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第一章24 『芽生えた想い』


 感情を吐き出しきったあと、ティアラは自分の中に芽生えた想いへ手を伸ばした。


『ティア、あたし夢ができたわ』


『夢?』


『あたしはティアに救われたわ。きっとこの世界には、苦しんでいる人がたくさんいる。だからその人たちを、あたしは救いたい』


『いいじゃん! 痛みを知ってるティアラなら、きっとその人たちの傷にも寄り添える』


『ま、まぁでも、まだ何になって何で救うのかは決まってないから、何とも言えないところよね……』


『それはこれからいろんなことに挑戦して見つければいんじゃない? ティアラなりの手段で人を救えばいいよ』


『えぇそうするわ』


『このあとはどうする?』


『……そうね、もう少し魔法に慣れておこうと思うわ。それとティア、ホントにありがとうね』


『うん』


 改めて想いを伝え、ティアラは精神世界から抜け出して体の主導権を握る。

 それからもう一度、ティアラは魔法を使おうとするのだが、


「――――」


 ちょっと怖い。

 これでもし使えなかったらと思ってしまった。

 だがティアラは勇気を出し、魔法を発動する。


「――あれ?」


 水晶玉が動かなかった。

 ティアラは焦る。焦ってもう一度魔法を発動する。


「あっ!」


 と、成功する。

 そこでティアラは気づいた。


「そういうことね。魔法を発動したあとに想像しないとダメなのね……」


 ティアラは今まで、魔法を発動する前に想像を固めていた。これも魔法が使えなかった原因の一つだったのだろう。

 ちなみに今成功したのは、魔法を発動したあとにも偶然想像したからだ。


『焦った……』


「あたしもよ……」


『でも原因はわかったんだもんね?』


「えぇ、想像のタイミングが原因よ」


『ならよかった。次は水晶玉を持ち上げるとかやってみる?』


「ぇ、えぇ……」


 ティアラはちょっとばかし怖がりながらも、魔法を発動する。

 すると水晶玉の下に一つの魔法陣が生成され、続けざまに水晶玉が浮く想像をすると加えて魔法陣が組み込まれる。


「で、できた! あれ? これどうやって下ろせばいいの!? ……あっ! す、すごいこれ想像した通りに動く! わぁすごい! これ楽しい!」


『すごいじゃんティアラ!』


「これでも結構かんたんよ。ただ魔法を発動したあとに、水晶玉が動かしたい方向へ動くように想像すれば勝手にその通りになるわ」


『ティアラよく喋りながらできるね……』


「だから結構かんたんなのよ」


『けどその理屈だとシロクマ効果おきそうだよね……』


「なによそれ」


『考えたくないことを考えないようにするほど考えてしまう現象のこと。たとえば、その水晶玉が吹っ飛んで窓ガラス割るとか?』


「あっ!」


 その言葉を聞いた瞬間、ティアラはその状況を考えてしまい水晶玉が、ティアラの頭の上を通り抜け、そのまま寮の一階の窓に直撃する。

 パリンという音が響き渡り、慌てて後ろを振り返ったティアラは青ざめる。


「ぁ……ど、どどどうしよティア!」


『と、とりあえず逃げる?』


「ダ、ダメよちゃんと謝らないと!」


『そ、それもそっか。えっとぉ~!』


「な、なにこれ!?」


「あっ……!」


 窓のところから先生の声が聞こえ、ティアラは怒られると身構える。それと同時に、その声がティアラの担任であると気付き、ちょっと安堵する。

 と、割れた窓から先生がこちらを覗き込む。


「ティ、ティアラちゃん! これ、ティアラちゃんがやったの!?」


「ご、ごめんなさい……」


「もう! ……というか、ティアラちゃんこの水晶玉をここまで投げるなんてすごい肩だね」


 信じられないと言わんばかりの表情をする先生。


「いや、えっと、違うんです! シロクマが!」


「シロクマ!?」


「あっ、いやっ、あのっ! ごめんなさい!」


 混乱に混乱を重ね、その末にティアラは説明を諦めた。


「……このことはさすがにティアラちゃんのお母さんに言うからね」


「えっ……」


「先生もティアラちゃんがいつもここで頑張ってるの知ってるから、あまりこういうことはしたくないんだけど、窓を割っちゃった以上修理費用を出してもらわないとだからね。反省すること! 後片付けは先生がするけど、とりあえず今日はもう部屋に戻ってね」


「……はい」


 そう言って先生は去って行ってしまう。

 ティアラは視線を落とし、うつむく。スカートの裾を握りしめる。


『ティアラ……』


「わかってるわ。あたしが悪いもの……」


『わたしがシロクマ効果とか言ったからだよ。ごめんねティアラ……』


「お母様……」


 また、迷惑をかけてしまう。

 胸が苦しくなった。だが、やってしまった以上どうしようもないのだ。


「……だったら、精一杯謝るしかないわね」


『ティアラ?』


「迷惑をかけちゃうのは苦しいけど、やってしまったんだもの。ならあたしにできるのは謝って同じ失敗をしないように気を付けることだけ」


 その考え方は、今までのティアラにはなかったもの。

 失敗した事実を否定せず、肯定もせず、受け入れ、今から自分に出来る精一杯をする。きっと前のティアラなら必要以上に自分を責めていたと思う。

 その成長を、ティアは感じ取った。


『ティアラ、ホントに頑張ったんだね……。なんか感慨深い』


「な、なによ急に……そんなこと言われても、ぅ、嬉しいわ……」


『ふふっ』


「わ、笑うんじゃないわよ!」


 嬉しくないと言ったらもう褒めてくれないかもと思って、恥ずかしいけど頑張って言葉を変えたというのに。


「まぁ、とりあえずお母様に手紙を送ることにするわ」


 謝るのもそうだし、他にもいろいろと伝えたいことがあったりする。

 ティアラはこれからは自信をもって、両親の娘を名乗れるのだ。今はただ、その事実がひたすらに嬉しかった。

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