第一章61 『企画倉庫』
「わぁ! 広~い!」
一番に企画倉庫へとやってきたミファーとリーファ。
学園の中にある倉庫には初めて入ったが、ミファーが驚くのもわかるほどの大きさを持っていた。
「ここにあるの全部企画に使えるものなんだよね!」
「夏祭りの時先生に聞いてたのはミファーでしょ……。企画で使い終わったけどまだ使えるものとか、会場作りとかに使える物を保管してあるって言ってた」
「それはそおだけどさぁ! すごいじゃん!」
「理屈になってない……」
よくわからないミファーの理屈にジト目になりながらも、リーファは舞台作りに使うというれんがを探して――、
「あれね……」
「わぁ! 何個あるんだろ」
探すまでもなく見つかった。
入口から入って横方向に、数千個のれんがが積まれていたのだ。
「まぁ、いろいろな企画で使うわけだし……」
そう言ってリーファは自分の驚きを落ち着かせようとするも、さすがに多すぎてすぐには無理だった。
「早速ミファーの加護の出番!」
「いや運ぶ距離長いからまだ」
「ううぇ!?」
「とりあえず会場近くまで運んで、舞台作る時に使う方がいい」
「わかった!」
「それじゃあミファー移動魔法で運ぶよ」
「うん!」
その瞬間、ミファーが魔法を発動する。
すると山積みになっている上部のれんがの下に、複数の魔法陣が展開され、次いでその魔法陣の上のれんがが十個くらい宙に浮かび上がり、ミファーの前へと移動を始める。
それを見て、リーファは青ざめた。
「そんな一気に運ばないで、ミファーだと落とすでしょ」
「……今ミファーのこと悪くゆったぁ!?」
と、言いながらミファーがリーファの方へ向き直った。
直後、魔法陣が消えて宙に浮いていたれんが落下を開始する。
「――――ッ」
何とかリーファは床に落ちる前に魔法を発動し、れんがをもう一度宙に浮かせた。
「あっ、リーファ、ごめんなさい……」
ミファーの謝罪を耳にしながら、リーファはゆっくりとれんがを床に下ろし、それから、
「いてっ」
「ミファーは一つずつね……」
「わかった!」
ミファーに軽くチョップして言うと、元気な返事が返ってくる。本当にわかっているのだろうか。
「一先ず廊下に出す。そしたら先輩の雇用者たちが移動魔法で一気に運んでくれると思うから」
「うん!」
ミファーが魔法を発動し、一つだけれんがを宙に浮かせる。
その直後、れんががリーファの真横をヒュッと音が出るくらいの速度で通り抜けた。思わず振り向くが、廊下に出た瞬間に止まってゆっくりと地面に置かれる。
「ミファー?」
「どおしたのぉ!」
「どうしたのじゃない! あんな速度で移動しないで! もし魔法が途切れたらあの速度でれんがが飛んでくことになる。人に当たったら死ぬでしょ!」
「ご、ごめんなさい……」
ミファーの無自覚な危険行動に、リーファは声を大にして一喝する。すると事の重大さがわかったのか、ミファーは謝ってしょんぼりする。
リーファはゆっくりと深呼吸して、
「ゆっくりできる?」
「ぅ、うん!」
落ち着いた声で言うと、パァッと笑顔になったミファーが元気よく返事した。
それからミファーはもう一度魔法を発動し、れんがをゆっくりと宙に浮かせ、その速度のまま廊下へ移動を始める。
「ね、ねぇリーファ、これって瞬きしていいんだよね?」
緊張しすぎて声を震わせながら聞いてくるミファーに、リーファはただ「うん」と頷く。
「普通に瞬きするくらいなら大丈夫」
「わ、わかった」
ミファーは目が乾いていたのか一度パチッと瞬きする。
「あとゆっくりすぎ……」
「このくらい?」
「うん、そのくらいならいいと思う」
早歩きくらいの速度になったあと無事に廊下の外に置かれたのを見れば、リーファはそう返事を返した。
「あのままだと出口が埋まるから、私が外に出て横にずらすね」
「わかった!」
それからミファーが出口の向こう側まで運び、それをリーファが横にずらすという作業を続けた。
やがて他の雇用者が来て、リーファとミファーが運んだれんがを数個ずつ会場へと運んでくれたり、ミファーとリーファの手伝いをしてくれた。
倉庫に入ったままだと倉庫の前まで来ないとれんがを認識できないが、れんがが廊下に出ていれば廊下の先からでもれんがが認識できる。そして認識できれば移動魔法で一気に運べるから時短になるのだ。
ようは長い廊下を歩いて倉庫までやってきて移動魔法でれんがを会場まで運び出すか、廊下に入った段階で倉庫前の廊下に出たれんがを移動魔法で手元まで一気に移動させてから会場まで運び出すかの違いだ。
途中でソース不足で休みながらも作業を続け、三時間ほどすると、そろそろ会場作りの方を始めるとのことを他の雇用者から聞き、リーファとミファーは一緒に会場へと向かった。




