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女子は度胸、純情、愛情 11-1 挿絵あり

 挿絵(By みてみん) 

 前年の1570年11月だが織田信長が朝倉義景、浅井長政、比叡山延暦寺、六角義賢らと対峙していた志賀の陣で近江大津から動けなくなっている時に以前より信長に敵対していた伊勢長島願証寺だが大阪の石山本願寺、篠原長房、三好三人衆らが朝倉義景らの支援に動くと同時に蜂起したのである。そして信長の弟の信興が守る尾張小木江城を攻めたのである。信興は奮戦するも戦死、ただ小木江城は壊滅するも長島願証寺の尾張侵攻は防いだのである。この戦いの顛末で信長は長島願証寺へ強い遺恨を持つ事になる。


 志賀の陣も予想外の長期戦になり朝倉義景、浅井長政も雪で本国に帰還できないのを恐れていたが信長も兵糧の問題だけでなく伊勢長島願証寺からの攻撃や摂津方面でも篠原長房、三好三人衆、石山本願寺らに巻き返され再度体制を整える必要があり結局折れたのである。表向きは朝倉義景にへりくだって将軍足利義昭や朝廷に仲介してもらい朝倉義景、浅井長政、比叡山延暦寺、六角義賢、その支援を行った篠原長房、三好三人衆、石山本願寺と12月に和睦したのである。


 しかし信長は尾張に戻るとすぐに軍を再編成し翌年1571年5月、信興の仇討ちのため長島願証寺に兵を差し向けたのである。


 石山本願寺の顕如だが長島願証寺からの救援依頼を受け援軍を送る事にしたのである。

 ただ石山本願寺も信長と和睦した手前もあり秘密裏に作戦は行われたのである。松永久秀が信長から離反し篠原長房、三好三人衆、石山本願寺に付いて信長の勢力外になった久秀の所領の大和、惣の力が強い伊賀、甲賀を経由して伊勢の長島願証寺まで軍を送り込んだのである。

 顕如配下の坊官の下間頼旦を大将として門徒衆の精鋭部隊と第一陣は謹慎明けの六花仙のろくと根来衆が長島願証寺に送り込まれたのである。

 

 こうして始まった信長と長島願証寺の戦い、第一次長島合戦だが信長だが長島願証寺にではなく長島願証寺を守るように囲む天然の木曽川、長良川に予想外に苦戦したのである。  

 この川の幅や水量、流れの速さは信長の予想以上であった。闇夜に紛れて密かに船で行われる長島願証寺への物資補給も織田側が充分な軍船を用意できなかったので止められなかったのである。

 更に長島願証寺の周辺の伊勢の地侍などの国衆も長島願証寺に味方し信長に抵抗したのである。そのため信長も戦略の再構築を決断しわずか一週間で素早く自軍を撤退させたのである。

 撤退時に織田軍は腹いせに抵抗した伊勢の地侍の集落を焼き討ちし略奪したのである。


 しかし長島願証寺と石山本願寺の共同軍は密かに織田軍の美濃への退路の途中にある養老山に部隊を展開し撤収してくるであろう織田軍を待ち構えたのである。

 この采配が的中し美濃へ後退中の織田軍の柴田勝家を負傷させ更には負傷した勝家に代わり殿(しんがり)を務めた美濃衆の氏家卜全をも戦死させる金星を挙げたのである。

 こうして第一次長島合戦は長島願証寺、石山本願寺の勝利で終わったのである。


 なお本願寺だが戦況が長期化した場合に備えて第二陣は雑賀衆のおいち、鈴木義兼とお菊、お凛。そして第三陣は心眼ら六地蔵全員と弥生や冬、おふうの六花仙も出陣させる予定だったが予想外に短期で終わったのでお菊、おいち、お凛も出陣せずに済んだのである。


 5月も終わろうとしたある日だがお菊とお凛だが午前の武道の修行が終えると他の女子と一緒に午後は本願寺で巫女として仕事をしていた。布施や祈祷の受付をしていたのである。

 5月だが浄土真宗を起こした親鸞聖人を祀る行事が多く門徒衆が各地からたくさん布施を持ってやって来るので本願寺は大忙しだった。


「ありがとうございます!」

 あちこちで女子の元気な声が受付の堂に響いていた。

「うわあ。こんな忙しいなんて思わなかった!松丸!重いから蔵に持って行って!」

 米俵5俵の布施を受けたひなたが悲鳴をあげていた。

「さっきは酒樽。今度は米俵。腰が痛い」

 松丸も悲鳴を上げていた。

「良いじゃん。大きな布施でさ!平助!松丸を手伝ってやってよ」

 銭の寄付の対応を楽々とこなしていたこずえがひなたをからかっていた。

「お金のお布施だけにならないかな」

 ひなたはぼやいていたが。


「わ!ありがとうございます!お馬さん?」

 別の受付をしてたたまが仰天していた。生きた馬が布施されたのである。

「これどうすんだ?連れて行くけどさ」

 庄助もぼやいていた。

「くくく!みんな大変やな!」

 お凛はみんなの様子を見て余裕で笑っていた。

「あ!お客様やな。ありがとうございます!」

「堺の越後屋です。お凛さん、堺のため、ありがとうね」

「頑張ります!堺の皆様の応援をよろしくお願いします!」

 お凛はにこやかに銭の布施を受けていた。お凛だが堺衆に有名なので順調に銭の布施を集めていたのである。

「凛凛の奴、さすが堺衆に大人気じゃん。堺衆は商いを分かってるからお金の寄付が多いな。いいなぁ。あたしも指名が多いけどなぁ。なんかなぁ」

 お菊がぼやいた時にまたお菊に布施が持ち込まれたのである。

「ありがとうございます!え?」

 お菊はきょとんとした。

「有田のみかんです!どうぞ収めさせてくださいな」

 初老の男がみかんを木箱10箱ほど大量に持ってきて寄付したのである。

(うわぁ。腰が痛くなりそう)

 お菊はこの量を見て内心ぼやいたがにこやかに笑顔で返したのである。

「あ!あなたは雑賀のおいち様のお友達のお菊さんやね?」

「はい!」

 お菊は再度にこやかに返した。

「おいち様が うぶな振り が得意やけど腕が立つ素晴らしい娘(こ)って話されてましたよ!頑張ってくださいね!雑賀の郷も本願寺を応援しますわ!」

(むかっ!おいちの奴め!)

「はい!頑張ります!」

 お菊は顔を少しひくつかせながらも笑顔で返したのである。

「あはは!うぶな振り が得意やって!」

 隣でお凛が大笑いすると

「このおぉ!松丸!平助!蔵に持って行ってよ!」

 お菊がお凛に怒りながら松丸と平助に指示を出すと

「八つ当たりすんなよな」

「うわあ!お菊、重いのばっかじゃんかよ!」

 松丸、平助もぼやいたのである。

「雑賀の郷だったらおいちの担当じゃん!おいちどこよ?朝、道場に居たじゃん!」

 お菊が膨れると

「面倒な仕事は嫌なんや。あれでもお姫様やからな!」

 お凛が返すと

「まったくもう!」

 お菊は膨れたのである。


「若いの!みんな頑張ってるね」

「今年は大豊作だね。結構だね。物資は大事だよ」

 そこへ六花仙の冬とおふうが通ったのである。

「へとへとですぅ」

「しんどいですわ」

 ひなたとまえこがぐったり言うと

「あはは。今だけだよ。まぁ今年は織田との戦がありそうだから熱心な門徒衆がたくさん布施をしてくれるんだよ」

 物資管理が得意なおふうが返した。

「若いのの爽やかな笑顔は大事さ!今年の巫女衆は美少女が多いって評判だからな!頑張れよ!」

 冬がみんなを持ち上げると

「そ!今年は美少女が多いから頑張ろ!」

 こずえもみんなを持ち上げたのである。

「はぁぁい」

 みんなは疲れで力無く返したが。


「お菊。お客様やで」

 ぼうっとするお菊にまえこが声を掛けるとお菊は慌てて対応したのである。

「わ!ありがとうございます」

 お菊は再度仰天したのである。

「奇跡の巫女のお菊さんやね。和泉で取れた新鮮な蛸です。納めさせてくだされ」

 厳つい漁師が蛸の入ってる大きな壺を10個ほど持ってきたのである。

「奇跡の巫女様に会えてありがたや!雑賀衆の友達からあなたは うぶな振り が好きだけど敵をなぎ倒す女騎(めき)と聞きましたので本願寺のために頑張ってくだされ!」

(むかぁっ!おいちの奴、余計な事を言うなっうの!)

 それでもお菊は顔を引きつらせながら笑顔で返したが。


「つまらんわ。腹立つわ」

 しばらくしてぶつぶつ言いながら複雑な顔でやって来たのはおいちである。

「こら!おいち!忙しいのにさぼるな!」

「手伝いなさいな!」

 お凛とこずえが口を尖らせた。

 お菊も文句を言おうとしたがおいちはまだ一人ぶつぶつ言ってた。

「あれ?どうしたの?」

 ひなたが不思議そうな顔でおいちに聞くと

「手柄は根来衆とろくやって」

 おいちはふてくされた顔で急に言ったのである。


「ははん。伊勢の長島願証寺の件だね」

「仕方ないね。信長公の重臣を討ったからね」

 冬とおふうが言った。


 第一次長島合戦で撤退する織田軍を迎撃し信長の重臣の柴田勝家を負傷させ、織田の美濃衆の重臣の氏家卜全を戦死させたのは六花仙のろくと配下の根来衆の手柄になっていた。

「そやけどアイツらに手柄なんてほんまに癪や。雑賀の面子丸つぶれや」

 昨年の茨木城の戦いでろくと根来衆の誤射で雑賀衆に死傷者を出したため謹慎処分を受けたろくと根来衆だが今回の手柄で去年の事は無かった事になったのである。

「全て手柄で決まるからね。頑張るしかないね」

「雑賀衆なら出来るさ!気合いだよ!おいち」

 再度おふうと冬が返したのである。

 

「そうかもしれんけど信長公は激おこらしいで。本願寺は和睦を破って長島願証寺に援軍を送ったって。しばいたるって。本願寺はとぼけてるらしいけどバレバレやね」

「信長公すぐに撤退したから主力をそのまま次の戦に投入するって。志賀の陣と三好三人衆を成敗できなかった原因を造った朝倉浅井延暦寺六角と本願寺を目の敵にしてるみたいやけど今回はまず近江の六角と一向宗を叩くって噂やで」

 お凛とこずえが言った。

「確かに 本願寺が和睦を破ったからやで! って信長公に言われたら反論できんかな?参ったなぁ」

 おいちはわざと軽くとぼけたが。

「で、本願寺は近江の門徒衆や六角殿の支援の兵を出すかもしれないね」

 おふうは小声で言った。

「六角殿はどうでもいいけど近江の一向宗は戦に巻き込まれるのは懲りてると思うけど」

 お菊が言うと

「そうだね。俺たちに味方しないかもしれない」

 冬もお菊に同意した。

「しかしそうはいかないね。近江を完全に信長公が抑えると朝倉(越前)と浅井(北近江)だけでなく加賀(石川県)の一向宗との連携ができなくなる」

 おふうが言うと

「でも本願寺だけじゃ信長公を抑えられないのでは?」

 お菊が心配そうに返したのである。

「篠原長房様や三好三人衆にも協力を頼んではいるけどね」

 おふうが返したが

「京から琵琶湖の西を抑える延暦寺か丹波を通るとかでもよくない?これ以上近江の門徒衆を巻き込むは良くないと思うけど」

 お菊が言うと

「お菊すごいわ!勉強してるやん!感心感心!でも近江を取られたらそれこそ信長公は朝倉浅井や延暦寺を降伏させて本願寺や篠原殿、三好三人衆を攻めに来るで?」

 おいちが嬉しそうに言ったのである。

「戦うしかないって事?そう簡単に勝てる相手とは思えないけど」

 お菊は信長を知らなかったがあの明智光秀の主君であれば只者ではないと思ったのである。

「進むは極楽!退くは地獄やで。戦うのみかな?ウチらは 惣 を守らんといかんしね。あ~それにしてろくの件は癪やな」

 おいちが言うと

「あ!癪で思い出したけどあんたあたしを うぶな振りが好き とか変な事を雑賀の郷で話さないでよ!迷惑だよ!」

 お菊が膨れると

「別にホンマやからええやん。この一人前さん!」

「なにおぉ!」

「そんな蛸みたいん膨れるな!にひひ!」

「あ!蛸!やばい!蔵に持って行かないと!」

 お菊は蛸を思い出して急いで蔵に持っていこうと蛸の入った壺をひとつ抱えたその時であった。蛸が壺から這い出たのである。そしてお菊と目が合うと墨を吹いたのである。

「うわあ!最悪!」

 顔が墨で真っ黒になりお菊は悲鳴を上げたが

「あはは!お菊真っ黒やで!」

 おいちが笑うとその蛸はなぜかおいちに向きを突然変えると墨を吹いたのである。

「どわあ!美少女が台無しやんけ!なにすんねん!お菊!」

 墨を掛けられたおいちはお菊がやったと怒ったが

「あたしじゃないでしょうが!蛸さんに文句言ってよ!」

 お菊はとんだ勘違いと膨れるも

「仕返しや!」

 おいちは蛸の入った壺をひとつ抱えて壺を横から叩くと寝てるとこを起こされ怒った蛸が顔を出しお菊に墨を吹いたのである。

「ちょ!危ないって!」

 お菊は慌てて避けると今度は避けた先に居たお凛を直撃したのである。

「こらあ!おいち!なにすんねん!」

 今度はお凛が怒って蛸壺を抱えておいちに墨を掛けようとしたがこの蛸はなぜかこずえに墨を吹いたのである。

「嘘やろ!この蛸、下手過ぎるわ!」

「お凛!ひどいわ!このお!」

 こずえが怒って蛸壺を抱えてお凛に墨を吹くようけしかけるも

「い?」

 この蛸は今度はひなたに墨を吹いたのである。

「ちょっと!こずえ!なんであたしに掛けるの?お返しだよ!」

 ひなたも蛸壺を抱えて反撃させようとするも

「あれれ?」

 この蛸はまえこに掛けたのである。

「こら!ひなた!お返しや!」

「うそお!蛸さんどこ狙ってんのお?」

 ひなたとまえこの間でも蛸の墨の掛け合いが始まるともう辺り一面蛸の墨の掛け合いの乱戦での蛸の墨だらけで収拾が付かなくなったのである。


「ははは!さすが若いのは元気だな!」

「でもこれはちょっと油を搾られるかな?」

 冬とおふうは苦笑いしながら騒ぎが静まるの見てたのである。



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