壁の向こう!
トンネルの向こうはいつも不思議で溢れている。
夏休みに自転車で県境の長いトンネルを抜けた時
トンネルの向こうには青い海が見えた。
帰りのことを考えないように、そのまま坂道を下っていく。
トンネルの向こうには...
「お待ちどうさま。」
時刻は午後10時を回ったところ、待ち合わせ場所のサーバーアルタイル
始まりの町 中央広場はポツポツとログインしてくるプレーヤーで混み合っている。
「遅い!」
近づいてきたのは白い革製の鎧に右肩当ての羽を集めた装飾の天馬の鎧と
そのオレンジの髪が特徴的な少女でした。
観賞用には良いんだけど口を開かなければねぇ
「こんばんは、美香ちゃん。@ウィキ見た?」
答えたのは、青いマントに黒の軽鎧 というか全身黒装備の盗賊レーニィ。
友人の赤堀佑だ。
「いいえ、なんで?」
「ここんところ盛り上がってるマルカン草祭りに新しい情報がね」
「なにぃ!何があった!佑!教えろ!」
しまった!今日は数学の宿題に手間取っていて日課の@ウィキチェックしてなかった。
サブウインドウでチェックを始めるまえに、焦って佑に声をかけてしまった。
「すごい食いつきだね、リク、」
そりゃそうだろ、俺が見つける前に誰かが見つけた日には、泣くぞ。
「で、新しい情報ってのは?」
サブウインドウに出てきたサイトトップ画をスクロールで上に流しながら、聞く。
「情報の出処探し。要は、ガセじゃないのって事で今度は騒ぎ始めたってわけ。」
あ、あった、掲示板、犯人探ししてるし....
「な、なんだ、そんなことか」
「なんか、変・ね・リィクゥ~」
メイドの粗相を見つけた女主人みたいな声で美香が会話に混ざってきた。
くそぅ余計なことを、まるで楽しい玩具を見つけた子供のようだぞ。
「いや、そんなことはないぞ、マルカン草は、実は俺も探していたからな
誰かが先に見つけたのかと思って焦っただけだ。」
嘘はついていない、嘘は。若干、焦っていることが
裏返った声から悟られたかもしれないが....
「へぇ~ 探してたんだぁ」
無邪気な、いや嘘だ、とっても意地悪な、猫なで声で美香が探りを入れる。
「まぁ面白そうなクエストだったからな。」
よし、持ち直したぞ。
「へぇ~クエストなんだぁ」
だから、その猫なで声をやめろ、悪いことしてないのに、
尋問されているようで、いごこちが悪いっちゅーねん。
「そうなんだ、いわばライフワークっていうのかな?
鉄牢で何かを残したいってそんな感じだ。」
受け答えが、言い訳口調になるっちゅーねん!
「嘘ね、知ってることをキリキリ吐いてくれれば嬉しいんだけど。」
あっさりと断定されました。Orz
「嘘なんて言ってないよ?」
「手間がかかるようなら、明日からお昼はないわね。」
俺の話なんか聞いちゃいないちゅーねん!
「はぁ?美香、お前何言ってんの?」
それでもはぐらかすっちゅーねん。
「リクぅ、私に隠し事なんて1億2千年早いのよ。
まぁ リクの事だから、マルカン草絡みのイベントを、
中途半端に放置してるって、ところだろうけど、
それで、どんな情報が@ウィキに流れたのか焦ったって所でしょ?」
いつも思うが、悟りという化け物は、美香に違いない。
「言っとくけど、テレパスとか悟りとか違うから。」
やはり、魔女か!魔女なんだな。
「まぁ、まぁ、今日は結構遅いから、先に迷宮行こうよ。
リクには後で教えてもらうということで...ね。リクもいいかな?」
「あぁ、でも大切な情報だから全部は教えない、それでいいな。」
「どうして!全部教えなさいよ。」
「たとえ友人でも、大切な情報は教えられない。」
「リクのケチぃ」
「それでもだ!」
「明日から古文の宿題は自分でやってよね。」
「.....それでもだ。」
「まぁ、まぁ、美香ちゃんもそんなに追い詰めないの。
リク、手伝いがいるときは教えてくれるんだろ?」
明るい口調で佑が間に入る。
険悪な空気が霧散していくのがわかる。助かった。
「当然だ、もう少しわかったら、二人に手伝ってもらわないとな。
だから、しっかりレベル上げを頑張っていかないとな。」
「そうよね、今日は初心者迷宮に新しい階層が見つかるかもしれないんだから。
気を引き締めていきましょ。」
佑の話を聞いて気持ちを切り替えたのか美香も声の口調を明るく変えてくれた。
「じゃぁ、行くかw」
思わぬ道草になってしまった。




