耕せ畑!植えろ植物!その3
始まりの街は、それほど広くない。
中央広場から城門までは大通りを歩けば5分もあれば到着する。
そんな街中を俺たちは既に10分近く歩いていた。
細かい入り組んだ路地を抜け、時に大通りを横断し、職人街を縦断し、
NPCの居住区の路地をグネグネ進んでいく。
通常の畑といえば、始まりの街の城門の外に広がっているものだと思っていたのだが
今回、美香のリクエストした、花壇に毛の生えた程度の広さっていうのが
逆にネックになっているのだろうか、
これは一人で来たら絶対迷うなぁなんて事を考えながら、
前を歩くレイフォードさんについていく。
「それで、もうちょっと詳しく聞いていいかな?」
歩きながらレイフォードさんが声をかけてきた。
「えぇ、なんでしょうか?」
「今回、薬草を植える畑なんだけど、3箇所ほど候補があるんだが、
いずれも特徴があってね、植える植物との作付の相性があるんだ。」
「え~と、相性って言うとどんなものですか?」
「うん、多分知らないと思ったよ。いいかな?」
「はい」
「植物を植える際、このゲームでは3つの要素が存在するんだ。
一つは、日照度、日当たりだね。次は、水はけ、土地がどれくらいに水分を含むかだ。
最後は土質、砂地とか土間とかではなくて、アルカリ性か酸性かってことだね。
幸いなことに、土地についてはこの3つの条件がわかるようになっているから、
植える植物の条件に合う土地を選べば、間違いなく生産できるよ。」
「そうなんですか、いろいろ難しい条件が必要なんですね。」
ピ~ンチ!ピンチです。マルカン草の育成条件なんて誰も知りません。
「まぁ、肥料で土質は変えることができるから、
気にしなくてはいけないのは日照度と水はけの二つだけどね。
植物を植える時、土質に気を付けないと収穫量が減ったり、
最悪全滅したりするからね。知らないと大変なんだよ。」
「ありがとうございました。私、何も知らなかったんで、
せっかく植えても枯らしちゃったかもしれなかったです。」
「いや、貴重な生産職を目指してくれるお嬢さんに
ちょっとしたアドバイスだよ。役に立ってよかった。」
すかさず、メールが美香から飛んできました。
『マルカン草の育成条件なんて知らないよね?』
はい。知りません。ただ、まゆゆが持っていた事と、
俺がヨルムのジジィからはじめに聞いた生息地はいずれも洞窟の中。
それから、考えられることは、日照度は悪いほうがいい。
多分水はけも悪いところだろう。それだけ考えて、思い浮かんだのは、
球根の水栽培だった。すかさずメールを送ってみる。
『美香、マルカン草って水栽培できないかな?』
『は?何訳わかんないこと言ってんのよ。
水栽培ってどこでやるのよ、設備は?
場所は?宿屋月単位で借りるの?そんなお金ないでしょう。
まだ畑の方が建設的よ!
あ~肝心なときに役に立たないんだからリクは!』
『わかったってーの、どうすんだよ、
日当たりのできるだけ悪いとこ借りればいいのか?』
『知らないわよ!そんなこと。』
『とにかく見せてもらってから考えればいいだろ、最悪契約を次回にしてもいいし。』
「なんだか、静かだねぇ。」
「いや、結構入り組んでるんで、道が覚えられるかなって。」
「あぁ、そういうことか、大丈夫だよ。契約できれば、マーカーがつくから、
自分の畑まではすぐ来れるようになるんだ。」
「便利な機能があるんですね。」
「そうだね。確かに便利な機能だね。さぁ つきました。
1件目の物件です。」
立ち止まったレイフォードさんが示したのは、紛れもなく一軒の農家だった。




