↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/128

女子は度胸、純情、愛情 11-3

「なあなあ!夏になったら凛凛と雑賀の郷に来ん?海で遊ぼうや!良いとこやで!気分転換やで!」

弥生から夏になったら休みを取って良いと言われておいちは嬉しそうに言ったのである。

 しかしお菊はやんわり断ったのである。

「遠慮するよ。恥ずかしいって。あたしはあんたみたいに人の視線気にしないで素っ裸で泳げないよ」

「そんな うぶ な振りするな!一人前さんのくせに!この!」

「このおっ!」

 おいちの冷やかしにお菊が顔を赤くして怒ると

「ウチの秘密の海があるねん。安心しな!誰もおらんねん。人払いもするって!白い砂浜に蒼い海、青い空、白い入道雲!最高やで!あんたの好物の新鮮なお魚さんの刺身も腹いっぱい食えるで!これでどう?」

「新鮮なお魚さんのお刺身。あら。おいしそうね」

「よし!決まりや!」

 しかしこのおいちの計画は頓挫したのである。


 心眼だがしばらくして本願寺に戻って来たのである。ただ阿形、吽形、小次郎らは戻らなかったが心眼と一緒に伊賀衆の百地正永、正西親子と舞も来ていた。

 心眼らは本願寺の本堂に入ると長い時間、彼らと話し合いをしていた。


 数日後、阿形、吽形、小次郎らも無事に戻って来たのである。

 それを見てお菊らも計画は失敗したと悟ったのである。

 ただ杉浦玄任はなぜか戻って来なかった。ただ小次郎も桜花院には戻らず何か慌ただしく阿形、吽形らと動いていたが。


 7月に入ると阿形、吽形、小次郎らは顕如の若手の重臣衆の下間頼龍と共に京に出掛けたのである。8月になると篠原長房がみずなと新兵衛を連れて拠点の阿波に帰って行った。心眼や弥生も本堂に籠ったまま道場に姿を見せなくなっていた。


「なんかせわしいね」

「どうなってるんやろ。なんかあるみたいやけど雑賀衆にも全然情報が入らん」

 おいちもお手上げのようだった。

「なぁ。舞に聞いてみようや」

 お凛が提案したが

「さすがに話さないと思うよ」

 お菊が返したが

「でもどうせ戦になるならウチらも心構えがあるやん。ちょっとくらいええやん」

「でもあの子、腕が立つじゃん。ちょっとあたしも取り押さえる自信ないな」

 お菊はお凛に返すと

「こうしたらどうかいな?ごにょごにょ」

 お凛が言うと

「それやったら良いかな?」

「でも無理強いはしない程度にね」

 おいちもお菊も同意したのである。


 舞だが本願寺に居る時は朝の武道の修行に顔を出していた。午後の巫女の仕事は彼女は関係ないので本願寺の伊賀衆の坊でのんびり本を読んだりしてくつろいでいた。

「舞!遊ぼ!」

 ある日の午後、お菊、おいち、お凛が舞の坊に突然来たのである。

(怪しい)

 舞は直ぐに読んだがいつものようににこやかに3人を迎えたのである。

「堺でカステラが手に入ったから食べよ!」

 お凛が差し出すと

「わぁ。おいしそう」

 舞も反応したのである。

「今日はちょっと織田の事を教えて欲しいねん」

 おいちが言うと

「それはちょっとね。まだかん口令が敷かれてるからね」

 舞が返すと

「今や!」

 おいちが号令を出すとおいち、お菊、お凛の3人掛かりで舞に飛び掛かったのである。

「うそぉ!」

 これは舞も予想外でおいち、お菊、お凛の3人に抑えられてはさすがの舞でも動けず

「教えてや!こちょこちょっとな」

 3人は舞をくすぐったのである。

「ちょっと!あはは!やめて!」

 舞は笑いながら悲鳴を上げたが

「小次郎が心配なの!教えて!」

 お菊がそれらしく言うと

「あはは!分かった!ちょっとだけ話すから!あはは!やめてって!」

 3人は舞をくすぐるのを止めたのである。

「もう!あなたたちひどくない?」

 さすがの舞もおかんむりであった。

「ごめんな!雑賀衆の頭(かしら)として言わせてもらうと何が起きてるのか分からんくて心配やねん」

 おいちが舞に詫びると舞は

「あたしだって顕如様がどうされるか分からないのよ。本願寺は延暦寺に兵は出さないみたいだけど長房様と三好三人衆は兵を出すって阿波に帰ちゃったのよ。本願寺は朝廷と織田の京都所司代に延暦寺の焼き討ちを考え直してくれって懇願に行ってるの。心眼様は近江に戻って近江の一向宗には信長公にも本願寺にも従うよう交渉してるわ。みんなバラバラなのよ」

「え?」

 お菊、おいち、お凛は呆気に取られてしまったのである。心眼だが知らぬ間に近江に戻っていたのである。

「なんでそんな事に?」

「顕如様の想いが通らないのよ」

「そんな」

 石山本願寺は顕如と言う生きる神(カリスマ)を抱えていたが顕如はまだ若かったのである。この教団は顕如にとっても巨大すぎたのである。


 篠原長房が阿波に帰って間もなく、入れ違うように京に行ってた下間頼龍と阿形、吽形、小次郎が本願寺に戻って来たのである。

 小次郎だが久々に桜花院に戻ったのである。

「お疲れ様!」

「本当に疲れたぜ」

 小次郎は大の字になって横になっていた。

「上手く行かなかったと見た」

「想像に任せるぜ」

 小次郎は素っ気なく返した。

「どうするのさ?」

「分からない。指示を待てって」

 小次郎は横になったまま返した。


 8月も終わりになっても心眼は戻って来なった。

 しかし急に慌ただしくなったのである。

「長房殿の阿波衆が間もなく岸和田城(堺の南の和泉国の城)に入るらしいわ。堺がざわついてるわ」

 お凛から情報が入ったのである。

「(松永)久秀殿と(三好)義継殿が兵を山城に展開してるって!手伝いに行くわ!」

 大和の出のまえこが弥吉を連れて出て行ったのである。

「三好三人衆も動き出した!」

 こずえが緊張気味に言った。

 しかし本願寺は動きが無かった。雑賀衆もである。

「どうなってるなんやろ?分からん」

 おいちは不思議そうにしてた。

「ねえ。今日は舞どうしたの?」

「来とらんな」

 おいちが返すと

「ちょっと今日はごめんね!」

 お菊はそう言うと道場を出て舞の坊に向かったのである。


 舞だが伊賀衆の坊で伊賀に戻る準備を百地正永、正西親子としていた。

「あれ?お菊どうしたの?」

 突然やって来たお菊に舞が驚いたが

「あたしも近江に石部城の心眼殿のとこに連れて行って欲しいの」

 お菊が言うと舞らはぎょっとしていた。

「お菊さん。それは無理です。弥生様の赦しを得ないと」

「弥生さんには置手紙を置いておいたよ。心眼殿、明智殿と交渉しようとして苦戦してるんでしょ?あたし明智殿と知り合いなの。力になるよ」

 お菊は少し話を盛ったのである。舞と百地親子はお互い顔を見合わせた。お菊が明智光秀と知り合いと聞いて驚いたのである。

 心眼だが六角義賢や近江の門徒衆との交渉に難儀していた。光秀との交渉も光秀が出兵準備のため地縁のある美濃に戻っており接触出来ていなかったのである。

 孤軍奮闘している心眼の手助けになると考えた舞と百地親子はお菊を連れて行く決断をしたのである。

 こうしてお菊は石部城に向かう事になったのである。


 舞と百地親子らに連れられ大和、伊賀、甲賀経由で3日で石部城にお菊は入ったのである。

「お菊!どうした!」

 心眼は驚いたが苦い顔をしていた。

「明智殿との交渉のお手伝いをさせてください!」

 お菊が返すと心眼は更に苦い顔になった。

「明智殿は美濃に居る。後回しだ。下間頼龍様が織田の京都所司代との交渉に失敗し朝廷ももう信長公を止められないと諦めている。今、我々に出来るのは一向宗の蜂起を断念させる事と延暦寺を放棄させることだ」

 お菊は危うく 無理 と言いそうになったが抑えたのである。

「本願寺から俺に撤収しろと命が来ているが近江の門徒衆を守り延暦寺を焼かせないためにここにぎりぎりまで俺は居るだけだ。無理な話と承知している。だから君は帰れ」

 心眼はお菊に言ったが

「心眼殿!忍びの衆から織田の美濃衆と尾張衆が近江に進軍を始めたとの情報が入っています!美濃衆は光秀公が率いてるようです。近江に入ったらもしかしたら接触できるかもしれません!」

 百地の部下が進言すると

「心眼殿!やれるだけやりましょう!」

 お菊が前向きに言うと心眼も諦めたのか

「好きにするが良い。しかし覚悟はしてもらうぞ」

 それ以上言うのはやめたのである。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。