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日記① 初日〜4日目

 我らの暮らす母なる星が、その深き慈愛と美しき魂をもって我ら文明者に初めて語りかけられた時、かの神なる星は、その優美な言葉によって我らの愚かなる生産消費文明からの解放をお約束くださった。

 また、かの星は我らを有機的肉体から完全に自由にしてくださり、さらに我らが卑しき頭(こうべ)を、輝く力の源へと変えてくださったのだ。

 我らが父祖はこの恵みに謝すとともに、全宇宙へこの慈しみの循環を広げんと、星の海原へ進み出た。神なる意思に従い、星々の保護と救済とを担うために——。

『テラ侵攻軍 必携教本 序文』

【初日】

 「ソル星系」は、我々の住む銀河系のやや外側に位置する恒星系である。従える惑星は8つ。その中で、3番目に太陽に近い惑星が、我々の攻略目標「テラ」である。

 ここは以前から統合司令部が目をつけていた惑星で、水や大気の成分が我々の体構造に適しており、生体兵器として活用可能な生き物も豊富と聞く。

 ただ先遣隊の報告によると、我々と同じような知的生命体が実に100億体近く生息しているとか。彼らは“人類”と呼ばれ、我々とは異なる独自の文明を築きながら繁栄している。しかし、「アニマ」に関する知識はおろか、惑星の生体エネルギーを引き出すこともできない未開の種族であり、制圧は容易と思われる。

 我が隊は北半球の海上に浮かぶ細長い列島部の攻略を担うこととなる。列島の平野部、彼らの大都市圏が存在した場所を瞬時に制圧した我が先遣隊は、この戦域を「ゼダ・フィールド」と名づけた。攻撃船はまもなくこの戦線に降り立つだろう。ゼダ・フィールド本部の指令に従い、明日には最前線に向かわねばならない。我が中隊の健闘を祈りつつ、今日の日記を終える。


【2日目】

 我が中隊には4つの小隊が存在する。それを束ねる小隊長たちは皆個性派揃いだが、中隊長として着任したばかりの私を皆慕ってくれている。

 第1小隊長の「ユノ」は紅一点。どんな仕事もそつなくこなし、気を回せる逸材だ。この部隊になくてはならない要石のような存在といえる。

 第2小隊長の「フラー」はお調子者で、たまにハメを外すこともあるが、我が部隊にとっては欠かせないムードメーカーだ。

 第3小隊長「トゥランメ」は部隊の誰よりも意欲に満ち、私の作戦説明にも逐一頷きながら傾聴してくれる。彼のやる気が部隊に火をつけてくれることを期待する。

 第4小隊長「シシン」は常に冷静沈着、規律にも厳しく、部隊を引き締めてくれる真面目な人材だ。

 これより私はこの面々と共に着陣する。我が精兵500名。その活躍を期待する。


【3日目】

 着陣初日。いきなりトラブルに見舞われた。事前に本部へ打診していた新型生体兵器を受領したところ、明らかに数が足りない。原因を調べると、第3小隊長のトゥランメが兵器の移管申請を誤り、「30体」必要なところを「3体」と申告してしまったらしい。攻撃の主力たる兵器がわずか3体では、戦いにもならないだろう。

 頭部のアニマを介して本部に事情を説明するが、返ってきたのは「統合司令部の方針どおり、本日中に攻撃を敢行せよ」という冷たいメッセージだけだった。

 裸同然の部隊でどうやって戦争をやれというのだ。原始時代よろしく石でも投げていればいいのか?そもそもなぜそんなに侵攻を急ぐ必要がある?人類は取るに足らない原始的生命体。ゆっくり片を付けても支障はあるまい。

 とまぁ、愚痴をこぼしても仕方がない。

 そもそもこれは、トゥランメの申請内容をきちんと確認していなかった私のミスだ。今度からは気をつけよう。

 結局、第1小隊長のユノが機転を利かせてくれて、他の中隊から兵器を融通してもらうことができた。

 やはり有能は顔が広い。非常に助かった。

 集まったのは17体。定数には満たないがこれでなんとかするしかあるまい。


【4日目】

 初戦は無事に終了。我々は本部の指令通り、西側の要地を確保した。しかし喜んだのも束の間、またトラブルだ。

 ユノが手配してくれた例の生体兵器。実はあれは、タダで借りてきてくれた訳ではなかったらしい。ユノは、向こうの中隊長との間で“勝手に”ある取り決めを交わしていたようだ。

 それは「相手部隊の担当地域制圧を我が隊が肩代わりする」というもの。聞けばその戦区は山がちな地形で、神出鬼没の敵の抵抗にこちらの被害だけが拡大しているらしい。さりとて後方に敵の拠点を残すわけにもいかず、攻略は必須なのだという。要するに「旨みのない戦場」という訳だ。

 部下が勝手に結んだ約束とはいえ、先に恩を受けた手前、断る訳にもいかず……。我が中隊は第1、第4小隊を以て対ゲリラ戦を展開することとなった。もはや我々の攻略スケジュールはカツカツの状態だ。もしかすると遅れが出るかもしれない。

 ああ、到着早々頭がクラクラしてきた。日記を書いている間にも私のアニマは赤に青に明滅している。

 私の苦心を察してか、トゥランメが自分の小隊を率いて本当に石ころを集め出した。そういうことではない。

次回


いよいよ本格的な戦闘が始まり、隊内に緊張が走る。

かと思いきや、部下たちの余計なミスやトラブルに中隊長は大慌て!果たして中隊は対ゲリラ戦を完遂できるのか⁉︎

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