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鉄牢  作者: りょう
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ベルクの事情

ゲージ参加も今回で3回目だ。初回は、ゲージの中で切り殺された。

前回は回廊内で罠解除に失敗し、あえなく死亡した。

今回こそ、優勝してやる。

「諸君、今年もまたこの鳥かごには雛鳥が生まれた。

今回挑戦する雛鳥達は、見事にこの鳥かごから逃げることができるのか!

さあ、開催しよう、今年のゲージを!」

薄暗いゲーム画面の中に一筋の光がさし、そこに映し出された領主の宣言が響く。

宣言を聞きながら、ゲージの中を探る。

すり鉢状の競技場の中には金属の格子で囲まれた舞台とそこから続く10本の回廊の入り口が浮かび上がる。

「今年のゲージに挑戦する雛鳥たちを紹介しよう。」

領主に当たるスポットライトが消える。

新たな光の筋が一人のプレイヤーに当たる。

「100人の挑戦者を勝ち抜いた勇敢な8羽の雛鳥達だ!」

会場内にどよめく歓声、思わずヘッドセットを耳から引き剥がす。

今はボリューム絞れないからなぁ...

ライバル達はみんな有名プレイヤーだ、前回のゲージでも顔を合わせているやつがほとんどで、その中に、俺を罠にかけたマイツもいた。

ゲージは俺のようなソロの盗賊にとって、賞金を稼ぐ場所であるとともに、

名前を売るチャンスでもある。

固定メンバーでパーティを組んでいるものなら別だが、

ここに出てくるやつは、ほとんどがフリーランスだろう。

契約金で間に合わせのパーティを組むプロフェッショナルだ。

このゲームで優勝することは、盗賊としてトップスキルを持っていることの証明だ。

当然契約金のアップ、パーティ依頼の増加を意味する。

鉄牢では、盗賊の需要が非常に高いのだから。

不意に明かりに照らされモニターが一瞬白く染まる、俺は目を細めた。

「最後は ベルク!不屈の蒼龍ベルク、オッズ人気NO.1の優勝候補だ。」

会場から歓声があがる。

「この選ばれた8羽の雛鳥たちが今年のゲージに挑戦する。栄光と死、金と危険が隣り合わせのゲージを制するのは果たして誰だ!

諸君、あの砂時計が落ちきるまで暫し時間を与えよう。

勝者を今一度考える時間を!」

会場に明かりが灯りゲージ内は一気に明るく照らされる。

かぁーっ 毎回思うが、運営はえげつないねぇ。

運営が胴元の公式賭博、ゲージにおいて、さしづめ俺たちは競走馬だ、

パドックでの、お披露目紹介が終わり、今一度、賭け目を選ぶ時間を与える。

しかも短時間だ、みんな勝ちたいから、ここで賭け直したりするが、

賭け事で直前に勝ち目を変えるのは飛び込み自殺ってんだ。

こんだけ盛り上げて、さらにふんだくるか、運営 Orz...

そんなことを考えながらすばやく回廊入り口に視線を移す。

そして、ライバル達に、いや、憎きマイツに。

ゲージはサーバーベガで行われ、ここは特別エリアだ。回廊に入る前にこの短剣で一太刀入れられたら、前回の溜飲が下がるんだが...

それは、暗い誘惑だ。殺す必要は無い、

この短剣ディゾルディネの一太刀は対象者に混乱を起こす。

それで終わりだ。

 そんな妄想をしながら、モニター画面を見つめる。

画面右上の砂時計はもう砂がほとんど残っていない、そして砂が落ちきったとき

「諸君、これよりゲージを始める。」

領主の声が響き、回廊の入り口の格子がギギーという効果音と共に開放された。

プレイヤー達が一斉に回廊に向かって走る。

俺も走った、ただしマイツに向かって。

走りながらディゾルディネを装備し、マイツにカーソルしてアタックボタンを押す。

モニターの中のベルクがマイツの背中に向けて、逆手にもった短剣ディゾルディネを振る。

マイツは多分予想していたのだろう、俺の攻撃を自分の持っていたクナイではじき、

足を止めずに回廊に向かいひた走る。

せめて一太刀入れなくては...

マイツに追いすがるように足を速め再度切りつける。

しかしあいつはわずかに右に進路を変え

俺の攻撃を避けると、足元に何かをころがした 。

このタイミングで足元に転がす...

なんだ?罠か!落ちたものを確認する為一瞬マイツからカーソルを外す。

足元には石ころが一つ。

しまった、一瞬の隙を突き、マイツは足を速め、回廊に飛び込んだ。

ギン!

高い金属音を立て、回廊の入り口を鉄格子がふさぐ。

ゲージの名のとおり、鉄の牢獄が完成した。

しかたなくあいつの飛び込んだ回廊の右隣の回廊に飛び込む。

回廊の中に待ち構える罠たちと対峙するために。


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