番外編 新たな日々2
「ふむ、結局夕方になってしまったな……」
「アリアフィーネさん、かなり盛り上がってましたものね……」
宿屋街を歩きながら、シェリルとともにアリアフィーネによる凄まじいまでの貪りを思い出す。
(アリアフィーネよ、数日離れるだけだというのに……)
【もはや発情期でしたね】
ええい! カレンよ、黙っておれ……!
そうこうする内に目的地……
高級宿屋へと着いた。
これから数日間、シェリルとはここを拠点に過ごす予定だ。
家に置いてきたアリアフィーネとスミレが少々心配なところではあるが……
まぁ、いざという時のための手は打ってあるから大丈夫であろう。
さっそく中へと。
「すまぬ、二人で数日間泊まりたいのだが……」
「いらっしゃいませ。しかし申し訳ありません、あいにくお部屋の方に空きが……ってクロノ様!?」
「む? 確かに吾輩はクロノだが……どこかでお会いしたか?」
「あ! い、いえ! それよりも少々お待ちくださいませ……!」
む、受付嬢が奥へと走っていってしまった。
何やら他の受付嬢が「こ、こちらへどうぞ……!」と、緊張……それにやや興奮した雰囲気でラウンジのある部屋へと案内してくれた。
(……? 本当にどういうことだ??)
などと考えているとシェリルが耳元にこっそりと。
「(先日のゴブリンキングの件、そして四魔族の一柱レヴィの件はすでに都市中で噂になっておりますの。もはやクロノ様はこの都市の英雄ですの!)」
なんと、そんなにも早く……
「クロノ様、よろしければこちらを」
おお、今度は給仕の娘が紅茶と茶菓子を運んできてくれた。
……すごい歓迎のされようだな!?
部屋に空きがないと言っていたのにこのもてなされようとは……
なんというかソワソワしてしまうな。
しかし言われるがままに案内されてしまったが、いったいどのような要件で待たされているのだろうか?
などと思っていると、恰幅の良いスーツ姿の男が現れた。
「ようこそおいでくださいました。クロノ様! この宿屋の支配人をしております、ジョーンズと申します! 先ほどは案内に不備がございまして申し訳ありません。一室だけ、スイートのお部屋のご用意がありますで、ぜひ! いくらでもご宿泊くださいませ!」
……な、なるほど。そういうことであるか。
先ほどシェリルから聞いた話、それに先ほどからの対応、そして案内に不備があったという言葉……
恐らく何かあった時用に空けておいた部屋に案内してくれる、ということであろう。
世情に疎い吾輩でも何となく理解できてしまうぞ……。
「あ、ありがたく泊まらせていただく」
「それでは早速ご案内いたします!」
どうやら支配人自ら部屋まで案内してくれるようだ。
部屋に行くまでに裏庭にプールがあることや、水着を始め衣装の貸し出しサービス、食事のルームサービスがあることなどを説明してくれた。
「ほう」
「素晴らしいお部屋ですの!」
大商会の令嬢であるシェリルすらも興奮した声を漏らす。
それほどに豪奢な部屋だ。さすが高級宿のスイートである。
「クロノ様! 見てくださいませ!」
む、向こうの方からシェリルの声が聞こえる。
あっちは、どうやら浴室のようだ。
「クロノ様! すごいですの、この部屋シャワーが付いてますの!」
「しゃわー……とな?」
「こういうものですの!」
そう言って何やら壁から伸びる器具を手に取るシェリル。
ほう、お湯が分散して噴き出したではないか。
「すごいな、これがシャワーというものであるか」
「ええ! 元は異世界――チキュウと呼ばれるところのものらしく、かなり珍しいアイテムですの」
便利であるな。
是非と我が家にも欲しいところである。
「ク、クロノ様……」
「む、どうしたのだ? シェリル」
「き、今日は移動で汗もかきましたし、せっかくシャワーもあることですし……い、一緒にお身体の洗いっこをするのはいかがでしょう……♡」
む、なるほど。
そういうことであるか。
物珍しいアイテムを口実に誘ってくるとは。
奥ゆかしくもイジらしいではないか。
「ふむ、そうだな。せっかくだから〝堪能〟させてもらうとするか」
「ひ、ひゃう……っっ♡」
腰に手を回しただけだというのにこの反応、やはりまだまだ初心であるな。
「そ、それでは失礼しますの……♡」
そう言って吾輩の前で膝立ちになるシェリル。
どうやらアリアフィーネの真似をして……
いや、二人で過ごしているというのにシェリ以外の者のことを考えるのは無粋であるな。
先ほどの言葉通り、今夜はとことん堪能させてもらうとしよう。
◆
翌朝――
「ク、クロノ様……足腰が、う……うまく立てませんの……」
「……昼まで休むとするか」
「はいぃ……」
堪能しすぎたな。




