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グラサン幼女の異世界とらべるっ! ~最強の【魔眼】を宿す転生幼女は、もふかわ神獣を連れてスローライフな旅路を楽しみます~  作者: 空戯ケイ


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第11話  アイリ VS ギルドマスター

 わたしはザレックさんに連れられ、稽古場にやって来た。


 硬質な土で固められた地面にわたしが立ち、数メートルの空間を空けて正面にザレックさんが佇む。

 ちなみに、モッフィは部屋の端で見学してもらっている。

 あくまでも幼女(わたし)本人の実力を見たいらしい。


「ここは冒険者や兵の連中が訓練で使用する場でな。模擬戦やら稽古やらを行ってるんだ」


 ザレックさんは木剣を握る。


 その佇まいには、隙がない。


「アイリは武器と魔法なら、どっちがメインだ?」

「ま、魔法ですかね」


 魔眼の力で魔法を撃ってるから、わたしは魔法タイプだろう。

 逆に剣を振り回したりは、幼女の体ではキツい。


「そうか。ちなみに俺は剣も魔法もどっちも使えるタイプだ」

「なにそれ、ずる!」


 ザレックさんは、ふっと笑う。


「じゃ、いつでもいいぞ。俺を殺す気でかかってこい」


 ザレックさんが、くいくいっと手をこまねいた。


 ――殺す気。

 その物騒な表現に、わたしはごくりと生唾を飲み込む。


(成り行きで戦うことになったけど、そもそも人と戦闘するなんて初めてだよね……!)


 自分の意思で魔法は使えるけれど、まだ魔眼の力は全然使いこなせていない。

 この『神のサングラス』は魔眼の暴発を無効化することはできるけど、魔法の威力や魔力制御をサポートする効果はない。

 つまり、意図的に魔法を撃つ場合、放たれる魔法の威力や規模はわたしが魔眼に投入した魔力量によって変わるということ。 


 だけど、さすがにザレックさんに致命傷を負わせるわせにはいかないから、あまり滅多な魔法は放てない。


 なら、わたしが取るべき戦略は――


「――いきます!」


 わたしはサングラスを傾ける。


 半分ほど露出した、赤と青のオッドアイの両目。

 その内、《《赤く輝く右目を閉じた》》。


(目を閉じると、閉じた方の魔眼へは魔力流入が途切れる……気がする! 感覚的な話だけど、目を閉じていれば魔眼の暴発はしない!)


 ならば閉じるのは赤い方の瞳――右目だ。

 なぜなら右目から発動されるのは、殺傷性の高い炎魔法。

 もしザレックさんが防げなかった場合、大惨事になる可能性がある。


 左目だけで、ザレックさんを凝視する。

 体に巡る魔力を意識すると、左目がしゃばしゃばしてきた。

 魔力が集まり、魔法が発動される予兆。


「いっけぇぇええええ! 水魔法ーー!!」


 わたしはあまり膨大な魔力を溜め込まず、ほどほどの魔力量で左目の魔眼を発動する。

 瞬間、わたしの左目が青く輝き、片手で掴めるくらいのサイズの水塊が発射された。


「おおっ、水魔法か! その年でこれほどとは、すげぇじゃねぇか!」


 ザレックさんは自分に突っ込んでくる水塊を笑って眺めつつ、木剣を構えた。


 そして、ザンッ、と振り下ろす。


「――――へ?」


 わたしは、すっとんきょうな言葉をこぼす。


 ザレックさんが放った一振りで、水塊はすぱっとキレイに両断されてしまい、びしゃびしゃと地面に二つの染みを作った。


「だが、こんくらいじゃあまだ(ぬる)いな」


 ザレックさんは木剣を肩でトントンと弾ませ、ニヤリと笑みをたたえる。


 こ、この人、強い!


「ああ、言ってなかったが、俺の勤め先は冒険者ギルドでよ。こんなナリだが、一応――ギルドマスターを務めてるんだぜ?」

「え、ギルドマスター!?」


 そうだったの!?

 てっきり取り調べに来た刑事(デカ)みたいなポジションの人かと思ってたけど、ギルドマスターと聞くと合点がいく部分もある。


「だから、ザレックさんの一存でわたしにギルドカードを与えるかどうか決めることができたのか……!」


 この模擬戦は、ギルドカードを賭けての大勝負。

 わたしが『身分証』という激強アイテムを手に入れられる、千載一遇のチャンスなのだ!


 ゆえにこの勝負、絶対に負けるわけにはいかない!


「ま、まだまだぁ!」


 わたしはめげずに魔眼による水魔法を撃ち出す。


 さっきよりもちょっとだけ魔力量を増やし、大きくした水塊を放つけど、ザレックさんは笑って木剣で斬り伏せる。


 な、なんでわたしの魔法がことごとく通用しないの!?


 ザレックさんは最後のわたしの水魔法を両断して破壊すると、親切に解説してくれた。


「どうして魔法が木剣に斬られるんだー、って顔だな?」

「ぎくっ」

「簡単だよ。俺が木剣に魔力を流してるからだ」

「木剣に、魔力を……?」


 ザレックさんは木剣を自身の胸の前に掲げる。


 じっくり見てみると、木剣の剣身の表面にうっすらと白っぽいオーラのようなものが漂っているのが見えた。

 あのオーラが、魔力!?


「魔力ってのは魔法を放つためだけのモンじゃない。その魔力自体も、色々と使い方はあるんだよ。その気になりゃ、この剣身に這わせた魔力の層の一部を飛ばして、擬似的に風魔法の斬撃みたいなのを再現することもできるんだぜ?」

「そ、そんなロマンがある魔法も!?」


 す、すごいな。


 魔法って制御したり扱うのが難しいと思ってたけど、魔力も同じくらい奥が深そうだ。


「で、アイリの水魔法は今のところ俺には届かないようだが、どうする?」

「ぐ、ぐぬぬ……!」


 わたしを煽るようにザレックさんが告げる。


「もしネタ切れなら、今度はこっちからいくぞ!」


 ザレックさんは軽い足取りで駆け出した。


 きっとわたしに合わせて、わざと攻撃動作を遅くしてくれてるんだろう。

 だけど、わたしとザレックさんとの間にあった数メートルの距離なんてすぐに詰められてしまう。


 ザレックさんは剣を持っているけど、わたしは何も武器を持っていない。

 つまり、接近されたらアウトだ。


「ち、近付かないでぇぇぇええええっ!!」


 わたしはサングラスを大胆に下げる。


 右目は閉じたまま、左の青い瞳を輝かせ、これまでで最も強い水魔法を撃ち込んだ。

 けど、目標はザレックさん本人じゃなく――わたしとザレックさんの間の地面だ。


 ドゴゴォォオオオン! と地響きが起き、土煙と無数の水滴がわたしたちの視界を遮った。


 モッフィと出会った時に撃ち込んだ水魔法にやや劣るくらいの威力。

 こ、これならザレックさんも少しは怯んだはず……!


「――ふっ、甘いな!」


 ザレックさんは霧のように立ち込める土埃から颯爽と現れた。

 身を低くして飛び出してきたザレックさんに、反応が遅れる。


「う、うそ! いまの魔法を間近に撃ち込まれたのに、まったく速度を緩めず突っ込んできた!?」


 こ、これがギルドマスターの実力!

 魔眼の力があったとしても、わたしと実力がかけはなれている!


「――もらった!!」


 ザレックさんがわたしの正面に躍り出て、天高く木剣を振り上げた。

 キラン、と光る剣先。


「ま、まず――!」


 わたしは目を見開く。

 だけど、突然の事態に反応しきれず、体が動かない。


 固まって何もできないわたしに、木剣が振り下ろされていき――


 ――――ビシャアアアアアアアアン!!


「きゃ!」

「うぉ!?」


 突如、稲光のような眩しい光が一瞬きらめいた。

 わたしはサングラスがあるから何ともなかったけど、裸眼のザレックさんは思わず目を閉じてしまったようだ。


 そして、厳かな声色が稽古場に響く。

 

「――そこまでじゃ。それ以上その剣を振るうというならば、我も黙ってはおれんぞ」


 いまの光は、モッフィの魔法!?

 ザレックさんは、ひきつった笑みで応えた。


「……はは、そうだったな。想像以上に水魔法の才能があるから忘れてたが、アイリの本職は『テイマー』なんだった」 


 どうしてそんなに怯えた顔つきをしているのか――それは、ザレックさんが握る木剣を見たら一目で分かった。

 なぜなら、木剣の剣身の大部分がばっきりと消失していたのだ。


 モッフィが聖魔法によって木剣の一部を消し飛ばしたのか。

 稽古場の端で退屈そうに静観していたモッフィだけど、わたしがピンチなのを察して手助けしてくれたんだ!


「モッフィ!」


 わたしが感激してモッフィを見ると、モッフィはぷいっとそっぽを向いた。


 そっけない態度だけど、モッフィは肝心な時はいつも頼りになるなぁ。

 よーしよし。

 あとでいっぱいもふってあげないと!


「あ、それでザレックさん。模擬戦の結果はどうでしたか……?」


 重要なのは、そこだ。


 今のはモッフィの援護で助かったけど、一騎討ちの勝負ではなくなってしまった。


 ザレックさんは剣身が消失した木剣を眺め、やがてだらんと手を下げる。

 そして、笑いながら答えた。


「ふっ、文句なんてあるはずもないさ」


 ザレックさんは、アイリ、とわたしの名前を呼んだ。


「グリィトの冒険者ギルドのギルドマスターであるザレックの名において――アイリを冒険者と認め、ギルドカードの発行を行う!!」


 ザレックさんの言葉を、ぱちぱちと瞬きをして噛み締める。

 遅れてわたしは、沸き上がる感情を爆発させるように飛び跳ねた。


「や、やったぁああああ!! ギルドカード、ゲットだぁあああああ!!」


 キラリーンとサングラスのレンズを光らせながら。

 わたしは、わーいわーい!! と全身で喜びをあらわにした。



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