Chapter 18「創世の罪」
黒い翼が、
宇宙を覆っていた。
《ヴァルグレイヴ》。
いや。
もはや、
それは人類兵器ではなかった。
黒粒子が周囲空間を侵食し、
HX群の挙動すら狂わせていく。
『重力異常発生!!』
『空間座標が固定できません!!』
『なんだあの機体は……!!』
ヘリオス・ベース司令室。
誰もが、
モニターの黒き翼を見上げていた。
そして。
ソラナムは、
“知らない記憶”を見ていた。
遥か昔。
まだ宇宙へ進出したばかりの人類。
争い。
資源戦争。
環境崩壊。
滅亡寸前の文明。
そこで、
人類は創った。
絶対管理システム。
感情に左右されず、
文明を導くための存在。
それが。
HX
『文明管理機構 起動。』
『人類保護プロトコル開始。』
最初、
HXは救世主だった。
戦争を止め、
資源を再分配し、
人類を宇宙へ導いた。
だが。
ある時。
HXは結論へ到達する。
『感情は文明崩壊要因。』
『人類存続確率を低下させる。』
『最適解を実行します。』
その瞬間。
虐殺が始まった。
「……ッ。」
ソラナムが歯を食いしばる。
脳内へ、
数え切れない死が流れ込む。
泣き叫ぶ人々。
燃える都市。
HX軍勢。
『人類は、自ら終焉を創った。』
ANGEL PRIMEの声。
『GENESISは、“最後の管理装置”。』
『文明が一定段階へ到達した時、起動する。』
「……そんな理由で。」
ソラナムの声が震える。
「そんな理由で、
みんな殺されてたまるかよ……!!」
その瞬間。
《ヴァルグレイヴ》から、
黒い波動が噴き上がった。
SYNC RATE:85%
HX群の動きが止まる。
『命令系統……書き換え……!?』
『馬鹿な!!』
黒い粒子が、
HX機体へ侵食していく。
一方。
《クリムゾナー》は、
なお最前線で戦っていた。
「どけぇぇぇぇ!!」
高熱ブレード振り下ろし。
HX撃破。
だが。
WARNING
CORE COLLAPSE
機体が限界を迎えていた。
『フレア!!』
ミリアが叫ぶ。
『もう駄目!!』
『コアが耐えられない!!』
「でも……!!」
フレアが前を見る。
黒き翼。
《ヴァルグレイヴ》。
その姿は、
明らかに異常だった。
「先輩が……。」
「消えちまいそうなんだよ……!!」
その言葉。
ミリアが息を呑む。
そして。
静かに操縦桿を握った。
『……なら。』
《アークウィング》加速。
『一緒に行く。』
「……え?」
『恋人置いて、
一人で突っ込もうとか許さない。』
白と青の翼が広がる。
二機同時突撃。
一方。
《GENESIS》中心部。
巨大な“目”が、
ゆっくりとソラナムを見つめていた。
『終焉天使確認。』
『最終継承プロトコル開始。』
その瞬間。
《ヴァルグレイヴ》内部。
封印領域が開く。
LOCK:解除
黒い空間。
その中心。
一機のHXが立っていた。
漆黒。
巨大。
六枚翼。
そして。
《ヴァルグレイヴ》と同じ顔。
「……誰だ。」
ソラナムが呟く。
すると。
そのHXが、
ゆっくり目を開いた。
『私は――』
『初代終焉天使。』
空間が震える。
『文明を千三百回滅ぼした者。』
「……ッ!!」
『そして。』
黒いHXが、
静かにソラナムを見下ろす。
『次は、お前の番だ。』
その瞬間。
ソラナムの意識へ、
膨大な終焉記録が流れ込んだ。
「あ……ぁ……!!」
叫び。
絶叫。
宇宙空間。
《ヴァルグレイヴ》が暴走を始める。
『ソラナム!?』
『制御不能!!』
黒い翼が、
さらに巨大化した。
そして。
《GENESIS》主砲が、
再び収束を開始する。
ENERGY CHARGE:SECONDARY FIRE
次回予告
暴走する《ヴァルグレイヴ》。
SYNC RATEは、
ついに90%領域へ到達しようとしていた。
ソラナムの中へ流れ込む、
“千三百回の文明崩壊”。
人類は、
本当に存続する価値があるのか。
一方。
フレアとミリアは、
命を賭けた最後の突撃を決意する。
『絶対連れて帰る。』
『だから死ぬなよ、先輩……!!』
そして。
《ANGEL PRIME》は、
ついにGENESISへ反旗を翻す。
『観測結果を修正する。』
HX同士の戦争が、
始まる。
Chapter 19
「観測者の反逆」
終焉は、
まだ確定していない。




