第一話:「役割」
この世界にはクラスと呼ばれる役割がある。俺、カテラ・リバーは「サブアタッカー」と呼ばれるクラスに付いていた。
「サブアタッカー」の役割はパーティー全体に少量のパフをかけ、剣術や魔法を用いて敵と戦うクラスだ。そんな俺はかつて、魔王討伐を仕向けられた勇者パーティーのメンバーであったが、ある日…俺はパーティーを追放された。
《◇》深夜の王国のギルドにて
ーーー
ベージュ色のロングヘアの女性が話し始める
「カテラ、私が言いたいこと…分かるわよね?」
「あぁ……本当に済まなかった」
「あのね、謝って済む問題じゃないの。アンタは人の命を奪ったに等しい事をしたの、その自覚はある?」
「分かってるさ……俺の実力不足で、ニコを…竜の攻撃から庇ってやれなかった……」
勇者パーティーのメンバーの一人の銀髪の青年が話し始める
「そんなに落ち込まないでくれ、本来攻撃を受け止めるのは僕『タンク』の仕事なんだから…僕に非がある。君は悪くない」
「でも、ニコに一番近かったのはカテラ、アンタだったんだから…アンタが守ってあげなきゃ駄目でしょ!?」
「リナウスの言う通りだ…俺が守ってやらなきゃいけなかった……」
「リナウス、言い過ぎだ。君だってニコからそこまで離れてはいなかったし…君にも多少は非がある」
「アタシはカテラの実力を見込んで動かなかったのよ。前の炎竜討伐のことを覚えてる?あのときカテラは颯爽と竜の間合いに入り攻撃を弾いていたじゃない。あの時と同じように出来ると思ったから動かなかっただけよ」
「もういいんだ……俺が全部悪い……責任は負う」
「ふふっ、それならアンタを勇者パーティーから追放するわ。罪を償う覚悟があるのなら、これぐらい受け止めきれるわよね」
「あぁ、覚悟はできてる。皆、後のことは頼んだ。俺も俺なりにできることをするつもりだから」
「ふっ…アンタなんていなくても、必ずこの手で魔王を倒してみせるわ!」
◆
これがパーティーを追放されるまでの経緯だ。俺はパーティーでの探索中に、竜からの攻撃を庇えずパーティーのメンバーの一人であったニコを見殺しにしてしまった。追放は当然の報い、いや…むしろ足らないぐらいだ……
今後は一人で魔王討伐を目標に戦っていくつもりだ。パーティーにいたときとは違って、長期間の遠征になるだろう。だからその前に、妹に別れの挨拶をしておかないとな……もし俺が魔王に敗れたら二度と妹と顔合わせできなくなる。だから最後に会っておかないと──
【王国の街外れの広場】
カテラの目の前には三人の盗賊が構えていた
「おいそこのお前、命が惜しければ…金目のもの全部そこに置いてけ!無いなら死んでもらうことになるがな」
「盗賊か……悪いが急いでいるんだ。他を当たってくれ」
「何言ってんだ?お前、見た感じ魔法使いだろ…魔導書でも寄こしてくれたら金になるだろ?でも見た感じ、お前は大した魔法使いじゃなさそうだなっ!どうせ──」
「──お前は誰からも役割を与えられないまま、今まで生きてきたんだろうな!ろくな教育も受けられず惨めったらしく這いつくばっていたのが容易に想像できるぜっ!」
「お前っ……今なんて言った…」
「あぁ…?もう一度言ってやろうか、お前は誰からも─」
カルテは盗賊の首にナイフを刺し、刺殺する
「てめぇっ!」
他の盗賊が襲いかかるが次の瞬時、紫電が盗賊の腹部を貫く
そして最後に残った海賊がカテラに接近する
「やるじゃねぇか。それなら…これでどうだ!」
盗賊は近くの樽に入った水をカテラにかける
「どうだ?魔法を使ったら感電しちまうぞ?…ふふっ、もうお前は魔法を使えない!」
次の瞬時、カルテは盗賊の間合いに入り頭部を鷲掴みにし地面に倒れ込ませる、そして慈悲なき無数の拳を振り下ろし盗賊の頭部を殴り続け、やがて撲殺に至った
「はっ!」
カテラは正気を取り戻し、状況を整理し唖然とする
「……はぁ…はぁ……俺は何をやっているんだ」
「人を……殺してしまった……」
たまに噂で聞く、人を殺すことを快楽としている殺人鬼がいると。俺には到底理解できない気分だ… 人を殺した後に残る感情は、悔いと、怒り…そして困惑だ……
そこに、子供とその母親が通りかかる
子供が叫び出す
「きゃぁぁぁぁ!!人殺し!」
「えっ…?」
子供が逃げ出し、その後を母親が追う
「……何をやっているんだ俺は…!殺しまではする必要はなかっただろ。ニコのときとは違って今回は本当に俺の手で──」
「『役割』……その言葉で罵られた途端、無性に苛立ちがわきてきた……そして次の瞬間には自分の感情を制御できなくなっていた」
「いや、こんなことしている場合じゃない…逃げないと!このままじゃ俺は犯罪者だ!」
盗賊の死体を放置し、カテラは颯爽と走り出しその場を後にする
◆
翌日、俺の勇者パーティーの追放…そして盗賊達の刺殺の内容がまたたく間に世間に広まった……
民1(男)
「聞いたか?」
民2(男)
「あぁ、聞いたよ…あの勇者パーティーのカテラが実力不足で追放されたんだって?」
民3(女)
「刺殺事件…怖っ!」
民4(女)
「しかも、その追放された勇者パーティーのカテラがやったって噂もあるんだよ?結構目撃者がいたみたいでさ」
フードを被り身を隠しながら街中を歩くカテラ
「(なんでこうなってしまったんだ……あそこで俺が感情を制御できていれば……いや、ニコを守れていればこんなことには──)」
民3
「本当、さっさと死ねばいいのにね」
「(っ?!)」
カテラは彼女らの方を振り向く
民4
「だよね!パーティー追放されたのも実力不足って噂だし、追放された腹癒せに人殺すって…ヤバすぎでしょ」
「……黙れ!はっ…」
カテラは反射的に言葉を発してしまう。その衝撃でフードが取れ、顔があらわになる
民3
「ねぇ、あれって──」
民1
「ヤバくね?カテラじゃん」
「はぁ…はぁ…くそっ!」
カテラは民と反対方向に走り出す
「(なんで…どうしてっ!)」
カテラは人気の無い路地裏まで辿り着く
「(そもそもこんな事になった原因は、リナウスが俺の実力を過剰評価していたからだ!リナウスの速度ならあの距離からでもニコの前に出られた……あいつの火力なら竜の攻撃も問題なく相殺できたはずだ!)」
リナウスの声が聞こえてくる
「んっ?ここはギルドの前……」
中にリナウス達に気付かれない範囲でカテラはギルドの中に入る
リナウスの声が聞こえてくる
「いやー、アイツが居なくなってくれて本当に気分が最高潮よ。ニコのことは残念だけど…でもアイツ昔からウザかったのよ。『彼』と同じサブアタッカーの道を歩み出すとか言い出して」
「(なんであいつは…俺のことをあそこまで嫌っているんだ?そこまで恨まれるようなことをしたのか!?)」
「(…っくそ、俺はこれから何をするのが正しいんだ。自首か?リナウスと和解?魔王討伐?…あぁもう、考えるな!)」
// 「人殺し!」//
子供の言葉が脳裏をよぎる
「うっ…」
カテラは自身の口元を押さえつける
「(もう、全てがどうでも良くなってきた……はぁ、やっぱり人は誰かのせいにしてないと正気を保っていられない。俺はリナウスを恨み、リナウスは俺を恨んでいる──」
「(もう人を殺している時点で後戻りはできない……ここからは、償いの旅だ)」




