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この作品が五万字に達成した場合、ヴィジュアルノベル化に取り組もうと思っています。応援よろしくお願いいたします。
突然だが皆さん。JKはお好きでしょうか。もし同じことを聞かれたら、俺なら自身を持ってイエスと答えたい。JKとは女子が子供から大人に変わりゆく難しい年ごろでもあり、最も神秘的な時期であると言えよう。高等学校という閉じられた空間の中で錬成された美しさ、そして仕組まれたように残されたあどけなさ。これらのものだけでも、JKがJKであるだけで、見る物を、触れるものを魅了する存在であることを十分示している。
俺は今、JKに会えるか会えないか、一世一代のイベントを目前にしている。俺が握っているのはスマートフォンだ。大きめの画面に、「りんな」と俺の愛すべき、愛することになるだろうJKのハンドルネームが浮かび上がっている。チャット画面の右下は、「今度、駅に来てくれないかな」と書かれた吹き出しで動きが止まっている。
三……、二……、一……、後は返事を待つのみである。無意識に心の中でカウントダウンを始めてしまう。
ゼロ……。ドンピシャだった。
「いいよ。」
「いよっしゃあああああああああああ!!!!!JKとオフ会じゃあああああああああああああ!!!!!」
俺はこの瞬間体の芯から手足の先まで力を込めて、心の中にため込んでいたどす黒いものから暖かい思い出まで、全てを放出した。たまらん。これはもうたまらん。このあふれる思い、いかにしてぶつけようぞ。ベッドに寝転がっていたおれは、尺取虫のようにバインバインとはねたり、壁に頭をなんどもぶつけたり、衝動を爆発させるためならどんなことでもした。
「あっ……。」
どんなことでもするべきではなかった。暴れていた俺の足が、ペン立てとして代用していたマグカップにあたり、勉強机の角から転げ落ちたのである。
ぐわっしゃーーーん。
綺麗にフローリングが貼られた俺の部屋は、人一人が暴れることにさえ対応してはいなかったようだ。割れたマグカップの音は、隣の部屋から魔物を呼び寄せたのである。
「お兄、うるさい!!」
妹のネネだ。なんだってこんな時に出てきて。俺は今とてもいい気分なのに。
「ネネか。少し下がっていたまえ。瀬戸物が割れて危険なのでな。」
俺のぎこちない様子を見てつけあがったのか、ネネは俺を罵った。
「何なのさっきから。JKだのオフ会だの。まる聞こえなんですけど。この出会い厨。」
「で、出会い厨とは失礼な。俺はただネットの友人と友好を深めるだけだぞ。」
「友好を深める?そんなあからさまな隠語で無理が通れば道理が引っ込むってものよ。この変態。学校でモテないからいろんな女に手を出そうとしてるだけなのは見え見えなのよ。出会い厨。」
「出会い厨だと?ああ、俺は学校でモテないとも。学校ではな。だが俺はこうして女の子とデートできることになったんじゃないか。」
「それを出会い厨っていうのよ。この変態。ちょっと見せなさいよ。」
「あっ。」
いつの間にかネネは俺のスマホを取り上げていた。
「ふーん。JK裏垢りんな……、ねぇ……。」
「な、なんだよ……。」
「お兄キモイ。」
そう言い放ったネネの顔は、今までにないほど俺を軽蔑していた。
「う、うるさい!!あとでお菓子買ってあげるから、お前は早く部屋に戻れ!!」
するとこんどはネネは、少し心配そうな顔をして言った。
「お兄……、騙されてるよ……。」
俺は馬鹿な妹を追いだして、ドアを閉めた。
「まったく。自分がJKだからって調子に乗りやがって。いくらJKの言うことでも、俺がでたらめにかどわかされるとでも思ってるのか?」
俺はお宝JK写真が千枚入ったフォルダを開いて、厳選した百枚を楽しんでから、JKの写真を枕の下に仕込んで眠ることにした。
(ほんっとに気持ち悪いんだから!!)
壁の向こう側から何かが聞こえたような気がしたが、気にしてはいけない。妹はよくこんな風に我を失うことがあるのだ。ともあれ、今週末になれば、彼女の顔を見ることが出来る。それまでは口うるさい妹に目をつむってやることにしよう。
いい朝である。坂は長い。
「よっ。藤井壮太。」
言い忘れたが、俺の名前は壮太だ。最年少プロ棋士と同音異字の名前だ。それ自体は誇りに思っているが、僕の名字は残念ながら藤井ではないので、わざわざ名字をつけられるとうっとおしいと思ってしまう。しょうもない高校生のノリなので、適当に流しておけばよいのだが。
「なんだよ。」
朝っぱらから俺の名を軽々しく読んできたのは、宮島である。彼女は小学生の時から俺の世話を焼いている。今日も煩い。昨晩ちっとも眠れなかったので軽いノリだと分かっていても、気分を害されたような反応をしてしまう。
すると宮島はわざとらしく目を丸めて、
「お前こそなんだよ藤井。」彼が二十九連勝してからというもの、奴はすっかり俺の事を名字(誤り)、で呼ぶようになってしまった。「随分疲れてるじゃないか。」
「よくわかったな。」
「いや、君はただ疲れているだけではないな……。」
宮島はさらに深く観察するような目で見てから、こう付け加えた。
「いいこともあったんじゃないのか?」
俺は驚いて宮島の顔を二度見した。こっちを向いて得意げに鼻をひくひくさせる彼女は、その後三歩歩いて電柱に鼻面をぶつけた。




