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三章 第三話 シル・フィオラティス

とっさに私は布団を頭まで被ってしまった。アリアさんは副団長だから、敬礼をして挨拶しなければいけないのに。そのときは泣いているところを見られてしまった、という方が大きかったのだ。布団に潜り込み息を殺す。お願い、このまま部屋を出ていって…。

しかし、そうはいかなかった。アリアさんはベッドに腰掛けると私に話しかけた。

「どうして、隠れてるの?別に怒らないから、泣いていた理由(わけ)を教えて」

アリアさんは微笑んだ。彼女の微笑みをみていると何だか心が落ち着いてきた。

 「すみません、挨拶もせずに隠れてしまって…」

 「ふふ、誰だってそうよ。自分の弱みは見られたくはないわ。だけどときには誰かに話してしまえば楽になることもあるわ」

私は布団から出て、ベッドの上に座った。アリアさんの顔を見ているとこの人には話しても大丈夫そうだと思った。

「信じてもらえるかわからないんですけど…」







そして私は記憶について全て話した。ただ、ラニューカ王国のスパイであることを悟られてはいけないので、少しずつ変えながら話した。

「つまり、ハイザントというかたの婚約者だったお方の記憶ということね」

私は小さく頷いた。もし、この人がカシミアとハイザントについて知っていたらどうしよう。握りしめていた拳に汗が滲んできた。

「大丈夫よ、怖がらないで」

アリアさんは再び微笑み、私の頭を撫でた。すると、心の中の何かが崩れていった。目からは涙がボロボロとこぼれ落ちた。

「あらあら」

アリアさんはハンカチで私の涙を拭いた。

「随分と何かを抱えていたみたいね、でもこれからは一人で抱え込んじゃダメ、私はいつでも力になるわ」

 その言葉は未だ私の心にしっかりと焼き付いている。





「ようやく落ち着いたたみたいよ」

「お疲れ様です、副団長」

「これは私の仕事だからね…。…貴女は?」

「えと…新しく兵士長に任命された、リオナ・フォレスティオです」

「よろしくね、リオナ。…もしよかったらこの後の仕事についてきてくれないかしら」

「わ…わかりました。カウンセリングですか?」

「ええ、この間保護したクロイラ君とシロイラちゃん。あの二人は何だかシルよりも重いものを抱えている気がするの」

「ああ、あの二人。訓練を見る限りでは優秀な兵に見えますが…」

「それでもね…」


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