仲間だしな。
「雨、降り出したな。」
窓のサンで弾ける水滴と、ホコリっぽい初夏独特の雨の匂いを嗅ぎながら、
顔を上げると、少し青ざめて、それでも必死に
数学のプリントと格闘している佑と目があった。
「そうだね、ちょっとだけ涼しくなるかな。」
「あぁ 今夜は厚着して寝ろよ。ヘソだしてると風邪ひくぞ~」
ワザと明るめに切り返す。
「俺は大丈夫だよ。リクこそ裸で寝るなよ。」
表情はまだ硬いが、先ほどに比べて少しだけ顔色が良くなった気がする。
「今日は、居なかったみたいだな、その・・・ストーカー?」
そう、伊勢屋で、豚玉をつつきながら、俺たちは、合図を決めていた。
視線を感じたら、左手を首に持っていくのだ。
伊勢屋を出て、電車に乗った直後から、佑の表情が目に見えて固くなっていく。
そして最寄駅に降りた瞬間、顔色まで青ざめ始めた。
俺は、佑に話しかけながら、それとなく当たりを見渡していた。
そして、駅から徒歩で20分の佑の家までたどり着いたのだが
今回はストーカーは現れなかったようだ。
「佑、案外お前に告白したがっている女子じゃないのか?」
礼儀正しく、見目麗しい、おまけに成績も結構上位、とくれば、
そんな女子がいてもおかしくない。いやいるだろう、いるに違いない。
しまった、俺は知らなかったとはいえ、馬に蹴られても仕方ないんじゃなかろうか。
そうだ、俺が女子なら、絶対ゆるさんと思う。馬で蹴る、原付で轢き殺す。
丁寧に二度轢く。
あ~やばいきっと帰り道で俺ひき殺されちゃうわぁ
「まぁ 今夜は合わなかったということで。」
「うん。悪かったな、付き合わせちゃって。」
「良いって、豚玉うまかったょ。」
「そうか、じゃぁ気をつけて。」
「おうwまた後でな、8時ごろ。
「わかってるって。始まりの町広場で集合だね。」
やんわりとした笑顔がやっと戻ってきたなぁって思ったら
チョット、ホッとした。
外に出たらもう雨は上がっていた。ほんの通り雨だったようだ。
ホコリの少ないクリーンな空気を肺いっぱいに吸い込んでから、
佑の家を出て最寄駅まで歩く。
そして俺は見てしまった。黒塗りのバイクに乗っている黒塗りのメットの女性が、
佑の家をじっと見ているのを。




