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神救異世界転移魂 ~絶望に抗う意志がなければ目的を達することはできない~  作者: Riku
序編第三章 『想いを込めて贈って』
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序編第三章21 『想いを形にして』


 図書館に行くということが決まったが、その前にティアラはフィエリアに会おうと、部屋の前までやってきていた。

 この前来たのは一週間前くらいだろうか。

 ちょっと久しぶりということもあって、ティアラは緊張しつつドアをコンコンコンとノックする。

 しかし中からは返事がなかった。


「まさか……」


 フィエリアの自殺が脳裏を過って、ティアラは焦ったようにドアノブを捻った。


「フィエリア! ぁ……」


 フィエリアは、自分のベッドで寝返りを打ちながらスースーと寝息を立てていた。


「まぁ、まぁ……よかったわ」


 杞憂だったことにとりあえず安堵しつつ、ティアラは隣のベッドにそっと腰を下ろす。


「こんな時間まで寝てるなんて……」


 だが思ってみれば、フィエリアが今話せるのはティアラくらいしかいない。だとするとこうして寝ているのも、暇が原因だったりするのかもしれない。そう考えて、ティアラは一週間近く会いに来なかったことに罪悪感を抱いた。

 そんな罪悪感と共に、フィエリアの寝顔をじーっと見つめる。


「んっ、ん?」


「あっ起きたわね」


「え? ティ、ティアラ!?」


 バッと勢いよく体を起こして、フィエリアはちょっと恥ずかしそうに頬を赤らめる。

 それから両手で頬を挟むように叩いて切り替えて、ティアラに向き合うようにベッドに座りなおした。


「おはようフィエリア」


「ぅ、うん……ティアラ、その、最近なんで来なかったの?」


「うっ……」


 若干俯いたままのフィエリアから上目遣いが飛んできて、ティアラは痛いところを突かれたと喉が鳴った。


「わ、悪かったわ」


「別に私は、ティアラの迷惑になりたいわけじゃないから、無理しなくていいんだけど……寂しかった」


「うっ……」


 二連続で罪悪感を刺激され、ティアラは居心地が悪くなる。

 考えてみれば、フィエリアにとって自分は、ティアラにとってのティアのような存在なのかもしれない。

 ティアに一週間も会えなかったら、と想像してティアラはフィエリアの心中を察した。

 フィエリアの頭にそっと手を伸ばして、優しくなでながら、


「悪かったわ。最近は冬祭りの雇用に選ばれたりで忙しかったのよ」


「えっ、雇用に選ばれたの?」


「えぇ、大企画の特別雇用と飾り付け雇用、飾り付けの方は、昨日仕事してきたわ」


「そうなんだ……ティアラやっぱりすごい」


「そ、そうかしら?」


 フィエリアの素直な褒め言葉に、ティアラはちょっと鼻が高くなる。

 だが自信満々になるのもカッコ悪いと思い、「コホン」と咳払いをして調子を戻す。


「まぁあたしにも用事はあるから、そこはちゃんと考えるのよ? 友達なんだから」


「うん」


 ティアがティアラを相棒と線引きしたのを真似て、ティアラもフィエリアとの関係に友達と線引きする。

 ティアに救われたからこそ、救われた側がどれだけ相手のことを好きになるかはわかっている。

 だからこそ、その気持ちが危ない方向へ向かないようにするのだ。


「そう言えばずっと思ってたけど、このベットって誰か使ってるの?」


 そう言って、ティアラは自分の座っているベッドをポンポンと叩く。次いで、他にももう一つあるベッドを見やった。


「……もともとは同室の子がいたんだけど、私が事件を起こした時に、危ないからって…………」


 言いながら視線を落とすフィエリア。

 スカートの裾をギュッと握りしめる仕草を見れば、ティアラの胸も締め付けられたように苦しくなった。


「……道理で、いつもあたしが来る時に他の子に会わなかったわけね。なら、たまにあたしがこっちに寝に来てもいいかしら?」


「えっ?」


 予想外とばかりに顔を上げたフィエリアが、素っ頓狂な声を出す。

 それから落ち込んでいた顔が明るくなって、


「うん、待ってる」


「そう、ならたまに来るわね」


 そう言ってティアラはもう一度フィエリアの頭を撫でた。何というか無性に撫でたくなってしまうのだ。

 フィエリアは恥ずかしさと嬉しさの混同したような顔で受け入れている。


「学園復帰はまだなのかしら?」


「先生に話したら、もうちょっと様子見てからって」


「そう、早まればいいわね」


「うん」


 フィエリアのその表情は、この前よりずっと明るくみえる。

 ティアに救われて、人を救うという夢ができて、そして今、フィエリアが救われてくれているのだとしたら、


「ティアラ?」


「ぃ、いや、なんでもないわ」


 ちょっとだけ涙腺が緩んでしまうが、ティアラはバレないように顔を背けて、目尻にたまった涙を拭った。


「それより、フィエリアは最近どうなのよ。ちょっとは楽になったかしら?」


「うん。ティアラのおかげ」


「そう、ならこれは返してもよさそうね」


 そう言ってティアラは、フィエリアのナーフを差し出した。

 フィエリアは一瞬目を丸くして、それから、


「ちょっと待って」


 そう言うとフィエリアは自分の机の引き出しを開いて、ナーフの鞘を取り出す。それからまた自分のベッドに腰を下ろすと、ティアラからナーフを受け取って鞘に戻した。

 そして――、


「えっ」


「これはティアラにあげる」


 フィエリアからナーフを差し出されて、ティアラは思わず声が出る。

 戸惑い気味にフィエリアの顔を見やって、


「いいの?」


「うん、これはティアラに持っててほしい」


「そう、ならありがたく使わせてもらうわ」


 そう言って、フィエリアからナーフを受け取った。

明日は21時10分に投稿します。

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