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アイコン戦国志  作者: 小金沢
中国の章
6/6

一五五五   厳島の戦い      (〇〇六)

~~~周防 大内氏館おおうちしやかた~~~



挿絵(By みてみん) 益田ますだ 藤兼ふじかね

「晴賢! 晴賢はどこだ!」



挿絵(By みてみん) すえ 晴賢はるかた

「なんだ騒々しい。俺は忙しいんだ」



挿絵(By みてみん) 益田ますだ 藤兼ふじかね

「厳島に出兵するとはまことか」



挿絵(By みてみん) すえ 晴賢はるかた

「フン、そのことか。

案ずるな、俺の勝ちだ」



挿絵(By みてみん) 益田ますだ 藤兼ふじかね

「毛利元就は厳島に我々をおびき寄せている。

狭い厳島では大軍を展開できず、

小勢の毛利軍でも五分に戦えるからな」



挿絵(By みてみん) すえ 晴賢はるかた

「わかりきったことを言うな」



挿絵(By みてみん) 益田ますだ 藤兼ふじかね

「ならばなぜみすみす罠にはまりに行くのだ!

毛利元就を稀代の謀略家と呼んでいたのはお前ではないか」



挿絵(By みてみん) すえ 晴賢はるかた

「毛利が謀略家だからこそだ。

毛利の策は俺を厳島におびき寄せれば完成だ。

それより先は無い。

先が無いとわかったから戦うのだ」



挿絵(By みてみん) 益田ますだ 藤兼ふじかね

「なぜそんなことを言い切れる?」



挿絵(By みてみん) すえ 晴賢はるかた

「もう何年も我慢に我慢を重ね、

毛利の策を観察してきた。間違いなく先は無い。

後は五分の戦いを制するだけだ」



挿絵(By みてみん) 益田ますだ 藤兼ふじかね

「………………」



挿絵(By みてみん) すえ 晴賢はるかた

「お前には留守を頼む。

大内の坊主が馬鹿な真似をしないよう見張っていろ」



挿絵(By みてみん) 益田ますだ 藤兼ふじかね

「晴賢、お前が死ねば大内家は終わりだ。

死ぬなよ」



挿絵(By みてみん) すえ 晴賢はるかた

「フン、誰に言っている」



~~~伊予 能島のしま城~~~



挿絵(By みてみん) 村上むらかみ 武吉たけよし

「お前が俺の縁戚だから話を聞いてやるのだ。

毛利の話を聞くのはこれっきりだ」



挿絵(By みてみん) 乃美のみ 宗勝むねかつ

「わかっている。

元就様の手紙もこれだけだ」



挿絵(By みてみん) 村上むらかみ 武吉たけよし

「んん? ずいぶん薄いな。

毛利の手紙は地獄のようにくどくどと

長くてクソだるいと聞いていたぞ」



挿絵(By みてみん) 乃美のみ 宗勝むねかつ

「村上殿にはこれだけで通じると言われていた」



挿絵(By みてみん) 村上むらかみ 武吉たけよし

「俺を舐めているわけではないだろうな?

……ほう、これは」



挿絵(By みてみん) 乃美のみ 宗勝むねかつ

「なんと書いてあるんだ? 俺も読んでいない」



挿絵(By みてみん) 村上むらかみ 武吉たけよし

「一日だけ船を貸して欲しい」



挿絵(By みてみん) 乃美のみ 宗勝むねかつ

「は?

そ、それだけか?」



挿絵(By みてみん) 村上むらかみ 武吉たけよし

「それだけだ。……味な真似をしおって。

わしら村上水軍はそこらの海賊とは違う。

週に一度は一族で集まり連歌会を催す、粋な海の男だ」



挿絵(By みてみん) 乃美のみ 宗勝むねかつ

「そ、そうなのか」



挿絵(By みてみん) 村上むらかみ 武吉たけよし

「縁戚のお前でも知らんだろう。

毛利のヤツめ、どこで聞き及んだのやら。

情報収集力もあるぞと言いたいのか?」



挿絵(By みてみん) 乃美のみ 宗勝むねかつ

「……それで返事は?」



挿絵(By みてみん) 村上むらかみ 武吉たけよし

「粋には粋で応える。それが海の男の心意気だ。

望み通りに一日だけ、貸してやろう」



~~~安芸 厳島 毛利軍~~~



挿絵(By みてみん) 毛利もうり 元就もとなり

「見よ隆元。あれが音に聞く村上水軍か。

この荒海をものともせずに渡っておるぞ」



挿絵(By みてみん) 毛利もうり 隆元たかもと

「一日だけとはいえあんなにも……。

これは百や二百ではききませんぞ!」



挿絵(By みてみん) 毛利もうり 元就もとなり

「三日三晩、寝ずに草稿を練った甲斐があったぞ。

わしの手紙のどこに心打たれたのかのう。

56ページか、それとも89ページか?

いやいや112ページこそ最も時間を掛けたところだ」



挿絵(By みてみん) 毛利もうり 隆元たかもと

「………………」



挿絵(By みてみん) 毛利もうり 元就もとなり

「…………隆元、削ったな?」



挿絵(By みてみん) 毛利もうり 隆元たかもと

「はて、なんのことでしょうか」



挿絵(By みてみん) 毛利もうり 元就もとなり

「お前の顔を見ればわかる。

村上に渡したわしの手紙を削ったな」



挿絵(By みてみん) 毛利もうり 隆元たかもと

「削ってなどおりません。切りました」



挿絵(By みてみん) 毛利もうり 元就もとなり

「切ったのか」



挿絵(By みてみん) 毛利もうり 隆元たかもと

「ええ、1ページ目だけ残して後はばっさりと。

……さすが父上です!

1ページ目から村上の心をわしづかみにするとは!」



挿絵(By みてみん) 毛利もうり 元就もとなり

「まあ良い。結果が同じならば言うことはない。

それよりも家中はまとまったか?

お前に任せてあったはずだが」



挿絵(By みてみん) 毛利もうり 隆元たかもと

「そんなことは村上水軍を仲間にするのと比べれば、

実にたやすいことです。こうするのですよ。

――ものども続け! 今こそ陶晴賢の首を上げる時だ!」



挿絵(By みてみん) 熊谷くまがい 信直のぶなお

「おおおっ! 若殿を見殺しにするな!

我らも続くぞ!!」



挿絵(By みてみん) 吉川きっかわ 元春もとはる

「兄貴に負けてられっか! 行けえええっ!!」



挿絵(By みてみん) 毛利もうり 元就もとなり

「ううむ……。

隆元のあの度胸は誰に似たのやら。

やはり妻の血かのう」



挿絵(By みてみん) 小早川こばやかわ 隆景たかかげ

「父上、早くも陶軍は崩れ立っています。

我々も行きましょう」



挿絵(By みてみん) 毛利もうり 元就もとなり

「うむ」



~~~安芸 厳島 陶軍~~~



挿絵(By みてみん) すえ 晴賢はるかた

「くそっ! なぜだ!?

なぜ俺の軍が一方的に押し込まれている!?」



挿絵(By みてみん) 冷泉れいぜい 隆豊たかとよ

(兵は村上水軍に退路を断たれおびえている。

兵力では五分でもこれでは戦えない)



挿絵(By みてみん) すえ 晴賢はるかた

「村上水軍など後でいくらでも蹴散らせる!

陸の上にいる毛利軍だけ見ればいいではないか!」



挿絵(By みてみん) 相良さがら 武任たけとう

(それをあらかじめ兵に言い含めたのか?

自明のことだから説明する必要が無いとでも?)



挿絵(By みてみん) すえ 晴賢はるかた

「毛利元就の首さえ上げれば勝ちだ!

その首が目の前にあるのだぞ!

なぜこれが好機だとわからない!?」



挿絵(By みてみん) すぎ 重矩しげのり

(一人で戦えるとでも思ったのか?

優秀なお前が一人いれば全ては事足りると?)



挿絵(By みてみん) すえ 晴賢はるかた

「黙れ黙れ黙れ!

俺に殺された愚劣な亡者どもが利いた風な口を!」



挿絵(By みてみん) 小早川こばやかわ 隆景たかかげ

「隆房…………」



挿絵(By みてみん) すえ 晴賢はるかた

「お前は! お前も! お前も裏切ったな!

この俺を! お前たちさえ裏切らなければ!!」



挿絵(By みてみん) 小早川こばやかわ 隆景たかかげ

「裏切ったのは僕らじゃない。君だよ」



挿絵(By みてみん) すえ 晴賢はるかた

「黙れえええっ!!」



挿絵(By みてみん) 毛利もうり 隆元たかもと

「はあっ!」



挿絵(By みてみん) すえ 晴賢はるかた

「ぐわあああっ!!!」



挿絵(By みてみん) 小早川こばやかわ 隆景たかかげ

「兄上……」



挿絵(By みてみん) 毛利もうり 隆元たかもと

「戦国の世でも、弟が友人を手に掛けるのは見過ごせない」



挿絵(By みてみん) 小早川こばやかわ 隆景たかかげ

「すみません」



挿絵(By みてみん) 毛利もうり 隆元たかもと

「それに、弟は兄の顔を立てるべきだよ。

手柄を譲ってくれてありがとう」



挿絵(By みてみん) 小早川こばやかわ 隆景たかかげ

「……礼を言うのは僕の方です」

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