第14話 宿の確保、難しすぎ!?
美味しいパンをひとしきり頬張り尽くした後、気付けば夕方になっていた。
そこで今夜の寝床をまだ確保できていないことに気付いたわたしは、手近の宿に急行。
とりあえず今夜はこの宿で一泊しよう――なんて思っていたんだけれど。
わたしとモッフィは、宿の受付でお姉さんにきっぱりと断言された。
「――何度も申し上げているように、当店ではあなたのような子供一人での宿泊は承っておりません」
「そ、そんなぁ!!」
ガーン! と青ざめた顔で衝撃を受ける。
「そ、そこを何とかなりませんかぁ……!?」
「決まりですので」
「ぬぐぐぐ……!」
宿の受付で項垂れるわたしに、つまらなさそうな目を向けるモッフィ。
だけどわたしは諦めない!
社会人として培ったネゴシエーションスキルを駆使して、必ずや宿泊を勝ち取ってやる!!
■ ■ ■
「うぅ……! くそぅ……結局追い出されてしまった……!!」
「全く相手にもされんかったのぅ」
宿屋を門前払いされたわたしは、モッフィと並んでトボトボとグリィトの街を歩いていた。
あからさまに気分は沈んでいる。
どんよりムードだ。
「ど、どうしよう……! このままだと今夜は野宿になっちゃうよ!」
「少しくらい良いのではないか? 我も長らく森で眠っておったが、大した問題はなかったぞ」
「モッフィとわたしは違うの! チートみたいな神獣とか弱い幼女を一緒にしないでよね!」
適当なことを言うモッフィにぷんすかと怒る。
異世界で野宿生活なんて勘弁だ!
でも、あまりそんなこともしていられない。
こうしている間にも、どんどん陽は沈んでいき、空は暗さを増していく。
いよいよヤバいんじゃないかと焦り始めた時、前から三人組の人たちが歩いてきた。
「……ん? あれ、アイリじゃねぇか!?」
「あ、ベルドさん!」
その人たちは、見知った冒険者パーティだった。
リーダーのベルドさんが手を上げ、駆け寄ってくる。
「ギルドにいないと思ったら、こんな所で何をしているんだ?」
「実は……」
かくかくしかじか、と今の窮地を説明した。
すると、ベルドさん、ジェシーさん、マーレスさんがさもありなんと言う顔で苦笑いを浮かべた。
うぅ、どこか良い野宿スポットでも知ってますか?
そんな質問をしてみようかと本気で考えていると、ジェシーさんが魔法使いらしいマントを揺らしながら手を叩いた。
「そうだ! だったらアイリちゃん、私たちの家に来ない!?」
「え、いいんですか!?」
思ってもない提案!
本当にいいの!?
ベルドさんも少し考えつつ、頷いた。
「そう、だな。もう暗くなり始めてるし、今からアイリ一人で泊まれる宿を探すのも酷か。俺はアイリなら大歓迎だが、マーレスはどうだ?」
「俺も異論はない」
最後にタンク役のマーレスさんの了承も取り付ける。この人は口数は少ないけど、優しい目でわたしを見てくれる。
パーティメンバーの賛成を聞き入れたベルドさんは、にこりと笑った。
「だ、そうだ。アイリさえ良かったら俺たちの家に招待するが、どうする?」
「ぜひお願いします!! 皿洗いでも何でもやります!!」
わたしは社会人で身につけたお辞儀スキルを駆使し、ベルドさんたちに深々と頭を下げる。
ぴょこんと金のアホ毛を揺らしながら、わたしは深い安心感に包まれるのだった。




