表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/40

四章 第一話 怪我人

さんさんと朝日が注ぐ部屋の窓辺。まだ新しい二輪の花が花瓶に生けてあった。一つは闇の様に真っ黒だが、どこか優しさを感じる花。もう一つは真っ白な花で美しい花だったが、どこか激しさを感じる花。まるでベッドに眠る二人のように。

内乱から一夜明け、思わぬ返り討ちにあったクロイラとシロイラは病院のベッドで眠っていた。ベッドの脇には内乱ですっかり疲れてしまったシルとヒロガがぐっすりと眠っていた。ただ、いつも寝ているハルヴィンだけは起きていた。ハルヴィンの立っている場所だけ何故か薄暗く、ぼんやりとハルヴィンの目が光っているように見えた。

先日の内乱。引き上げる直前に、クロイラとシロイラは返り討ちにあった。最初はどんどん倒していったのだが、油断した隙に二人の後ろに内乱軍の一人が現れ、二人串刺しに遭ったのだ。クロイラは意識を失い、シロイラは朦朧とする意識のなかで

「イラだけは取らないで」

と訴え続けた。別に首もとには怪我はしていないのでとる必要はなかった。その後意識を取り戻したクロイラは

「ブーツと手袋も絶対に取らないで」

と言い、再び眠りについた。その時は流石に何か理由(わけ)があると思った。

「クロイラさんとシロイラさん、まだ起きないっすね」

いつの間にか起きていたヒロガがハルヴィンに話しかけた。その時はもうハルヴィンの目は光っていなかった。

「うん。ずっと見てるんだけど…」

「…あ、あのどうして二人がイラと手袋とブーツを取られるのを嫌がるか知らないっすか?」

「さあ…本人たちに聞くしか…」

しばらくの沈黙が二人を襲った。するとシルが目を覚ました。

「…随分寝てたね」

「うん…少し昔の夢を見ていて…」

シルは伸びをしながら応えた。そして、二人を見た。

「まだ、起きないみたいね」

「一応、麻酔かかってるしね…」

そこでハルヴィンがここにいても仕方がないから一旦家に戻ろう、その後僕が二人の荷物を持っていくから二人は店番をしていてと提案をした。シルは滅多に提案しないハルヴィンが提案したことと、自らが荷物を持っていくと言ったことに驚きの表情を見せた。

「わかった。そうしましょう」







三人が居なくなった病室で、シロイラが目を覚ました。此処は何処なのか確認するように辺りを見渡した。ゆっくりと起き上がり隣のベッドを見つめた。そこには苦しそうな顔のクロイラが寝ていた。顔には脂汗が滲んでいた。シロイラはベッドから立ち上がり、クロイラのもとにゆっくりと近づいた。その時にシロイラに繋がっていた点滴がカシャンと音をたてて、ベッドに倒れ込んだ。点滴の繋がっていない左手でクロイラの頬に触れた。

「…………」

そのまま、クロイラのイラに触りイラをとってしまった。現れたクロイラの首筋には何かで締め付けられたような後が黒く残っていた。

シロイラは側にあったタオルでクロイラの顔と首を拭いた。そのままクロイラをしばらく見つめたあと小さな声でシロイラは呟いた。

「ごめんね、お兄ちゃん。私はお兄ちゃんを傷つけるようなことばかりしてる。首の跡だってそう、私がドジしなければつかなかった傷。心にだって、沢山傷はついているのに。殺したいほど恨まれてもいいのに。それなのに私はまたお兄ちゃんを傷つけた」

いつの間にかシロイラの目には涙が浮かんでいた。

「ごめんなさい、お兄ちゃん。いつかまた、二人一緒に笑える日が来るのかな…」

最後は涙声になり上手く喋る事が出来なかった。口から嗚咽が漏れだし、その場にしゃがみこんでしまった。




 真っ白で清潔な廊下。病院の廊下だ。そこのなかの一室の前に亜麻色の髪にグリーンエメラルドのように澄んだ色の瞳を持つ少年のような顔つきをした人が立っていた。嗚咽と小さく呟く声の聞こえる病室をジッと見つめていた。

「やっぱり君達だったか」

少年は意味ありげに呟き、嗚咽が聞こえなくなるまで、そこに立ち尽くしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ