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兄とサエ  作者: 栗栄太
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12 長い夜の知らせ



「 冬之助様!」 

なじみの店で飲んでいるところに梅ちゃんが飛び込んできた。

「 どうしたんだい!?」 

梅ちゃんは息を切らせていた。

「 サエの弟が山に入って戻らないって!兄さんが冬之助様にも知らせて来いって・・・」

「 行こう」 

梅ちゃんには休んでもらいたかったが、もう日が暮れている。

昨日一昨日と降り続いた豪雨のせいで土砂崩れや崖崩れの危険が増しており、急を要した。


「 この近くの山に入っていくのを見た人がいて、その辺りを中心に探しているんですけど」

梅ちゃんが息を切らせながら言う。

「 どうしてこんな日に山で遊んだりするんだ。理解できないな」 

捜索が行われている山の麓に辿り着いた時には、すでにサエちゃんの弟は保護されていて、善太郎が酷い剣幕で怒鳴っているところだった。

サエちゃんが好きなら、彼女に心配をかけるようなことをするな。という内容だった。

そして、お前の所為でサエが危ない目にあってるんだ、いい加減にしろ、と。

「 サエがまだ戻ってないのかしら?」 

梅ちゃんもそう感じたようだ。

梅ちゃんは周りを見渡し、サエちゃんの父親らしき男性のそばに駆け寄った。

「 小父さん、サエは?」 

「 まだ、戻らねえんだよ。だがサエは子供じゃねえし、危険のないところでじっとしてるはずだから大丈夫だって言ってるんだけどよ。善太郎が孝也を見つけてからすごい剣幕でなあ。まあ当然だがな」 

サエちゃんの父親は遠巻きに、自分の息子が善太郎に怒鳴られている様子を眺めている。

厚い雲に覆われた真っ黒な空は月明かりさえなく、捜索を続けるのは捜索する側も危険だろうと思われた。 

案の定、捜索に参加していた人間たちも子供が見つかったということでちりじりとなっていた。


「 善太郎!」 

子供に言いたいことを言ってしまったのか、善太郎が動き出した。

「 冬之助!わりいな!お前は梅を家まで送れ!」 

「 お前は!?」 

聞かずとも分かるが念のため確認した。

「 サエ見つけてから戻る!」 

サエちゃんの父親が口を挟んだ。

「 善太郎!サエはどこかで夜を明かして降りてくる!今お前が山に入っても何も良くはならん!もう帰れ!」

サエちゃんの父親と善太郎も親しいのだろう。

それにしても息子を見つけ出し、さらに娘の救助にむかおうという人間に酷い言い草だ。 

「 もしお前に何かあってみろ!俺がサエに殺されるだろうが!」 

その台詞に、サエちゃんの心を一番理解するのは彼女の父親なのかもしれないなと、梅ちゃんと目を見合わせた。






ようやく次話から主人公視点です

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