耕せ畑!植えろ植物!その8
「もう 嫌だ~」
昼間の畑にしゃがみこみ、草取りスキルを使って、
畑に繁茂している緑のドットの集合体を除去しながら、美香が叫ぶ。
魂の叫びは聴く者の心に響き、俺の行動をフリーズさせた。
これって、咆哮効果か?
「美香、毎回の事なんだから、そろそろ慣れろ」
そう、毎回のことだ、正確には毎日の事だ。
「そんな事言ったって、毎回、ログインする毎に1時間みっちり、
草取りってありえないわよ!」
ゲーム内時間で1日は、リアル時間で4時間。これが鉄牢の時間区分だ。
リアルで毎日決まった時間にログインしても、学生の身には、4時間が限界。
日常を過ごしているあいだに、鉄牢内では6日が過ぎている。
それは、毎回草取りもするって。
「その甲斐あって、草取りレベルが結構上がってんだろ。
それに、草取りって言っても、緑のドットをクリックして消す作業じゃんか。」
そう、作業名は草取りだが実際は畑の中にある緑のドットを
マウスでクリックして消す作業だ。
はじめに比べて手際が良くなったし。初めは毎日2時間くらい草取りしてたよな。
最近ではレベルも上がり、一回の削除範囲が多少大きくなっている。
「そんなスキル、私は欲しくなんかなかった!」
「農家の道は厳しいもんだ!嫌なら草取らなきゃいいじゃんか。」
「冗談でしょ、私の可愛い薬草さんが死んじゃうじゃない。」
「なら諦めて、働け小娘。」
畑の雑草が一定量を超えると農作物の元気度が減っていく。
元気度が減ると植物は枯れていく。
まぁわかりやすく言うと農作物にはHPがパーセンテージで設定されていて、
成長とともにHPは増えていくのだが、
雑草、害虫、水の不足、肥料の不足等で環境が悪くなると
Hpが減っていくのだ。
HPを減らさないようにするのが農業ということになる。
そして、HPが100%を超えれば収穫できる。
しかし、普通は4時間ごとに草取り、水やりなんかできないため、
農作物の生育は極めて難しい。
これは、生産職がいないのもわかるな。割に合わないし。
「それはわかるけど、この草取りって、元々農業スキルに入ってないでしょ!」
「そりゃ、そうさ、運営規格品種以外のものを育てようってんだからな。
それに、今更やめれないだろ!」
診療所のジジィと交渉して、カルネさんにOKをもらった薬草は、
元々の規定品種ではない。マルカルムという、緑の葉物植物で、
その葉には、体力回復と、解毒作用を持つ、複合品種らしい。
「やめないわよ!絶対収穫して、院長に高く買い取らせてやるんだから!」
「いつになったら収穫できんのかねぇ。」
「ぐっ もうすぐよ!きっと もうすぐなんだからね」
畑にカーソルを合わせると、やっと葉が伸び始めた植物が見えた。HPは70%確かにもうすぐ収穫できそうだ。あと10日位かな?
「おい美香、手が止まってる」
美香も俺に言われて薬草の育ち具合を確認してたんだろうな。
アバターがフリーズして、ジッと畑を凝視していた。
「うっさい 馬鹿リク 見てないで手伝おうって思わないわけ?」
「いや、俺も行くところがあるからな。」
「だったら・・・っさっさと消えろ~っ!」
再度の咆哮は硬直の状態異常以上に生命の危機を感じさせたので俺はその場を離れた。




