殴ればいいのよ!
「殴れば減るって!、剣じゃなくてリクも殴ってみれば減るわよ!」
チョット考え事している間に、二人の言い争いはヒートアップしてました。
「んなことするわけねぇだろ、剣士が剣使わないでどうするんだよ。」
「あんたねぇ、剣で攻撃してたら、HP減るわけないじゃない!」
「減らす必要がねぇんだよ。頭おかしいんじゃねぇの?!」
「頭おかしいですって!徹夜でゲームして
マラソンするような奴に言われたくはないわよ!」
「おまけに、メシまで食われた。この悪魔ぁ!」
あ、ヤバイです。
「ここだけ、殴るとHPが減るっていうのに、調べないってどういうこと?
ゲームの中でまで脳筋なの?どんだけぇ~」
「誰が脳筋だ、誰がぁ~」
「あんたと話してるんだから、アンタしか居ないでしょ!頭悪すぎっ」
「ぐぐぐ」
「あ~調べてみるね、チョット二人とも退いてね。」
この状況をなんとかするためにわざとお気楽口調で話、に割って入りました。
でも、具体的に調べるにも、罠もないですし、わかりません。
「どう?何かありそう?」
期待に満ちた声の美香ちゃん。プレッシャーです><
「ゴメン、よくわからないんだ。罠は無いみたいだけど...」
「ほらな、大体、初心者迷宮なんてみんなが来るんだから、
なにかあれば@ウィキに載るんだよ。」
「じゃぁ、この情報も載せる?」
それは、もったいない気が...
「ほらね、みんな@ウィキには情報載せてるけど、本当に大切なものなんて、
載せる訳ないの。この壁には何かある!そう思わない?」
「そうですね、僕もこの壁には何かある気がします。
リクと美香ちゃんのHPの減りの違いは武器の違いなのか、
それともレベルの差なのか。調べてみたいですね。
だから、美香ちゃん、申し訳ありませんが、この武器を使って、
壁を攻撃してみてもらえますか?」
僕は美香ちゃんに向かってトレード用の窓を開け、予備のショートソードを入れる。
「そういうことなら、やってみるわ。」
美香ちゃんがトレードを了承し、僕のトレード用の窓からショートソードが消えた。
「装備するからちょっと待ってて。」
美香ちゃんの右手の篭手が消え、ショートソードを握った姿になる。
「じゃぁ行くわね。」
美香ちゃんが剣を構え、壁に向かって振る。振る。振る。
「あれ?減らない。剣じゃ減らないんだ。」
やっぱりだ、
「じゃぁ、今度はリクが素手で隣の壁を殴ってくれるかな?」
「隣の壁?」
「そう、多分HPは減らないはずだから。」
「そうか、じゃぁここでいいかな?うりゃ、うりゃ、うりゃ」
リクが壁を殴る。
「どうかな、リク、HP減ったかなぁ」
「いや、減らないな、もともと破壊不可設定だし。」
よしよし、じゃぁ仕上げだね。
「じゃぁ、リク、悪いけどさっきの壁を殴ってくれるかい。
多分HPが減ると思うから。」
「わかった。行くぞ!うりゃっ」
画面の剣士リクが壁を殴りました。
「あ~ほんとに減った。」
「でっしょーっ素手で殴れはちゃんと減るんだって。」
美香ちゃんの勝ち誇った声が聞こえます。
「じゃぁ、どうする?」
「ん?」
「何が?」
「これから、この壁に対してどうしようかと聞いたんですよ。」
「あ~そういうことね。」
「ん?よくわかんないんだが...」
リクはこういうのが苦手なんだよねきっと。
「だ~か~ら、殴るとHPが減るのはわかったけど、この壁に対して何かするか、
それとも見なかった事にしちゃって無視するかってこと。」
美香ちゃんは察してくれたようです。
「そう、もっと詳しく言うと、
①無視する。
②素手で壊れるまで殴り続けてみる。
③剣で切りつけて崩れるか確認する。
なんだけどね。」
「魔法で吹き飛ばすっていうのは?」
「美香、このゲームに攻撃魔法は無い!」
「まじで~ありえないファンタジーには魔法でしょう、魔法!」
「いや、本当に無いから。」
「美香ちゃんは職業選ぶとき魔法職がないことに気がつかなかったの?」
「私は魔法より素手で戦いたい派なの。」
なるほど、それはわかります。
「つまり、戦士以外眼中になかったってことだな。」
「そういうこと。紙装甲の魔法使いなんかまっぴらごめんだわ。」
言い切ってくれました。
「ま、まぁ 結果的に良かったんじゃないのかなぁ」
適当に話の流れを変えないといけませんね。
「あとは僧侶がいれば、バランスのとれたパーティが組めるんだけどな。」
「そうだね。でも、商人以上に人口の少ない僧侶は今じゃぁ超人気職だしね。」
回復職の有無は迷宮探索の上で欠かせない要素ですから。
「でも、あいつら神聖魔法使うたびにコロが減るらしいぞ。」
「なんか、嫌な職業ね。さすが鉄牢というか...」
「そんなことより、どうするの?この壁」
「そんなの絶対壊すに決まってるじゃないの。」
「まぁ何かがあるはずだからな。」
「新しい迷宮への通路とか、モンスターとか、
宝箱とか全部調べて絞り尽くしてから盗賊ギルドの情報を売ればいいんだから。」
私は資金回収する!とか言ってる美香ちゃんは置いておいて、
確かにこの壁は壊したいですね。素手では、いつになるかわかりませんし、
剣は返って効果が無いように感じます。鈍器もイマイチですね。
ツルハシのようなものがあれば、斧があるじゃないですか。
斧でこの壁を切り崩すのが一番ですね。
「チョット提案があるんだけど、いいですか?」
「何?」
「いいけど、」
「リク、斧って使えます?」
「いや、斧スキル持ってないけど。」
「美香ちゃんは?」
「初心者よ私。」
「じゃぁ美香ちゃん、今から斧を買いに行きましょう。」
「え~」
「美香ちゃんは戦士ですから、斧の装備ができます。
多分この壁は斧で切り崩すのが、一番だと思いますので。」
「ぷっ、素手の次は斧か、どんだけ、狂戦士仕様なんだよ。」
「リク、斧でぶつ切りにされたい?」
「いえいえ、美香様、そんなお手を煩わせなくても大丈夫です。」
「あ、」
軽口の応酬をしていた二人の脇を、先客らしい一団が通り過ぎる。
「空いたね、それじゃぁ行こうか。」
「うん、イモムシの巣だよね。」
「もともとこのために待ってたんだしな。」
「基本は、美香ちゃんの経験値稼ぎなんで、
僕とリクで2匹目以降のイモムシはあしらうからね、
最後の美味しいとこだけ持ってって。」
「え~なんか悪いわね。」
「いやいや、今後は壁戦士様には頑張ってもらわないといけないからね。
しっかり育って、俺やレーニィを庇ってもらわなきゃだから。」
「はーい。了解しました~」




