


そして今日も俺達はゲームの世界を生きる


全然思っていた展開とは違う物になってしまいました。いつか、コメディを書きたいです。

気軽に読んでもらえると有難いです。

次回は溺愛物を書きたいと思っています。有難う御座いました。

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