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「僕、アインリッシュ・ハーベットはベリッシュ・ハーベットに永遠の愛を誓います」
「アインリッシュ……」
「長い間待たせてしまってごめん。僕の奥さんになってくれますか?」
「……っ!! そんなの、決まってるじゃないの!!」
ボロボロ涙を零しながら必死に言葉を返そうとするベリッシュに愛しさが込み上げてくる。
こんなに可愛い、前世から恋焦がれていた人が奥さんになる。
僕はもう死んでしまってもいいとさえ思った。
「わたくしも、アインリッシュ・ハーベットに永遠の愛を、誓います」
キラキラと僕らの周りを光の粒が舞う。
あの日、聖女が祝福を施してくれた時の様に。もうここに聖女はいないけれど。
「……星が降っているみたいね……」
「うん……」
少し離れた林の中でサッシュとナタリアが僕の魔力を込めた石を砕いてくれているのだろう。少しだけ音がする。
というか、それなりの破壊音がする。そんなに魔力を込めていただろうか?
魔力を込めた石を砕くことで僕の魔力が霧散して周囲一帯に降り注ぐ。演出として考えたのはサッシュで、魔力を込める石を用意したのもサッシュだったが、張り切りすぎて魔力を込めすぎたのだろうか。
「ちょ……これっ固すぎ……っ!」
「アリー……めっ!! こなくそっ!!!!」
翌日、腕が筋肉痛になったとサッシュとナタリアが苦情を言いに僕の家まで来た。
リー……ンゴーン……リーンゴー……ン
鐘の音が鳴り響く
祭壇の前に立つ僕に日の光が降り注いで眩しい
あれからすぐ結婚式の準備に取り掛かって、無事今日式を挙げる。天候にも恵まれた。この上ない絶好の挙式日和だ。
父上に手を引かれベリッシュが入場してくる。
純白の衣装に包まれたベリッシュは清純な乙女そのものだった。
父上から僕の手へ。
目が合った父上がよろしくなと、小声で僕に囁いた。その言葉に頷くように、笑みを返す。
僕の隣に立つベリッシュは少しだけ緊張しているようで、僕の腕に回している指が震えている。安心させるようにそっと手に触れる。ちらりとベールの向こうから此方を見るその瞳に思わず耳が熱くなる。
綺麗すぎるのだ。綺麗すぎて、直視できない。
神父の言葉に向き合い、ベールを上げる。
伏し目がちにしていたベリッシュが僕を見上げる。
心臓が痛いほど波打つ。さっきまで緊張していなかったはずなのに、ベリッシュの顔を見た途端緊張してしまった。
「それでは、誓いのキスを」
カチコチに固まってしまい動けない僕を不思議そうにベリッシュが見つめてくる。神父も大丈夫か?と言いたげな視線だ。
「もう…本当、仕方のない子ですこと」
そう呟くとベリッシュの方から僕へとキスをした。
その瞬間、歓喜が僕の体を包み、ベリッシュを抱きしめた。
招待客が歓声を上げお祝いの言葉を投げかけてくれる。
ちらりと席を見てみるとごつい体格の部長が大泣きしている姿が目に入って、思わず笑ってしまった。
あの日、前世を思い出してから今日まで。
いや、前世からずっとずっと恋焦がれて、想ってきた貴女をやっと手に入れた。
これから先も、あなたの人生守ってあげます!!




