第二話 忘れること思い出すこと
「この辺りのはず……なんだけど…」
『うわ!これがです!?………おじさま方が言ってたやつ………』
ルノ。よくわからない敬語口調を使う。最初は慣れなかったが、今はこれで定着した。
『うるさいです〜黙れやくださ〜い』
ホトリ。語尾を伸ばす。キレると語尾が伸びなくなる。つまりは今キレてない。
『喧嘩すんなよ馬鹿ども』
ギル。いい奴ではあるが口調が少し尖ってる。一言余計。
『そーだそーだ!リーダー困ってるよ!』
カルト。僕らより三歳くらい年下だ。
…災害の時、僕らは七歳だった。カルトは四歳。幼かった分、余計に怖かっただろう。
「カルト、俺は困ってないよ。それにルノが驚くのも…無理はないしな…。」
赤い。水が。…赤黒い。鉄臭い。…血の匂い。
目玉。浮かんでる。半分程押しつぶされて。
松葉杖だ。少し溶けている。誰の。いや、わかる。思い出したくない。一緒に遊んだ。子供。友達。
ーーー嫌だ。
あの服。あのおもちゃ。あの靴。全部誰のかわかるものばかりだ。顔、声。三年経った今でも鮮明に焼き付いてる。
嫌だ。こんなの現実じゃない。違う。
『リーダー!』
『何してるです!』
『引き摺り込まれるぞ!』
我に返る。忘れてた。散々調べた。ここは、[オオガエル]の住処だ。
小刀を出す。
「アイツは獲物を丸呑みする!気をつけろ!」
[オオガエル]の舌を避けるが、なにぶん足場が悪い。
「一発で仕留められるか…?」
小刀を喉目掛けて刺す。
〈グギョオオオオオオオオオオ〉
大体ここは空洞になっているので刺しても血飛沫の量が少ない。
[オオガエルが悲鳴をあげて倒れる。そして腹を慎重に開く。
[オオガエル]は丸呑みした生物をすぐには溶かさない。エネルギーが必要になると溶かす。
なのでたまに生存者が発見されることがある。
「……遅かったか…。」
そこには骸骨と化した遺体があった。
「[弔いの鐘]」
この鐘は遺体を音で弔うというこの街の風習から作られた。
「これでよし、と」




