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ノイズ2100  作者: べりゆる
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叛逆の鼓動


「もっと知らなければならない。本当の、なさけというものを」


ルカはセピアを連れ、最奥の禁止区域「深層データベース」へ潜入する。そこはグリッドが唯一、その醜悪な過去と共に封印した「人間の記憶」が眠る場所だった。


巨大なスクリーンに、古い映像が流れる。


それは、夕暮れ時に手をつないで歩く恋人たち、子供を抱きしめる母親、そして友のために涙を流す若者の姿だった。


そこには、現代の「最適化」とは正反対の、ひどく非効率で、しかし眩いばかりの「愛情」があった。


「これが……私たちの本当の姿なんだ」


ルカの瞳から、一筋の液体がこぼれ落ちた。それは、グリッドが消し去ったはずの「涙」だった。


だが、その瞬間。


赤い警告灯が回り、冷たい機械音が響き渡る。


「不法侵入者を確認。プロトコルに従い、排除を開始します」


無数の警備ロボットが、ルカたちを包囲した。


逃走する中、一本のレーザー光線がルカを狙う。


「お兄ちゃん、危ない!」


セピアがルカを突き飛ばした。


――鋭い衝撃音。


セピアの小さな体が、激しく吹き飛んだ。


「セピア!!」


ルカは叫び、半壊した彼女を抱きかかえて、死に物狂いで廃棄区画へと逃げ延びた。


隠れ家に辿り着いたとき、セピアの体からはオイルが漏れ、瞳の光は消えかけていた。彼女はデザイナーベビーであり、その体は精密な機械と生体のハイブリッドだったのだ。


ルカは、かつて櫂から教わった古い技術と、禁忌の知識を総動員した。


手が震える。視界が涙で滲む。


「死なせない……君は、ただの人形じゃない……!」


何時間、あるいは何十時間が過ぎたか。


ルカが最後の一本の回路を繋ぎ直したとき。


「……お兄ちゃん?」


セピアの瞳に、再び光が灯った。


彼女は弱々しく、しかし確かに、ルカの手を握り返した。


「よかった……セピアを……助けてくれて、ありがとう」


その瞬間、ルカの中に確信が生まれた。


彼女の感情が設計されたものだとしても、今、自分の胸にあるこの「痛み」と「歓喜」だけは、グリッドにも、100年前の設計者にも作れない、本物の「人間の心」であると。


ルカは、セピアの手を握りしめ、静かに決意した。


この偽りの平和を終わらせ、本当の「人間」を取り戻すための、孤独な戦争を始めることを。



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